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きんのまなざし ぎんのささやき

おまえのせい(7)

てっきり、2~3話で終わると思っていたお話が、回を重ねて7話目です。
のらりくらりと書いていて、みなさん、飽きてないといいんですけど…

…というわけで、今回もちょっとだけ進みます。ちょっとだけ。


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『オリト、邪悪な気配が!
 ここから南東の方角だよ』

少女のような声で、オリトに次の標的の位置を知らせた魔導具ザリ。

「南東だな… 了解」

朝の通勤ラッシュの時間帯が終わり、少し落ち着きを取り戻した駅前のロータリーをかすめてオリトは歩(ほ)を進めた。
ザリの案内で確実に陰我を宿すオブジェへと向かう…

以前、ザリの意識はセクメトによって封じ込められてしまっていた。
だが、それに気づいたオリトは、ザリを元に戻すように頼んだのだ。
なにせ、いくら魔戒騎士として腕がたつとはいっても、魔導具の助けなしでは、オブジェにしろゲートにしろ見つけられないのだから。
殲滅(せんめつ)せよと指令の下ったホラーを斬ろうともせず、行動を共にすることになり、魔戒騎士として掟を破ることになったオリトだったが、それでも魔戒騎士としての務めは何がしか果たしたいと思っているのだ。

その頼みを聞いて、もちろん、セクメトはいい顔をしなかった。

「おまえのことは、俺からちゃんと話すから…
 ザリにはおまえのことで文句は言わせない。だから… 頼む、ザリを元に戻してくれ!」

誠実で真摯なオリトのきれいな目に吸い寄せられるように、ジョアンは目が離せなかった。
結局のところ、セクメトにしてみれば、ザリが覚醒した結果、他のホラーがどうなろうと知ったことではない。

(オリトがこれほどまでに言うのであれば…)

ザリは折れる形で、ザリの意識を解放することにした。
もちろん、ザリのほうも、倒すべき相手と一緒にいるオリトには驚いた。
そして、オリトの話を聞きながら思った。

(オリトは魔戒騎士としての心も失くしちゃいない…
 きっと、ジョアンを亡くして一時的に混乱しているんだわ。
 うまくすれば、間違いに気づいて、こんなばかげたことも辞めてくれるかもしれない)

『わかった、オリト。
 そいつのことはともかく、あたしはこれまでどおりのことをやればいいんだね?』

それを聞いたオリトの顔がパッと明るくなる。

「ああ。
 ありがとう、ザリ。 これからもよろしく頼むよ」

そんなわけで、ホラーと魔戒騎士、そして魔導具の奇妙な関係が始まり、今に至っているのだった。



ザリの声に導かれて、オリトは、とある病院の屋上の隅にあるオブジェにたどりついた。
空調機器の設備の影の、人目に付きにくい場所だった。
禍々しい邪気を発するそれの前に仁王立ちになったオリトは、スルリと剣を抜いた。
長身の彼に合わせて、普通のものよりだいぶん長い、細身の片刃だ。
その剣が明るい日差しを反射して、刀身の鍔元から切っ先にかけて光が走っていく。
じりじりと腰を落としたオリトは、剣を握る右手を顔の後方に引き、切っ先をオブジェに向けて左手を剣の峰に添えた。
まるで、弓につがえた矢を引き絞るような恰好だ。

「はっ!」

気合を込めてオブジェに必殺の突きをみまわせると、いびつな形のそれは弾けるようにしてバラバラに飛び散った。
すると、そこから黒い霧状の邪気の固まりが逃げ場を求めて飛び出してきた。
オリトはそれを下から虚空に向けて切り上げるように剣を一閃させると、たちまち、邪気の残骸は屋上を吹き抜ける風に紛れて消え去っていった。

 ふぅ…

小さく息を吐いたオリトは、舞いでも舞うように剣をひらめかせて鞘に戻し、心を落ち着かせるように目を閉じた。
が、オリトはすぐに目を開けた。
オブジェの浄化は終わったというのに、その目は鋭い光を放っている。

『オリト!』

注意を喚起するザリの声に、

「あぁ、わかってる…」

と落ち着いた低い声で返事をする。
オリトがゆっくりと振り返ると、彼の目に白いコートが映った。
それを見たオリトは、数日前、セクメトと一緒に間一髪で逃げ切った相手であることにすぐ気付いた。

