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きんのまなざし ぎんのささやき

証~あかし~(1)

一期の牙狼で、「怖い作品を3つ選べ」 と言われたら、即答できます!

  指輪
   偶像
    水槽

見事なほどに、金田組の作品です。

金田さんの作品は、「陰我」というより「狂気」を感じます。
その「狂気」が、自分のすぐ近くに、わりとフツウにありそうで、なんとも
ゾワゾワと肌が泡立つ感じがします。



…が、この妄想には「狂気」は一切含まれておりませんので、ご安心を。



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冴島邸を、深い夜が包んでいる。
朧(おぼろ)に浮かんだ月の光が、その弱々しい光で屋敷のシルエットを
微かに映しだしていた。

指令の無い、今宵のような日には、ぬるめの湯にゆっくりと浸かり、一日の
疲れを落とすのが鋼牙の常だった。
そして、風呂からあがると、乾いた身体を潤すために真っ先にキッチンへと
向かう。
それもまた、いつものことだった。

鋼牙が、ミネラルウォーターのボトルを手にして自室へ向かう廊下を辿り、
リビングのドアにちょうど差しかかったとき、いきなりドアが開かれた。

リビングから出ようとしていたカオルが、声をあげた。

「あっ」

もちろん、ぶつかるようなヘマはしない。
だが、開封したばかりのボトルから水がこぼれないようにと気を取られて、
別の手にあったキャップがコロコロと足元を転がっていった。

それに気づいたカオルが、すぐさま後を追いかけていき、拾いあげる。

「ごめんなさい…
 はいっ」

右手を突きだして、手のひらのキャップを差し出す。

「すまない…」

鋼牙の伸ばした手がわずかに止まる。

「…」

「…どうしたの?」

不審に思ったカオルの声に、鋼牙は、

「…いや、なんでもない」

と言って、カオルからキャップを受け取った。

鋼牙の眉間に浮かんだ小さなシワが、カオルにとって気がかりだった。
鋼牙は、それを察知したのか、

「おやすみ」

と言うと、カオルとは微妙に視線を合わせないまま、足早にカオルの脇を
すり抜けていった。

「…うん、おやすみ」

遅れて掛けられたカオルの声は、離れていく鋼牙の背に投げかけられた。

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廊下にひとり取り残される形となったカオルは、鋼牙の様子が、今更ながら
気になった。

(鋼牙はどうして…)

あれは、何かを見て、胸を衝(つ)かれたようなそんな感じに思えた。
怒っているのとは違う、悲しんでいるのとも違う、なんとも微妙な表情
だった。

(あたし、拾ったキャップを渡しただけだよね?)

シミュレーションするように、あのときの動作を繰り返してみた。
何も乗っていない右手を突き出して、カオルはじっと自分の手を見つめる。

「あっ」

何かに気付いたカオルは、広げていた右手を握りしめて、胸に押し当てると、
何かを考え込んだ。

「…」

そして、すぐに階段を駆け上がり、鋼牙の部屋へと急いだ。




  コンコン…

遠慮がちなノックが響いた。

「…」

ベッドに足を投げ出した格好で本を読んでいた鋼牙は、少し考える素振りを
見せたが、すぐに気を取り直して戸口まで出ていった。
ドアを開けながら、そこにいるだろうと想像していた人の顔を確認した。
鋼牙は、何食わぬ顔で尋ねた。

「どうしたんだ?」

カオルは小さく深呼吸をして、ドアが空く前に考えていたことを一生懸命に
口にした。

「鋼牙、あのね…
 さっき、これを見て気にしたんじゃないかと思って。

 これ… ほとんど目立たないし、少しも痛くないし…
 ほんとにもう、全然気にしなくていいからね」

そう言って、カオルは右手を広げて見せようとして、動きを止めた。

(いけないっ!
 あたし、後先考えずに、夢中でここに来ちゃったけど…
 これ、見せちゃったら、鋼牙は余計に気にしちゃうかな?)

中途半端な位置で止まった右手に、鋼牙は視線をやる。

「あ、ううん、もういいの。
 ごめんなさい、邪魔しちゃって。

 …あの、おやすみなさい」

カオルは、そそくさと方向転換して立ち去ろうとした。

戸口に立ってカオルの背を見送っていた鋼牙が、ふいに呼びかける。

「カオル…」

カオルは振り返って鋼牙を見た。
鋼牙の瞳は穏やかで、そのことがカオルを幾分ほっとさせた。

「なに?」

小首をかしげて少し微笑んだ。

「…手を…
 その手を見せてくれないか?」

低く優しい声が響いた。

「えっ?」

「…」

じっと見つめる鋼牙の視線を受けて、カオルは迷いながらも鋼牙に近づくと、
おずおずと右手を差し出した。



to be continued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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