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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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この気持ち(8)

マユリの閉塞感いっぱいの思考の波にお付き合いさせてはや何週間…
突破口はあるのだろうかと、selfish も悶々としておりましたが、ついに!

今宵もおつきあいくださいませ。

拍手[2回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

ふたりならんで歩く間、なんとなく微妙な沈黙が続く。

カチリ、カチリと雷牙の左手の魔導輪が雷牙とマユリを見上げては大袈裟な調子で大きく溜息をつく。

『はぁーっ』

ん? と気づいた雷牙が左手を持ち上げて問いかける。

「なんだ?」

ザルバはもう一度、溜息をついてみせる。

『はぁ… なんだ、じゃないだろう?
 なにをそんなふたりして遠慮しあっているんだ?』

「遠慮? 別に遠慮なんて…」

そう言いながらも思い当たるものがあるものだから、つい言葉尻が曖昧に消えてしまう雷牙。

『ふうん、そうかい?
 俺様にはそうは見えないんだがな…

 まあ、いい。
 人間どうしのことは人間のほうがわかるんだろうよ』

ザルバは、勝手にしてくれ、という具合に少し投げやりに言った。
が、すぐに、声音を低めて真剣な口調で言う。

『だがな、魔界騎士のことならお前たちよりわかってるつもりだから、これだけは言わせてくれ。
 今日を無事に終えられることができても、明日、同じだとは思わないことだ。

 今日、できることは今日のうちにやっておけ。
 今、伝えられることは、今、伝えておけ。

 それだけだ…』

そう言うと、あとは任せたとばかりに、ただの指輪と化したかのように沈黙した。

雷牙はマユリに気まずそうに視線をやり、マユリも目を泳がしていたが、ここにこのままいてもしょうがない。

「行くか…」

と一言言って雷牙は歩き出した。
マユリはそれに、

「ああ」

と帰して後を追うように小走りで駆け寄った。





そろそろ屋敷が見えてきそうな頃に、ようやく雷牙は口を開く。

「マユリ」

はっとしたマユリが雷牙を見上げる。
雷牙はマユリのほうを見ずに、ただ前を真っすぐに見たまま

「前に俺はおまえに言っただろう?
 マユリの気持ちが落ち着くまで、いたいだけ屋敷にいていい、と…」

と言った。

「ああ…」

こちらをチラとも見ない雷牙に、少し不安を募らせながらマユリは返事する。

「あの言葉なんだが… 少し訂正させてほしい」

「えっ?」

ここで雷牙は、口を真横に一文字にきゅっと閉じた。
そして、思い切りがついたのか足を止めてマユリを振り返る。
マユリも足を止め、緊張の面持ちで雷牙を見上げる。

「マユリにどうしてもやりたいことがあって、それは屋敷を出ないといけないことなら仕方がないと思っている。
 でも、もし、屋敷にいてもそれができるんだったら、このまま屋敷にいてくれて… いや、違うな…」

言いながら、雷牙は自分の言った言葉に首を振って否定する。

「マユリ、できればずっと屋敷にいてくれないか?
 俺は… 俺は、できるならマユリとこれからも一緒にいたいと思っているんだ」

マユリは目を大きく見開いた。

「これはあくまでも俺の勝手な願いだ。
 マユリがどうしてもそれに従わなきゃいけないことはないんだよ。
 でも… でもね、やっぱり、伝えておきたくて… 伝えておかなきゃいけないと思って…」

マユリは言葉もなく瞳を揺らすばかり。
それをどうとらえたのか、雷牙は視線を外して口早に言う。

「もちろん、マユリの気持ちが第一だからね。
 マユリがどんな決定を下しても俺は従うから…
 どんなことになっても俺は応援したいと思っているし、絶対に応援するから、今言ったことはあまり気にしないで!
 マユリは、思うように進めばいいからね」

そして、

「じゃあ、帰ろうか…」

と言って歩き出そうとした。
だが、あとをついてくる様子のないマユリに、すぐに足を止めて振り返る。

マユリは足を止めたまま、こぶしをぎゅっと握りしめて雷牙を見ていた。

「マユリ?」

戸惑う雷牙にマユリは言う。

「雷牙。
 わたしはこれからしたいことを自由に選んでいいのだな?
 そして、雷牙やゴンザのいる屋敷にずっといてもいいのだな?
 わたしは雷牙たちの邪魔にはならないのだな?」

マユリの声は少し震えていた。
雷牙は内心驚きつつも、落ち着いた穏やかな声で返事を返す。

「ああ、そうだ。
 俺はむしろマユリがいてほしいと思っている。
 そして、それは多分、ゴンザも同じ想いだと思う…」

それを聞いたマユリの頬に、熱いなみだが伝った。

「…あ、りが、とう…
 わたし… よく、考えてみる…」





屋敷にいてもいい、といった言葉は、いくところのない自分が可哀想で言ってくれていたのだと思っていた。
でも、そうじゃないとわかった。
そのことがマユリの心を軽くした。

そして、マユリの焦りは氷塊し、落ち着いた状態でじっくりと「自分にできること」、「自分のやりたいこと」を考えていくことができたのだった。



その後。
マユリがどう決断して、どういう未来を歩みだしたのかは私たちの知るところとなる。



雷牙に発破をかけてくれたザルバよ。ありがとう!
自分の気持ちを正直に伝えてくれた雷牙よ。よく言ってくれた!
そして、雷牙のそばを離れないという選択をしたマユリよ。なんてかわいいやつなんだ!

ああ、よかった。
ほんとうによかった。


多分、マユリが自分の中に生まれた何かに気付くのはもう少しだけ後のこと。
「この気持ちは…」と気づくのもほんの少しお預け。
でも、確実に雷牙に抱く想いは、マユリの中で育っていたのだった。


fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


…なんとか終わりました。
いったん書き上げたもののの、タイトルにある「この気持ち」がどこかに行方不明になってしまって、ちょっと焦りました。

「魔戒ノ花」のときは、マユリにとっての雷牙は、どうがんばっても「おにいちゃん」以上ではなかったのですが、「月虹」のときには結構マユリが「女」になっていてドキドキ…

マユリの気持ちが変わっていった出来事が、公式様では描かれていない期間にあったんでしょうね。
その出来事のひとつが描けたらと思ったのですが、なかなか難しかったな、というのが率直なところです。(すいません!)

今後、公式様がもしも雷牙とマユリのその後を描くとしたら、麻聖くん、頑張って「男」を演じてくださいな!
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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