「…」

無言のまま、しばし視線を交わし合う。

鋼牙は敵意などは感じない、涼やかな目でひたと見つめている。
その鋼牙の真意を推し量るようにオリトは油断なく見返していた。
が、その張り詰めた空気を破ったのはオリトのほうからだった。
ふっと笑みを浮かべ、両手を広げると、本来の人懐こい目に変わっていた。

「あんた…
 見かけない魔戒騎士だが、俺に何か用でもあるのか?」

もちろん、相手の用事などわかってはいたが、このとぼけた問いかけに奴がどう出るのかを試してみたかった。
すると、鋼牙のほうは表情を変えず、

「いい腕だな」

とだけ言った。

(解りきった質問に、まともに答えるのは時間の無駄と言うことか?)

余裕のある鋼牙の態度に、少し舐められているようにも感じていい気持ちはしなかったが、鋼牙があまりにも悪びれた風でもないので、言葉以上に何か含みがあるようにも思えなかった。

「あんたも相当な腕前なんだろ?」

鋼牙の佇まいは、一見して自然体なようにも見えるが、実は寸分の油断もないことから、十分に実力が推量できた。

『こいつをつかまえて ’相当な’ とはな… 驚いたぜ』

少し皮肉めいた口調でザルバが呟くと、ザリがお返しとばかりに、

『そんなに名前の通った騎士なの?
 だったら、もったいぶらずに名乗ったらどうなのよ!』

と不機嫌を露わに叫んだ。

『はは~ん。 いいだろう。

 冴島鋼牙…

 その名をお嬢ちゃんは知っているかな?』

からかうようにザルバ。

『冴島… って、あの黄金騎士牙狼の冴島鋼牙だって言うの!』

ちょっとやそっとの名前じゃ驚かない心積りだったが、最高位の鎧を継承する男の名を聞かされたザリはさすがに慌てた。
オリトも何も言わなかったが、内心かなりの衝撃を受けていた。

「ザルバ、いい加減にしておけ」

調子のいいザルバを、窘(たしな)めた鋼牙は、オリトに向かって言った。

「おまえは、ホラーと行動を共にしているのか?」

鋼牙の視線は、嘘も誤魔化しも許さないくらい真っ直ぐだった。
もちろん、オリト自身も嘘や誤魔化しなどは言うつもりはなかったから、相手があの冴島鋼牙だと知っても妙な気負いも緊張もない。

「そうだな。
 他人の目から見ればそう映るだろうな」

そう言うと、今いる日蔭から日差しの降り注ぐ場所へと出てきて、鋼牙のそばの手すりへと移動して遠くを眺めた。
屋上を吹き抜ける風が、気持ちよく吹き渡っていく。

「そうか…」

低い声が背中から掛けられたが、少し気配が変わったのを感じてオリトは振り返った。
見ると、冴島鋼牙はこの場を立ち去ろうとしていた。
どうも、相手の行動が読めない。

「おい!
 俺を斬らなくていいのか?」

思わず、そう声を掛けると、歩を止め振り返った鋼牙が言った。

「ああ。
 その必要はないだろう?」

そう言うと再び歩き出し、一切振り返ることなく遠ざかっていった。

(どうして…)

ひとり屋上に残されたオリトは半ば茫然として、手すりに背中を預けた。
てっきりこの場で斬られると思っていた。
それならそれでもいいと思っていた。
だが、あの男… 冴島鋼牙は、斬る必要がないという言葉を残して去っていった。

奴はオリトにとっては、味方ではない。
故に、敵であることに違いはなかった。
ただ、不思議と嫌悪感などはなく、どちらかと言うと気持ちのいい相手であるような気さえした。



(冴島鋼牙。
 次に会うときは…)

オリトは表情を引き締めると、手すりから身体の重心を戻し、力強い足取りでその場を後にした。



to be continued(8へ)
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拍手[19回]

コメント
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すみません!
本日の妄想アップはできそうにありません。
どんなふうに展開しようかまだ迷ってまして…
うまくしたら明日にでも、とは思うのですが、
きちんとお約束するのも難しく…
どうか、どうか気長にお待ちくださいませ!

2017/11/19
selfish

selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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