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きんのまなざし ぎんのささやき

かわいいあのこ(8)

いよいよ、最終回です。

冴島邸に新しい空気を運んだ(かな?)サクヤと、別れのときでございます。

サクヤと過ごした日々…  楽しかったなぁ~




::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

翌朝、冴島邸の玄関前には、手荷物を持ったサクヤと、鋼牙とゴンザの姿が
あった。

「本当に送っていかなくていいのか?
 いくらでもゴンザに駅までいかせるぞ?」

鋼牙がサクヤに念を押すように言った。

「いえ、ほんとうに大丈夫です。
 タクシーを手配していただいたので、それで十分です。

 それに… お世話になったこのお屋敷の前で、みなさんとはお別れしたいの
 です」

そう言うと、サクヤは屋敷全体を仰ぎ見た。
落ち着いた色調の洋館が、サクヤが最初に来たときと同じように、青空を
バックに威容を放って建っていた。

「それにしても、カオル様は遅いですねぇ」

心配げに時計をチラチラ見ながらゴンザが呟く。

サクヤの急な退去の知らせは、昨日のうちに、ゴンザの口からカオルに
伝えられた。
知らせを聞いたカオルは、最初のうちはショックを受けたものの、サクヤが
屋敷を去る時間をゴンザに確認すると、

「あたし、今日はやることがあるから、そっちに行けそうもないわ。
 でも、明日のその時間には行くから、待ってて!」

と告げた。
その言葉の通り、カオルは昨日一日姿を見せず、そろそろ迎えのタクシーが
来る時間が迫っていた。

『来たぞ!』

その時、ザルバの声がして、その場にいた者は一斉に道の向こう側に視線を
向けた。

ザルバの言葉通り、カオルがこちらに向かって駆けていた。

「カオル様!」

サクヤも数歩、カオルのほうへと駆け寄った。

「ごめんなさい! はぁ はぁ」

サクヤの目の前に来ると、カオルは胸に手をあてて、呼吸を整えた。

「サクヤちゃん、これを… はぁ はぁ」

まだ整わない呼吸の下、カオルは手にしていた紙袋から何かを取り出した。

「これは…」

カオルから渡されたものを手に取って、サクヤは驚きの声を発した。
それは、小ぶりなキャンバスで、そこには笑顔のサクヤが描かれていた。

「サクヤちゃんが行っちゃうって聞いたから、昨日急いで描いたの」

ようやく呼吸が整ったカオルが、ニッコリと笑った。

「カオル様、ありがとうございます。
 すごく… 嬉しいです!」

受け取った絵に負けないくらいの笑顔を、サクヤはカオルに向けた。

「よかった、喜んでもらえて…」

ほっとしたカオルは、すぐにしみじみとした顔をして言った。

「…サクヤちゃん、元気でね」

「はい、カオル様も…
 短い間でしたが、ほんとうにありがとうございました…」

ふたりとも目を潤ませてじっと見つめ合った。

そんなところへサクヤを乗せるはずのタクシーがやってきた。

「あっ」

それに気付いたカオルが、タクシーに気を取られていると、サクヤは、
手荷物の中からごそごそと何かを取り出した。

「カオル様、これ…」

見ると、それはカオルが依然サクヤに貸していた画集だった。

「長い間お借りしていてすいませんでした。
 お返しいたします」

カオルは小さくうなずくとサクヤの手から画集を受け取った。

「それでは…」

サクヤは、鋼牙を見ると別れの挨拶をした。

「鋼牙様、サクヤがお願いしたこと、どうかお願いします」

鋼牙は大きくうなずいて言った。

「おまえも元気で…」

次にゴンザを見た。

「ゴンザさん、教えていただいたたくさんのこと、決して忘れません」

ゴンザは鼻をすすりながら、最後の言葉を掛けた。

「大丈夫!
 落ち着いて、誠心誠意を尽くせば、どこでだって立派にやっていけますよ。
 機会があれば、またいつでもいらっしゃい」

「ありがとうございます…」

サクヤの瞳がどんどん潤んできた。
指で左右の目を抑えた後、カオルを振り返る。

「カオル様…
 どうかいつまでもおしあわせに。

 サクヤは、これからもずっと、そう願っております」

「サクヤちゃん…」

それきり、カオルは何も言えず、サクヤの手を握りしめた。
サクヤちゃんも、カオルの手を握り返し、無言の時を共有した。
そして、サクヤは吹っ切ったように顔をあげると、笑顔を作り、みなの顔を
順に眺めた。

「鋼牙様、ゴンザさん、カオル様、お世話になりました。
 このお屋敷で過ごした日々のこと、わたし、忘れません…」

サクヤは深く頭を下げた。

「それでは、お元気で」

そう言うと、待たせていたタクシーの後部座席に乗り込んだ。

サクヤがタクシーの運転手に声を掛けると、ドアが閉まり、静かにタクシーは
動き出した。
サクヤは振り返り、冴島の屋敷と人々の姿を見た。

(ありがとうございました…
 またいつの日かお目にかかれたら…)

