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きんのまなざし ぎんのささやき

幕開けの前

ちょっと遅いですが…
明けましておめでとうございます!
旧年中はお世話になりました。
そして、今年もまたお世話になります。
(お世話してね、とねだっています。えへへ…)

さて、新年になって初めての妄想は、初心に帰ろうということで、時間的には、TVシリーズ第1弾第1話の「絵本」のちょっと前、となっています。
いつもどおり、ゆる~い感じですので、優しい目で見てくださいませ。


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『ここだ』

ざらつくようなザルバの声がそう言った。
魔導輪に言われるまでもなく、その場所には禍々しい空気が漂い、ずしりと重たい息苦しさを感じさせるような雰囲気を醸(かも)し出していた。
青々と色濃く茂る木立に囲まれたその場所に立った鋼牙は、目の前のオブジェに目を落とす。
明らかに自然石とは言い難い、いびつな楕円形に成形されたいくつもの石がぎゅっと凝り固まったようなフォルムをしているそれは、石が積まれたものというよりは、何か核となるものが石を吸い寄せて形成されているような不思議な造形をしていた。
どれかひとつが何かのはずみで剥がれ落ちれば、他の石もゴロゴロと転がり落ちてしまうようで、見ている者はなんとなく落ち着かない気持ちにさせる、そんな不気味さを持っていた。

しばらくすると、そのオブジェが作る影が、黒く蠢(うごめ)き出した。
魔戒騎士のお出ましに、動揺しているかのようだった。
それを見た鋼牙がスラリと剣を抜くと、影はより一層大きく形を変えだした。
力を貯めるように小さく縮こまったかと思うと、次の瞬間、ぴゅーんと伸びて、背後にある茂みの影の中に逃げ込もうとしたのだ。

だが、その動きよりも早く鋼牙の剣が閃く。
地面に突き立てた剣が影のど真ん中にぐさりと刺さり、影はそれ以上どこにも行けなくなってしまった。

鋼牙は慎重にゆっくりと剣を抜いた。
すると、剣にくっついて黒い影が地面から浮き上がってきた。
剣先20~30cmのところで、剣に貫かれている影は激しく暴れている。
それをジッと見つめる鋼牙のまなざしは鋭く、同時にとても落ち着いていた。

影はどうにも逃れられないと悟ったのか、少しおとなしくなった。
が、意表を突いて鋼牙に向かって飛びかかろうとした。
けれども、鋼牙は慌てることなく、手首を返してくるりと剣を回す。
その動きに合わせて影も円を描いたかと思うと、鋼牙は再び剣を地面に突き立てた。

影は縦に横にと苦し気に伸び縮みを繰り返し、それと同時に放たれるビリビリと空気を震わせるような波動を鋼牙は全身で受け止める。
音となっては聞こえはしないが、それが影の正体、人間の黒き邪念の断末魔だ。
やがて、程なくして影は黒い霧となり、かき消すように姿を消していった。
ふっと空気が軽くなり、辺りが明るくなった。

地面に突き立てていた剣を抜いた鋼牙は、血振りをくれるように剣を素早く振るうと、流れるような動きで音もなく鞘に納めた。
オブジェの浄化は、魔戒騎士である鋼牙にとっては日課であり、息ひとつ切れていなかった。

『ご苦労さん!
 今日のところはここまでのようだ。邪悪な気配はもうしないぜ』

ザルバがそう声を掛けると、ようやく鋼牙はふっと息をついて、

「そうか」

と少しだけ表情を緩めた。




右を見ても左を見ても同じように雑木が続く森の中だったが、屋敷からはそう遠くない場所であった。

『帰ろうぜ』

ザルバの声に、

「ああ」

と答えると、ザルバに教えてもらうまでもなく、鋼牙は左前方、10時の方角に視線を向けて歩き出した。
が、すぐにその歩みが止まる。

『んっ? どうした、鋼牙?』

ザルバが感じた疑問をそのまま言葉にする。
すると、鋼牙は

「…少し遠回りしていく」

とだけ言い、右方へと道を逸(そ)れていった。

(おや?)

