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きんのまなざし ぎんのささやき

おまえのせい(3)

大人限定になると思った?
へへへ、そう思ったでしょ~?

ところが、話の場面がちょっと過去に戻っちゃいます!
ご~めんなさいね、期待通りの展開じゃなくって。 お~ほっほっほっ!

た・だ・し!
大人限定にはしていませんが、少し流血シーンがございます。
そういう描写が苦手な方は、回れ右をオススメします。
(公式様の映像を見て不快に思われるような方は、こんなところには足を踏み入れないとは思うのですが、念のため!)

ちょいと期待外れな展開かもしれませんが、よろしければ続きをど~ぞ!


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(終わったな…)

屋敷に帰ってきて自室に下がった鋼牙は、この2週間振り回され続けた敵のことを思い出して、そっと息をついた。

ホラーというものは人間の邪心から生まれる怪物なのだから、相手にしていて気持ちのいいものでは決してない。
だが、今回の指令のターゲットは、これまで対峙したホラーの中でも、特に強い印象を残した相手に違いなかった。



時は1ヶ月ほど前にさかのぼる。

大きな湖を中心としたこの管轄地を守る魔戒騎士オリトは、夕刻、番犬所からの指令を受けて帰り道を急いでいた。
2メートルに近いのではないかという長身に、短く刈り上げた襟足からは太い首筋が見える。
コートの上から見てもぶ厚い胸板がうかがい知れ、もし、街角で彼にバッタリ出会ったとしたら、ほとんどの者はその存在感に圧倒されてしまうだろう。
そのくせ、彫りの深いマスクは甘く、左耳につけた大振りのイヤーカフも嫌味がなくサマになる辺り、女性だったら誰もがうっとりと見惚れるイケメンだと言えた。
それに、少年のように好奇心旺盛な瞳の輝きと、口元に浮かんだゆとりある微笑みを見ると、言葉を交わさなくとも、彼がユーモアもわかるフランクな性格なのだろうと容易に想像できるような爽やかナイスガイだ。

そのオリトの足取りは軽く、どことなくウキウキとして見えた。
それもそのはずで、彼の家では恋人のジョアンが得意の手料理を作って彼の帰りを待っているのだ。
人家の密集している場所からほんの100mほど離れた場所にある彼の家は、オリトが施した結界のために、普通の人間の目に触れることはなかった。
彼にとっては最も心和む我が家の前にたどり着き、ドアノブに手をかけようとしたとき、背後から彼を呼ぶジョアンの声がした。

「オリト~!」

オリトが振り返ると、向こうの通りの先で紙袋を抱えたジョアンが手を振っていた。
オリトがこちらに気付いたことを確かめると、ジョアンは紙袋の中からワインのボトルを少し出して見せてウィンクしてみせた。

(おいおい…
 今夜は指令があるから、俺は呑めねぇ、っつうの!)

そう思いながらオリトは苦笑し、両手をあげて顔の前で大きくバツ印をしてみせた。
それを見て、え~っ、という顔をしたジョアンは、こちらに向かって駆けだした。
オリトに文句のひとつも言うつもりなのか、それとも出掛ける前に少しでも長くオリトのそばにいたいからなのか…

ところが、それは一瞬のうちに起こった。

通りを横断しようとしたジョアンの身体が、左側から突然現れた車によって一瞬のうちに消えたのだ。
盛大なブレーキ音とドンという音がオリトの耳に届いたときには、彼はもう脱兎のごとく駆け出していた。
オリトが通りまで来ると、白いバンの向こう側にジョアンが倒れている姿が少しだけ見えている。

「ジョアン!」

車を回り込んで彼女のそばにしゃがみ込むと、オリトは恐る恐る手を伸ばした。

「ジョアン?
 しっかりしろ!」

この辺りでは最強と言われるほどの腕前の魔戒騎士が、小刻みに震えていた。
彼の目から見てもジョアンは、大丈夫、とはとても言えない状況だったのだ。
雑巾のようにボロボロになった服から伸びている手足は、人形のそれのように力なく投げ出されていた。
右足などはあらぬ方向に捻じ曲がっている。
頭部からは血が滲み出し、流れるように美しかった栗色の髪をどす黒く染めていた。

「あぁ、ジョアン…」

顔にかかる髪をそっと手でかきあげると、苦痛に顔を歪めていたジョアンの目がゆっくりと開き、うつろな目が声の主を探した。

「…オリ…ト…」

意識があることにオリトは一縷の望みをつないで表情を明るくした。

「今、救急車を呼んでやるから!
 大丈夫、しっかりしろ!

