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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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最近の’お礼’

言えなくて(2)

夜を待たずしてチャンス到来!
さあ、どうする? カオルちゃん!?


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「えっ、鋼牙が帰ってるの?」

驚いたように目を見開いたカオルが、弾むような声でゴンザに聞き返した。
ランチを終えて自室にこもったカオルだったが、なんとなく創作意欲が湧かずにいたずらに時間を費やした挙句、気分転換にゴンザにおいしいお茶でも淹(い)れてもらおうと階下に降りてきたところだった。

「はい。何やら調べ物があると言って書斎におられますが…」

そう言いながらお茶の用意を手早く整えたゴンザは、にっこりと笑いながらカオルにトレイを差し出した。

「鋼牙様も一息いれられるには丁度よい頃合いかと…
 カオル様、これを鋼牙様にお頼みしてよろしいですか?」

差し出されたトレイを見て、カオルはちょっと驚いた。
そこには二人分のカップが並んでいたのだ。
鋼牙の分だけではなく、カオルも一緒に… そういうゴンザの気遣いだった。
それに気づいたカオルは嬉しそうに小さく微笑んだ。

「ええ、わかったわ、ゴンザさん」

そう言って一度はトレイを受け取ろうとしたカオルだったが、急に何かを思い出して、慌てて両手をダメダメというように突き出した。

「あっ、ちょっとだけ… ちょっとだけ待っててもらえる?
 すぐに戻ってくるから!」

カオルはそう言うなりゴンザの答えも聞かずに回れ右して部屋を飛び出していった。
その姿を見送ったゴンザはどうしたことかと首を捻っていたが、しばらくして戻ってきたカオルを見て納得した。
先程まではほとんど化粧っ気がなかったカオルの顔には、うっすらと化粧が施されているではないか。
特に唇はプルプルのツヤツヤ…
思わず目を細めて、

(ほほう… 大変お美しゅうございますな)

と心の中でそう呟いたゴンザだったが、何食わぬ顔でトレイを差し出した。

「では、お願いいたします」

「はい、行ってきます」

そう言って心なしか緊張した顔で出ていったカオルを、ゴンザはニコニコと見送った。




  コンコンコン

書斎のドアが遠慮がちにノックされた。
書物に目を落としていた鋼牙が、ふっと顔を上げると少し優しい顔になった。
このノックの仕方で、ドアの向こう側にいる人物が誰だかわかったのだった。
鋼牙は肘掛け椅子から立ち上がると、ドアの前に立ちサッとドアを開けた。
すると、お茶のカップが乗ったトレイを持ち、鋼牙の返事を待っていたカオルが、アッと視線を上げた。
そして、鋼牙と目が合うと少し恥ずかしそうに微笑んだ。

「お茶… 持ってきたの」

鋼牙は何も言わずにスッと脇にどいて、カオルに道をあけてやった。
カオルは鋼牙の前を通り過ぎ、重厚な造りの書斎机の前までくると、トレイを静かに置いた。

「あのね、ゴンザさんがあたしの分も用意してくれたの。
 鋼牙さえよければ… ここで一緒に… いい、かな?」

振り返りながら、カオルは上目遣いに鋼牙の顔色を窺う。
鋼牙はゆっくりと机まで戻ってくると、肘掛け椅子に座る。

「俺は構わないが…」

と、カオルがここにいることを許可した。
それを聞いたカオルはほっとしたように笑いかけ、

「ありがと…」

と呟き、手近な椅子に腰を下ろした。
が、すぐに鋼牙はカオルに言った。

「すまないが、急ぎで調べなくてはならないことがあるんだ。
 だから…」

そこまで聞いたところで、カオルは慌てて話を遮る。

「あっ、いいの、いいの。
 お仕事、続けてくれていいから!」

それを聞いて、鋼牙は

「悪いな…」

と言ったきり、書物に視線を注いで没頭した。

「…」

お茶をすする音、ページをめくる音、椅子がきしむ音だけが聞こえる。

「…」

やがて、カップの中が空っぽになり、カップもわずかに自分自身の手の体温が残るくらいに冷えてしまった。

(ううう、鋼牙の邪魔はしたくない!
 でも、少しはこっちも見てほしい…)

その思いから、カオルは鋼牙をじとーっと見つめていた。
だが、鋼牙はその視線に少しも気づかず、いや、気づいていても無視を決め込み、書物に目を走らせていた。

やがて、カオルは意を決したように立ち上がった。
すると、ようやく鋼牙は書物から顔をあげた。
だが、鋼牙と視線がぶつかると、カオルの決意はひゅるひゅると音を立ててしぼんだ。

「えっと… お茶のおかわりはどう?」

(えーい、意気地なし!
 こっち見て! キスして! って言うんでしょ?)

心の中で自分にダメ出しをしながら、とほほと情けない笑顔になる。

「いや、もういい」

「ああ、そう…」

そのまま再び書物に顔を戻しそうになる鋼牙に、カオルは慌てて言った。

「あのね、鋼牙…」

「なんだ?」

優しい顔をした鋼牙がカオルを見る。
カオルは、

(ああ、ここんところ忙しかったから、少しやつれちゃったかな…)

などと思いながら、

(だめ、だめ!
 ちゃんと言わなきゃ!)

と自分を叱咤する。

「今日のあたし、どこか違わない?」

カオルは椅子に座りながら姿勢を正し、おすまし顔をしてみせる。
そんなカオルをしばらく見ていた鋼牙は、

「髪を切った、か?」

と言った。

「ちっがーう!
 もっと下、もっと下!」

ずっこけそうになりながら、カオルはヒントを出す。

「…」

鋼牙に見つめられて、カオルは唇がむずむずしてくる。

(主張したいけど、あからさまなのはいやらしい…とね?)

「新しい服… とか?」

自信なさげな鋼牙。

「それも違う!
 もっと上だから!」

そう言われて鋼牙は、困った顔になる。

「降参だ、カオル。何が違うんだ?」

(う~ん)

そんな風に面と向かって尋ねられると、なんとも答えにくい。

「ごめん、なんでもなかった!
 えっと、お仕事の続きをして!」

カオルはそそくさとカップをトレイに片づけ始めた。

「おい、カオル!?」

カオルの様子が変なことに気づいた鋼牙は呼び止めようとしたが、カオルはそれを振り切るようにして書斎から出ていった。
ドアを閉める間際、

「ほんと、気にしないで!」

という言葉を残して…


to be continued(3へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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