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きんのまなざし ぎんのささやき

おまえのせい(6)

暗いですねぇ~
一向に光が見えそうもない。 ┐(゚~゚)┌

なかなかお話が進展しなくて申し訳ない気持ちでいっぱいですが、いつの日にか来るゴールを信じて、今日も少しですが進みます。

よろしければまたお付き合いくださいませ。


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『チッ、逃げ足の速い奴だぜ』

「奴らの足取りは?」

舌打ちして悔しがるザルバに、鋼牙は冷静に追跡可能かを確認する。

『無理だな。
 あいつら、わざと人混みに紛れ込みやがった…』

溜め息交じりのザルバの答えを聞いて、鋼牙はふたりの消えた方角を振り仰いだ。
ザワザワとした人の波が留まることなく動いている。
こういう場所には、いろいろな人の ’思い’ が交錯しているため、ホラーの気配も追いにくくなるのだ。
それにこう人目が多くては、おいそれと魔戒剣を振り回すわけにもいかない。
さすが、魔戒騎士が一緒に行動しているだけあって、追跡するのに不利な状況がどういうものかをよく心得ている。

「そうか…」

鋼牙は低く答えて白いコートを翻した。
大股で直線的に進む彼は、あっという間に賑やかな場所から遠ざかる。
季節外れのロングコートをなびかせて闊歩する彼を、チラリと見返す人は何人かいたが、それ以上の興味を持つ者はいない。
奇妙に思うかもしれないが、大きな街では、自分と関わりのない者への関心などだいたいそんなものだ。

表向きは無表情で歩を進める鋼牙だったが、内心は少し焦っていた。
彼が今回の指令を受けたのは1週間ほど前だったろうか。

  ホラーと行動をともにしている魔戒騎士がいる。
  彼が闇に堕ちているならば、ホラーとともに斬ること…

それが鋼牙への指令だった。

ホラーの仕業と思われる失踪事件と、オリトとかいう魔戒騎士の目撃情報を追ってこの街にたどり着いたとき、仕事の半分は終わったと思った。
ザルバがホラーの気配を追えばすぐにも奴らの居所は知れると思っていたのだ。
だが、どうしたことかザルバは邪悪な気配を少しも感じることができなかった。
それが、今日になって、ようやく微かな邪気を感じ取ったので慌てて来てみれば、向こうもこちらの行動を察知したのか、すんでのところで逃げ出していた。

『それにしてもおかしな奴だ』

腑に落ちない様子でザルバが呟くと、鋼牙は歩みを緩めることなく返事をした。

「ホラーの気配が弱い、とかいうことか?」

『ああ、そうだ。
 自分で言うのもなんだが、俺様の能力を持ってしても察知するのが難しいほど、奴の邪気は微(かす)かだ。
 人の強い陰我から生まれ、人を喰らおうとするホラーの気配がこれほど弱々しい奴は、今まであまりお目にかかったことがない』

「…」

ザルバの言葉に鋼牙は考える。

「結界か?」

思いついたことを口に出してみる。
かつて7体の使徒ホラー殲滅を命じられたとき、カルマというホラーが結界のために発見が遅れたことがあった。

『いや… 多分、違うな』

わりとあっさりザルバは否定した。

『ホラーがどこかに結界を張って隠れているってんなら ’ナイ’話でもない。
 だが、ついさっき、ニアミスしたときでさえ感じ取れた気配は極端に薄かった。
 ありゃ、俺様のように出来のいい魔導具じゃなかったら、目の前に来るまで気付かないくらいだぜ』

自信家のザルバが多少オーバーに言ってることは否めないが、今回のホラーはかなり特異なホラーであることは確かなようだ。
この分では無事に指令を果たして屋敷に戻るのは当分先のことになりそうだと、鋼牙は溜め息でもつきたい気分になった。





(ふう… 危ないところだった)

オリトはよろめくようなジョアンを庇いながら、急いで雑踏の中に身を紛らわせた。
遅かれ早かれ自分たちに追っ手がかかるのはわかっていたが、できるだけ衝突は避けたかった。
チラッとしか姿を見ていないが、追っ手である魔戒騎士のまとうオーラは半端なく強烈だった。
しかし、それでいて、周囲から自分の気配を隠す能力にもずいぶん長(た)けていた。
彼がどういった魔戒騎士なのかは知らないが、恐らく、相当な手練れだろう。

(今夜は久しぶりに外食でもしようかと出掛けてきたのだが…)

「ジョアン、今日はもう帰ろう」

オリトの言葉に、こくん、とうなずいたジョアンは、オリトの袖口をつかんでいる。
彼女が不安になったり、甘えたりしたいときにしていたクセだった。
そのことにハッとしてジョアンを振り返ると、彼女の頼り切ったような目がオリトを見上げた。
彼女はジョアンであって、ジョアンではない。
複雑な想いは間違いなくある。
だが、こいつを守ってやりたいという気持ちも、否定しようもなく沸々と湧いていた。

「行こう…」

優しいオリトの声が喧騒にかき消され、ふたりの姿もあっという間に雑踏の中に消えていた。



あの事故の日から今日まで、ジョアンの姿をしたホラー セクメトと、魔戒騎士オリトは共に過ごした。
もちろん、あれからすぐに家を捨てた。
あの家はとても居心地がよかったし、ジョアンとの思い出もたくさんあったから離れるのはとても残念だったが、かつての仲間と闘う羽目にならぬよう追っ手から逃れるためには仕方がない。
仕事柄、広い管轄のあちこちに潜り込める場所をいくつも持っているから、身を寄せるところには困らない。
そのひとつに身を落ち着かせて、ふたりの新しい生活は始まったのだった。

