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おまえのせい(8)
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鋼牙が指令のために出掛けて何日か経っていた。
この頃になってようやく、ゴンザとふたりきりのお茶の時間が、日常的に感じられるようになってきていた。
「ゴンザさん、今日も日差しが強いね」
ゴンザの淹れてくれたお茶を一口飲んで、おいしい、と呟いた後、新緑の眩しい窓の向こうに目をやりながらカオルが言った。
カオルの視線の先を追いかけるように見やりながら、
「さようでございますな。
このところ毎日暑い日が続いて、夏が来たかと錯覚しそうです」
とゴンザも同調した。
「…鋼牙。大丈夫だよね…」
呟くようなカオルの言葉に、窓の外を見ていたゴンザはカオルのほうへと視線を向けた。
カオルは窓の外を見ているようでいて、もっと遠いところを見ているような表情だった。
それを見てゴンザの顔は微妙に曇ったが、すぐに穏やかな笑顔になると、
「鋼牙様を信じるしかございません」
とだけ言った。
それを聞いたカオルは視線を少し落としたが、すぐに窓のほうを見上げた。
「そだね。…うん、大丈夫。あたしも信じてる…」
にっこり笑ったカオルが、ゴンザを振り返った。
それに応えてゴンザも安心したような笑みを返した。
そうしてしばらく優しい視線を交換し合った後、カオルはティーカップを手に取り、口に運ぼうとしながら言った。
「それにしても…
鋼牙ったら、たまには連絡くらいしてくれてもいいのにね」
冗談めかして怒ったような顔をして見せるカオルに、ふっふっふ、と笑ったゴンザは、
「便りがないのはよい便り…
そう思うことにいたしましょ?」
きらきらと輝く琥珀色の紅茶を口に含んだカオルは、香(かぐわ)しい芳香に包まれるしあわせを感じつつ、少し寂しそうな目をした。
「鋼牙は… 昔からそうだもんね。 なぁんにも言ってくれない…
不愛想なヤツって思ってたこともあったっけ」
昔を思い出して小さく笑うカオル。
「カオル様…」
思わずゴンザが痛ましい表情になったので、それに気づいたカオルは少し慌てた。
「違うの!
なんにも言わないけど、今なら、あの人の… 鋼牙のすることは信じられるわ」
その言葉にゴンザはしみじみとうなずいて、
「はい。
鋼牙様はきちんと指令を全うして、無事にお帰りになられます」
と請け負った。
そして、次の瞬間、お茶目な顔で、
「それと、カオル様。
鋼牙様は不愛想なのではございません。
どうか、クール、と仰ってくださいませ」
と言うと、誘われるようにカオルも笑顔になるのだった。
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オリトは歩いていた。
目の前に紗(しゃ)がかかったような、ひどく曖昧でぼんやりとした風景の中を…
最初のうちは、ここはどこにでもあるような、これと言って特徴のない場所に思えた。
(いや、この場所は…)
確かな既視感を覚えながら現実感のないままにゆらゆらと先へ進む。
すると、その先に… 見えた!
ほんの数週間前まで、オリトの住んでいたあの家だ。
だが、その家の手前には、ジョアンの事故現場となった道路がある。
どうしようもなく重い心を抱えたまま、その道路に面したところまで歩いて行き、立ち止まると、あのとき彼女が投げ出された辺りを見つめる。
もちろん、何もない。
人ひとりの命が消えたことなどなかったかのように、なぁんにもなかった。
まるで、あの悪夢のような出来事がなかったかのようにさえ思えてくる。
オリトは視線を真っ直ぐに戻して再び歩き出し、家へと向かう。
ひょっとしたら、ジョアンは無事に生きていて、玄関を開けたら笑顔で迎えてくれるかもしれない。いや、そうあってほしい、と強く願っている自分に気付く。
オリトがドアノブに手をかけようとしたとき、背後から彼を呼ぶジョアンの声がした。
「オリト~!」
オリトが振り返ると、向こうの通りの先で紙袋を抱えたジョアンが手を振っていた。
(馬鹿な…)
思わず表情が固くなり、激しい動揺がオリトに走る。
そして、次の瞬間、反射的に叫んでいた。
「ジョアン! こっちに来るんじゃないっ!」
オリトが緊迫した様子で顔を引きつらせているというのに、それがまるで見えないかのように、ジョアンは紙袋の中からワインのボトルを少し出して見せてウィンクしてみせた。
そう、あのときとまるで同じように。
(なんだっていうんだ!)
