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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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朱(あけ)の誓い(1)

本日の妄想、ちょっと(かなり)短め。
なので、続きます。


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「ふん、ふふんふん、ふ~ん♪」

鼻歌交じりで初老の男がせっせと身体を動かしていた。
大きく背伸びしたかと思えば、足元までしゃがみ込み、右から左へ、左から右へと実にリズミカルな動きだ。

中世の要塞を彷彿とさせるような重厚な石積みの洋館である、ここ冴島邸の顔とも言える玄関のドアを、きゅっと固く絞ったクロスで磨き上げているのが、この屋敷の執事である倉橋ゴンザ、その人であった。
汚れてしまったクロスを折り返して、キレイな部分を表に出し、ドアノブを丁寧に磨き上げると、ゴンザはふうっと息をついた。
その息がきりっと冷たい空気に接すると白く浮かび、頭上に広がる青空に消えていった。
ゴンザは、うっすらと汗ばんだ額を手でぬぐうと、2~3歩下がり、自分の仕事の成果を確認した。

(よしよし…)

ゴンザは満足そうに笑うと、ぶるっと身震いをした。
よく晴れているとはいえ、ここは北の管轄。
早くも身体が冷えてきて指先がジンジンしてきている。

(用が済んだら長居は無用…)

そう思ったゴンザは、足元のバケツを持つとそそくさと邸内に入っていった。




掃除も一区切りついたところで、ゴンザはリビングに顔を覗かせた。
そこには、真っ白なスケッチブックを前に難しい顔をしているカオルがいた。
どうやら、次の仕事のモチーフを何にしようかと悩んでいるところのようだった。

「カオル様、お茶でもお持ちいたしましょうか?」

「ああ、ゴンザさん。お仕事はもういいの?」

「はい。今日はお天気がよろしいので少し張り切り過ぎました。
 ちょっと一服しようかと思いまして… ご一緒いただけますかな?」

「もちろん!」




しばらくすると、リビングにかぐわしい紅茶の香りが充満していた。
ほっこりと温かくも優しい時間だ。
カオルもゴンザもとてもリラックスした、いい顔をしている。

「おや、本日のカオル様のピアス… 雪の結晶でございますな?」

「そうなの~ これね、右と左で少しデザインが違うのよ」

カオルの耳には、大きさの異なる雪の結晶が3つ、それぞれ細いチェーンの先で揺れている。
よく見ると、確かに、チェーンの長さやその先の結晶の大小の並び方が異なっていた。

「本当だ。顔を動かすとチラチラと揺れて… ほおほお、これはなんともかわいらしい」

「ふふっ、ありがとう!
 そういえば、ゴンザさんもピアスしてるよね? いつも思うんだけど、すっごく似合ってる!」

本日のゴンザは、耳たぶにピッタリとフィットする小さなシルバーのフープピアスを付けていた。
オーダーメイドの上質なスーツに、なぜかピアスという少し変わった格好だったが、小ぶりな形状で控えめな色をチョイスしているためか、不思議とそれがピッタリと様になっているのがゴンザだった。
もはや、ピアスをつけていないゴンザのほうが違和感があるくらいだ。

「ゴンザさんは若いときからしてるの? 女の子にモテたかったから、とか?」

以前から気にはなっていたが、なかなか聞けずにいたことだったので、話の自然な流れとしてカオルは聞いてみた。

「いやいや、モテようとかそういうんじゃないんですよ。ええ、ほんとに…」

「そうなの? じゃあ、なんで?」

そう訊いてしまってから、カオルは「しまった!」と思った。
なぜなら、少しだけ… ほんの少しだけゴンザの表情が硬くなったからだった。
ひょっとしたら、ゴンザのピアスには秘密があって、それはゴンザにとってあまり打ち明けたくないものだったかもしれない。
だが、ついポロっと出てしまった言葉は、もう取り返しはできない。

「あっ、無理に聞きたいってわけじゃないから…
 話したくなければ話さなくっていいから!」

カオルは慌ててフォローする。

「いや、別にそんなご大層な理由があるわけではないんですよ」

そう言いながら、ゴンザは話そうかどうしようか少し迷うような素振りを見せた。
そして、

「…お聞きになりたいですか?」

と、カオルに判断を委ねた。
カオルは一瞬迷ったが、そう訊くからにはゴンザが「話してもいい」という気持ちがあるんだろうと思って、素直にこくんとうなずいた。

「こんなお話でカオル様の耳を汚すのもどうかとは思うのですが…」

まだほんの少しだけ迷っているゴンザに、カオルは無言で小さく首を横に振り、黙ってゴンザの話を待った。

「倉橋の家は、代々冴島家の執事を輩出している家でございました。
 ですが、倉橋には本家もあれば分家もございます。
 私は本家にわりと近しい家の出ではありましたが、分家という意味では他の家の者と大して違いはありません。
 ですが、闘我様… 鋼牙様のおじいさまに当たる方ですが、闘我様は、そういう区別をなさらずにわたくしをお選びくださいました。」


to be countiued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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