そして数週間を過ごすうちに、生活にも、あるリズムが生まれてきた。

朝、オリトはジョアンよりも早く起き出す。
そして、毎日決まった時間には出掛けていき、陰我の宿るオブジェを浄化する作業にあたった。
今となっては番犬所に出向くこともできなくなり、だからと言ってセクメトを斬ることもできなかったが、できる範囲で魔戒騎士としての務めを果たそうとし続けた。
謝罪とか償いとかいうつもりはない。
ただ、自分のこれまでの生き方をすぐには変えようがなかったのだ。
そんなオリトに、セクメトは何も言わなかった。
ひとりで身支度を整え、「いってきます」のキスをジョアンの頬に残して出掛けていくオリトを、セクメトはベッドの中で眠ったフリをして見送るのだ。

オリトが仕事から帰ってくると、ふたりで食糧の調達に行く。
手を繋いで一緒に買い物をするふたりは、他人から見れば、家事に協力的な夫と少し恥ずかしがりやな妻の若夫婦といった感じだ。
そうして、家に帰ればジョアンが食事を作り、その間にオリトは散歩を装いながら辺りを偵察し、人目のない場所があれば剣を振り回して自らの鍛錬に努めた。

やがて、ジョアンの作ったおいしい夕食を食べ終えると、ふたりは身を重ねるようにして床につく。
ジョアンの柔らかい肌に触れ、甘い匂いに包まれると、オリトは魔戒騎士ではなくひとりの女を愛する普通の男になった。
そして、互いの名を呼び果てたあと、幸せな疲労感の中で眠るのだ。

が、一緒に暮らすようになって、時折、彼女は足を痛がる素振りを見せるようになった。
どうやら、ジョアンの姿を維持するのが難しくなってくると、そういう症状が出てくるらしい。
そんなときには決まって、オリトの眠った後に彼女はベッドを抜け出した。
そして、明け方に戻る頃には、彼女の足はなんともなかったかのように痛みも消えていた。

どこに行き、何をしているのか…
オリトは、それを知らぬフリをした。



魔戒騎士であることは捨てられず、ホラーであることは変えようがない。
にも関わらず、ふたりは互いに求めることも止めようがなかった。


to be continued(7へ)
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拍手[15回]

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無題
拍手コメント文字数、オーバーしてしまったのでこちらでお話へのコメントさせて頂きます!(てへ)

鋼牙とザルバっ!出てきましたねぇ~!!
ワクワクドキドキ☆

鋼牙とザルバ、オリトとジョアン。この4人が出逢う日も近そうです!その時の鋼牙とオリトの表情、何を話すのか...など、とても気になります!ジョアンはベットを抜け出し何処に行くのでしょうか?一人で人狩り・捕食ですか?鋼牙が彷徨いている街へ行くんですか?!ジョアンが一人で人狩り中に鋼牙と出会ってしまうのでしょうか?それとも....??目が離せませんね!わくわく(o>ω<o)

鋼牙に来た指令...鋼牙はジョアンとオリトを見てどう判断をするのか...。Mionはオリトが闇に落ちているとは考えられません。と、なれば、鋼牙がオリトを切り捨てることはしないのではないか...とも考えられて...。selfishさま、ジョアンの身体を喰らったホラー・セクメトは魔戒剣で斬られてしまう運命ですか?それとも魔戒法師に錬成されて魔導具に...?あ...だめか...。オリトにはもう魔導具・ザリがいますもんね(ーー;)魔導具を二つ持っている魔戒騎士なんて聞いたことありません( ̄▽ ̄;)!!
セクメトは斬られてしまう運命なんですか?!や~んっ!なんとか救ってあげてください!(あ、あれ?selfishさまの描かれる描写がとても繊細すぎてセクメトに情が移っているのかしら?笑)
救うと、いっても...三話...見る限りでは鋼牙は、ジョアンこと、セクメトを封印したのでしょうね。(そんな印象を受けました。)
鋼牙が対峙することになるセクメトはどんなホラーなのでしょうか...?鋼牙が数多対峙したホラーの中でも最も強敵だという印象を残すことになったセクメト...なのに、セクメト自身の気配は極端に薄い...どんな特異なホラーなのでしょう!その能力、とっても気になります(;一_一)

このお話の流れだと、「決戦」...入れてくれそうですね~(≧∇≦)た、楽しみにしております!はいっ๑•̀ㅁ•́ฅ✧←さらにおねだり☆ミww
心桜 2015/05/25(Mon)07:55:11 編集
Re:無題
すごく熱のこもったコメントで、嬉しくって嬉しくってしょうがないデス! (≧▽≦)

そうそう!
セクメトを魔導具にしてしまおうか… というのも、実はちょっと考えてました。
そんなことを考える人は他にはあまりいないかなと思っていたのですが… さすが心桜様!
彼女だったら、人間が頼りにしたら、それに応えてくれそうですもんね。
なかなかよい魔導具になるかもしれません。

ただね~
セクメトがどうなるか、オリトがどうなるかは、まだちゃんと決まってないんです~
週末までの間、ノラ~リクラ~リと考えることになりそうです。

そ・れ・と…
アクションはですね~
ト書きで「ここでアクション(Y監督にお任せ~♪)」と書くだけですよ、きっと。
ふふふ。

P.S.
もし、非公開にしたいようでしたら、またお知らせくださいね。
【2015/05/28 21:07】
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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