 おい! 救急車を呼んでくれ!
 大至急だ! とにかく急いでくれ!」

心配そうに後ろから覗きこんでいた白いバンの運転手に向かって、オリトは叫んだ。
人の好さそうな痩せたその男はカクカクとうなずいたかと思うと、白いバンに乗り込んだ。
車に置いてあるケータイで連絡を取ってくれるのだろうと思っていたオリトは、すぐに信じられない光景を見た。
車に戻った男が車を少しバックさせたかと思うと、そのままオリトたちの脇を抜けて走り去っていったのだ。
すぐに状況を悟ったオリトの口から、

「くそッ!」

と口汚い罵りがついて出た。
だが、意気地なく逃げ出した男を罵倒することに時間をかけている場合ではない。
今は、ジョアンの命を救うことを何よりも優先させなければならないのだ。

「ちょっと待っていろ! 今、助けを呼んでくるから!」

そう言ってその場を離れようとするオリトの袖を、そんな力がどこにあるんだというほどの強さでジョアンが掴んだ。

「…ジョアン?」

オリトはジョアンの顔を再び覗き込んだ。
彼女の口は弱々しく開かれるが、声にならない。

『行かないで… ってジョアンは言ってるよ』

オリトの耳元で少女のような声が言った。
トカゲのような長い尻尾をオリトの耳に絡ませた魔導具ザリが、ジョアンの気持ちをオリトに伝えた。

「ザリ、おまえ、ジョアンの気持ちがわかるのか?」

驚くオリトに

『う~ん、どうなんだろ?
 でも、なんとなく彼女の意識が私に流れ込んでくるみたいに感じるの』

とザリは答える。そして、ジョアンの代弁を続けた。

『ジョアンはね、あなたに伝えたいことがあるんだって…』

「なんだ? ジョアン、何が言いたい?」

オリトは心配そうな顔をジョアンに近づけた。

『笑って… 笑ってほしいって。
 私がいなくなっても、オリトにはいつでも笑っていてほしい…』

ザリの声で、ジョアンの気持ちが伝えられる。

「そんな…
 何を言ってるんだ!

 おまえはこれからも俺のそばにいてくれるんじゃないのか?
 ずっと… ずっと一緒にいようって約束しただろ?」

自分でも情けないほどに震える声でオリトは必死にジョアンに話しかける。
泣き出しそうなオリトの顔にジョアンは手を伸ばそうとし、オリトはその手を掴んで自分の頬に押し当てた。

『オリト、ジョアンが笑ってる!
 あなたも笑ってあげないと、ジョアンだって…』

安心して逝けないよ、と言おうとしてザリはその言葉を飲み込んだ。
魔導具に人間の悲しさと言う感情は実感こそできないが、これまでも何人もの魔戒騎士とその愛する人たちの別れを見てきたから理解はできる。

潤んだ瞳でオリトはジョアンを見つめていた。
わずかに口の端があがっているだけのジョアンの顔に、しあわせそうに無邪気に笑うジョアンの笑顔が重なる。

「オリト! 早く、早く!」

白いスカートを翻しながら草原を逃げ回るジョアンを笑いながら追いかけたあの日。
オリトにつかまり、弾む息で振り向いたときの、あの弾けるような笑顔だった。

そのジョアンの精一杯の笑顔に応えようと、オリトも必死に笑顔をつくる。

ジョアンの目に涙が溢れてきた。
恐らく、ジョアンにも飛び切りのオリトの笑顔が見えたのだろう。
だが、すぐに顔が歪んだかと思うと、ジョアンの身体から徐々に力が失われていった。

「ジョアン、ダメだ! 目を開けるんだ!
 俺を置いていくな!」

オリトは必至に叫んだが、ジョアンは再び目を覚ますことはなかった。

「ジョアン! ジョアン!」

呼びかけるオリトに、

『オリト… ジョアンが逝っちゃった』

とザリの沈痛な声が響いた。
ジョアンの亡骸に顔を埋めるようにして肩を震わせるオリト。
やがて、空に向かって

「うぉーーーっ」

とやり場のない怒りを絞り出すようにオリトは叫んだ。


to be continued(4へ)
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拍手[12回]

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すみません!
本日の妄想アップはできそうにありません。
どんなふうに展開しようかまだ迷ってまして…
うまくしたら明日にでも、とは思うのですが、
きちんとお約束するのも難しく…
どうか、どうか気長にお待ちくださいませ!

2017/11/19
selfish

selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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