オリトは激しく混乱していたが、すぐに思考を中断させた。今は考えている場合じゃない。
強く地面を蹴ったオリトは、彼女の元へと走り出した。
にこやかにオリトに近づいてくるジョアンは、もうすぐそこだ。
これなら、ギリギリ間に合って彼女を救うことができるかもしれなかった。
いや、仮に間に合わないとしても、車に跳ね飛ばされるのはふたり一緒になるだろう。
彼女と共に死ねるなら… それはそれで本望だった。
だが…
オリトの目の前で彼女の姿が消えた。
激しいブレーキ音や事故の衝撃音が聞こえたと思ったら、まるでブレーカーでも落ちたかのようにオリトの周りから音が消え、不気味なほどの静寂に包まれた。
(何が起こった…)
すでに知っているはずの出来事が再び目の前で繰り返され、唐突に幕が下りた感じの今、オリトは茫然と佇(たたず)むしかなかった。
が、すぐに抑えがたい感情がドクドクと脈を打ち始める。
その衝動を解き放つかのようにオリトは空に向かって叫んだ。
「うぉーーーーッ」
悲痛な咆哮がうららかな陽射しの中に響き渡っていくのと同時に、オリトは意識を覚醒させた。
暗い室内が目に飛び込む。
そこは… そうだ、昨晩、ジョアンとともに潜り込んだ寝床の中だ。
(夢、か…)
ぐったりとした疲労感。
どうしたことだろう… あのときのことを夢に見たのは初めてだった。
今日、オリトの前に現れた冴島鋼牙。
彼と遭遇したことが関係しているのだろうか?
最強の魔戒騎士とも言われる彼が追っ手ならば、自分たちに未来はないも同然だ。
だが、彼はオリトを斬らなかった。
冴島鋼牙の真意はどこにあるのか?
ジョアンの待つ住処に戻ると、オリトは黄金騎士のことをジョアンに話した。
そして、これからどうなるのか、どうするのかを話し合った。
ひょっとしたらふたりが生き残る道はあるのかもしれない。
あるいは、どちらか一方が? いや、やはり二人の運命は決まっているのかも…
結局、今後についての結論は出せないままだった。
暗闇の中で小さく息をつくと、オリトは隣に寝ているはずのジョアンを手で探した。
(いない…)
そう言えば、身体の調子があまりよくないようだった。
街で冴島鋼牙とニアミスした日から、ジョアンは夜の外出をしなくなっていた。
前の外出からどれくらい経ったのか、日数を頭の中でカウントしてみても、そろそろ ’補給’ しなければいけない頃だった。
ジョアンは危険を冒して狩りに行ったのか?
あるいは、オリトを見限ってここから出ていったのか?
だが、考えていたのはほんの一瞬だった。
「ザリ、ジョアンの居場所が探せるか?」
オリトは魔導具に声をかけた。
『無理だよ、オリト。
オリトも知ってるでしょ、あいつの邪気はすっごく弱いんだから…
どんなに優秀な魔導具だって追跡するのは難しいよ!』
「無理を承知で探ってくれないか?
な、頼む!」
『しょうがないなぁ…』
ザリは渋々ながらもオリトの頼みを聞くことになり、オリトは勢いよく寝床から飛び起きると、素早く外出の準備を整えてドアを飛び出していった。
to be continued(9へ)
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コメント
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
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