別れの寂しさに胸がつぶされそうだったが、未来にわずかな希望を込めながら、
サクヤは必死に手を振り続けた。



サクヤの乗ったタクシーが見えなくなり、カオル達が別れの余韻のまま、
立ち尽くしていると、ゴンザが誰に言うともなく言った。

「さぁ、屋敷に入りましょう」

鋼牙もカオルもうなずくと、屋敷の玄関へと足を進めた。
そのとき、カオルの手にしていた画集から何かがひらひらと落ちてきた。

「カオル様、これは…」

そう言いながら、落ちていたものを拾い上げて、ゴンザがカオルに渡した。
受け取ったカオルは、その小さく折られた紙片をそっと開いてみた。

「カオル様

    鋼牙様とどうかおしあわせに

                 サクヤ」

少しクセのある文字が、丁寧に書かれ、お行儀よく並んでいた。
そして、その短い言葉と一緒に、四葉のクローバーが挟まれていた。

(サクヤちゃん、ありがとう。
 いつか今度会えるときにも、あたしはしあわせだよ、って言えるといいな)

カオルは四葉のクローバーをつまみ上げて、じっと見つめた。
そして、それを紙片に挟んで元通りに折りたたむと、画集にそっと挟んだ。

気遣わしそうにカオルを見ていた鋼牙には笑顔を、そしてゴンザには言葉を
掛けた。

「ゴンザさん、あたしお腹すいちゃった!
 何か食べさせてもらえないかな?」

鋼牙とゴンザは一瞬驚きの表情を浮かべて、お互いに顔を見合わせたが、
ほっと安心したような顔になると、ゴンザは言った。

「かしこまりました、カオル様。
 ただいま、すぐに…」

一礼して、ゴンザは先んじて屋敷に入った。
ゴンザを見送った後、鋼牙がカオルを振り返り、優しく聞いた。

「カオル、無理をしたんじゃないのか?」

「うふっ、大丈夫」

そう言いながらも、カオルはかなり疲れていた。
食事や寝る間も惜しんで、サクヤの絵を描くことに没頭していたのだから。
それに、サクヤとの別れで精神的にも虚脱感を覚えていて、それが一層
カオルの身体から力を奪っていた。

そんなカオルが屋敷へと歩き出そうとしたとき、

「?!」

鋼牙がカオルの腰を支え、屋敷へと歩き出したので、カオルは驚いてしまった。

「支えが欲しいときは、素直にそう言え」

その言葉に、カオルの心がぽっと温かくなった。

「…うん」

カオルは素直に鋼牙に身体を預け、ふたりは寄り添いながら屋敷の玄関へと
消えていった。



fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


長かった妄想も、これにて終了~
当初は
  サクヤが冴島邸に来て
  カオルを取られた鋼牙がちょっとおもしろくないぞ、と思って
  鋼牙とサクヤの仲良さげなところを目撃したカオルが引きこもって
  急遽帰ることになったサクヤを囲んで、誤解が解ける
という4回くらいのお話になるかなぁ、という大雑把な設定で始まったのですが
(ほんとにこのくらいアバウトにしか考えてませんでした! まぁ、それは、
 いつものことですが…  苦笑)、途中で、
  サクヤが熱を出したり、
  カオルにストレートな質問したり、
  鋼牙にカオルのことをお願いしたり、
といったことがあり、サクヤが予想外に動いてくれました。

いいねぇ、いいねぇ、サクヤったらグッジョブだよ… と思いましたねぇ~


勝手に捏造しちゃったサクヤでしたが、零くんのように、いろんなことを
お見通しで、「おまえらいい加減、世話を焼かすなよ」 という感じとは
違った視点から、鋼牙さんとカオルちゃんに 「早くくっついちゃって
ください」 というアピールができて、書いててとっても楽しかったです。

みなさんにも 「面白かった」 と思っていただけたら、よいのですが…

拍手[39回]

コメント
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ちょっとだけ
ご無沙汰しておりました!
ブログへのUp作業より、執筆を優先させていた為に、ネット上から少々“失踪状態“でした。
パチンコの牙狼・新台が導入されているとかで、今までに無い程やたらと新聞広告が入れてあって、そのたびに保管しております。(笑)
サブタイトルの「ファイナル」を見て、今の牙狼は牙狼じゃないのかい!と突っ込みを入れそうになってます。もぉ、賛成R&Dさんったら…。
にしても、やっぱり鋼牙の鎧はカッコイイ~~♪

さて、サクヤちゃん。
こんな風に「何で結婚しないんですか?」と、ド直球で質問してくれる人がいればなぁ~とか思っちゃいました。
それでも鋼牙は「よし、プロポーズ!」とは、ならない人なんでしょうけどもねぇ…。嗚呼、萌え萌え。
URL 2013/05/28(Tue)12:11:28 編集
Re:ちょっとだけ
おっ、新聞広告収集家(牙狼ファイナル限定の)だ!
お久しぶりです!
サンセイさん、めっちゃ力入れて作った台みたいなので、たくさん稼働させないと… ということなのでしょうか?

そう、サクヤちゃん。
変化球なしでズドンっといいところを突いてくれました!
最初はそんなこと想定していなかったので、サクヤがいきなり、そういうセリフを吐いたときには、自分でも「おぉ~っ」とビックリしました。
こういう人、本家様にもいたらいいですよね?
【2013/05/28 21:14】
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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