ザルバは鋼牙の行動を不審に思いつつも、何も言わずに従うことにした。
無言で歩き続ける鋼牙の真意を気にしつつ、ザルバは辺りの風景に目を配ること数分。

(はは~ん)

なんとなく鋼牙の目指す場所が判ったザルバは、人知れず首肯(しゅこう)する。
鋼牙の目指す先は…




そこは、何の変哲もない森の中。
ただ、大きさにしてボーリングの玉くらいの石がひとつ転がっていた。
だが、それはホラーのゲートとなるオブジェのような禍々しいものではなかった。
鋼牙はその石の前まで来ると立ち止まり、コートの裾をサッと両脇に捌(さば)いて跪(ひざまず)いた。
ここは鋼牙の父、大河がバラゴの手にかかり、絶命した場所であった。

「父さん! 父さん! 父さん!」

鋼牙の幼き日。
何度も呼んで揺すってみたが、二度と再び起き上がってはくれなかった父。
自分の非力さを嘆き、「強くなれ」という父の言葉を心に刻み付けたあの日。
大河の手から投げ出された牙狼剣が深々と突き刺さり、父の墓標のように立っていたあの場所には、今、名残りとして石が置かれていた。
その石に、鋼牙はそっと手を添えた。

ザルバは鋼牙の表情を盗み見るが、そこから読み取れるものはなかった。
憎しみ、怒り、悲しみ、決意…
淡々として見える鋼牙には、そのどれも浮かんでるようには見えなかった。

(おまえは何を想う?)

が、すぐに、ザルバは打ち消した。

(まあ、それは俺様の知ったことではないな…)

魔導輪の務めは、契約した魔戒騎士が使命を果たす手助けをすること。
ホラーとの闘いに関してはうるさいくらいに指示も口出しもするが、魔戒騎士の個人的な感傷や色恋事などにはタッチしない。
大河の最期の地で、鋼牙が何を想い、何を誓おうが、横から口を挟む必要はないのだ。
鋼牙はもうあの頃のようなチビではない。
牙狼の称号を継ぎ、十分な実力を備えた一人前の魔戒騎士なのだ。

  サワサワ サワサワ

森の中を風が渡り、葉擦(はず)れの音だけが聞こえたが、それがピタリと止まった。
すると、それとともに鋼牙はスッと立ち上がった。

「ザルバ、帰るぞ」

ひどくサバサバとした様子で、鋼牙は言った。

『ああ、すぐに日も暮れる。
 さっさと屋敷に帰ろうぜ!』

何事もなかったかのようにザルバも答えた。
ザルバのその態度に、鋼牙は少し驚いたような顔をして、ザルバを見下ろした。
いつものザルバなら、何かしら「余計な一言」を口にしそうなものなのに… そう思ったのだろう。

『なんだ? 何か言いたいことでもあるか?』

素知らぬ顔でそう言うザルバに、

「いや、なんでもない」

と答えた鋼牙は、屋敷の方角へと振り返り、歩きだした。
鋼牙が去り、静けさを取り戻した森。
その奥に差し込む光がやがてオレンジ色に変わり、後に残った名残りの石を静かに照らしていた。

大河の「強くなれ」という言葉を、すでに体現している鋼牙。
だが、もうひとつ遺(のこ)した「守りし者となれ」という言葉の意味を、いまだ鋼牙は解っていなかった。
やがて、鋼牙の身に降りかかる運命的な出会い、そして強大な敵との闘いの中で、その言葉の持つ意味を知るのは、ほんの少しだけあとの話だった。


fin
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すいません、落ちがあるような、ないような… そんな妄想となってしまいました!

2017年の暮れにバタバタしていて、なんと3週間振りのアップです。
なんだか書き綴るのもたどたどしい気が…
えっ、クオリティはそんな変わってないって?
うん、まあ、だいたいいつもこんな感じですよね。ははは。

さてさて、今回は、画廊でカオルと出会う、ちょっと前に、あの地にふらりと立ち寄り、何かを想う鋼牙さんを妄想してみました。
何を想っているのかは、いろんなふうに想像を膨らませていただければいいな、と思ってます。

それでは、2018年も selfish の気ままな妄想にお付き合いくださいますようよろしくお願いします!

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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