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きんのまなざし ぎんのささやき

かわいいあのこ(7)

予想外に長丁場になってしまった「かわいいあのこ」ですが、いよいよラスト
スパート!

…と、思ったら、終わらなかった。

’気まま’ に書いてるから仕方がないですね。(…と許してほしい)



とりあえず、ポチッと公開!



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ある朝、サクヤの母から電話があった。

なんでも、妹(サクヤの叔母にあたる)の働く屋敷で、年老いた使用人が
職を退いたのだが、使用人の中に出産を控えている者がいるとかで、人手が
足りなくなりそうだ…  そこで、サクヤに手伝いに来てもらえないだろうか、
という話が少し前にあったらしい。

ただ、その手伝いの話は、今日や明日にでも、という話ではなかったし、
時期的にも冴島家にサクヤが入ったばかりに聞いたこともあって、

(何も慌ててサクヤに知らせる必要もあるまい…)

とサクヤの母は考え、サクヤには知らせずにいたのだと言う。

ところが、昨晩遅くに入った叔母からの連絡によって、事態が変わった。

叔母の夫(サクヤにとっては叔父にあたる)が同じ屋敷で働いているのだが、
床に落ちていたゴミを拾おうとして腰をかがませたところ、それっきり
動けなくなってしまったのだ。
叔父は歩くのも困難な状態で、当分の間、使い物になりそうもなく、
サクヤに一刻も早く来てほしい、と泣きついてきたのだった。

「サクヤ、ごめんね…
 そちらのお屋敷にはご迷惑を掛けちゃって申し訳ないんだけど、
 叔母さんのことを助けてあげて?」

「…」

サクヤは、いずれはこの屋敷を出ていく日が来るであろうと覚悟していたが、
まさか、こんなに早くその日が来るとは思っていなかった。
この屋敷で働くうちに、屋敷の人たちやカオルによくしてもらい、サクヤは
彼らのことが大好きになったので、無理とは承知していても、

(できれば、このままずっとここにいたいなぁ)

などという気持ちも抱いていた。
そんな矢先の突然の話ということもあり、サクヤは最初は、ためらいを感じたが、
母からの頼みということでは、断ることもできない。

「わかった…
 すぐにゴンザさんや鋼牙様にお話してみます」

受話器を置いたサクヤは、しばらくその場を動くことができなかったが、
大きく深呼吸をして、キッチンにいるはずのゴンザの元へと向かった。




鋼牙やゴンザは、サクヤからその話を聞き、残念な気持ちではあったが、

「わかった…

 今日は仕事はしなくていいから、自分のことをするがいい」

と許した。
こうして、サクヤはその日のうちに荷物をまとめ、明日には屋敷を出ることに
なったのだ。




その夜。
指令のない鋼牙が書斎で調べ物をしているところに、サクヤが顔を覗かせた。

「鋼牙様、お飲物をお持ちしました」

「サクヤか…  ありがとう。
 だが、もう何もしなくていい」

サクヤを気遣い、鋼牙は言った。

「いえ…
 これが、最後のお仕事だと思って…」

サクヤはニコッと笑って、鋼牙の前にカップをコトリと置いた。

「そうか…」

そう言うと、さっそく鋼牙はカップに手を伸ばして、おいしそうに一口飲んだ。
その様子を、サクヤは嬉しそうに見守った。

『もう、荷物の用意はできてるのか?』

ザルバがサクヤに声を掛けた。

「はい、もう大体は済んでいます。
 明日は手荷物だけ持っていき、他の荷物は送ってもらうことになってるので
 箱に詰めればそれでおしまい、ですから」

『そうか…

 サクヤがいなくなると、この屋敷も寂しくなる…  なっ、鋼牙?』

「そうだな」



しんみりとした空気が流れる中、サクヤが声を掛けてきた。

「あの… 鋼牙様?」

呼ばれた鋼牙は、目の前に立つサクヤへと視線を向けた。

「このたびはサクヤのわがままをお許しくださり、ありがとうございます。
 それで… わがままついでに、もうひとつだけお願いがあるのですが…」

鋼牙の様子をうかがうようなサクヤに、鋼牙は穏やかに言った。

「なんだ?」

素っ気ない返事に聞こえるかもしれないが、サクヤには鋼牙の優しさが
伝わっており、ほっとしながら、言葉を続けることができた。

「カオル様のことなのです…」

サクヤの言葉に、少しだけ鋼牙の表情が変わったが、サクヤはそれには気が
つかずに先を続けた。

「余計なことだとは思うのですが…

 カオル様のこと、どうか、おしあわせにしてあげてください」

「…」

鋼牙は穏やかな表情のまま、サクヤの次の言葉を待った。

「わたしは、カオル様に、ほんとによくしていただきました。
 だから、カオル様にはいつまでも ’しあわせ’ でいてほしいと思います。

 具体的に何をどうしてほしい、とは言えないのですが… その…


 鋼牙様、カオル様のことをどうかお願いします」

サクヤは頭を下げた。
いつまでも頭を上げないサクヤに、鋼牙は口を開いた。

「サクヤ…
 おまえも魔戒騎士のことは、いろいろ聞かされていることだと思う」

サクヤは頭を上げると、鋼牙の言葉にうなずいた。

「魔戒騎士に、ひとりの女をしあわせにできるかどうか…
 それが難しいことであることも、薄々気づいていることだと思う」

サクヤはそれにはうなずきはせずに、鋼牙をじっと見つめていた。
鋼牙の言うことは真実かもしれない。
だが、ここでうなずくのは絶対に嫌だった。
それは、サクヤがまだ大人になっていないからかもしれないが、どうしても、
どうしても、うなずきたくなかった。

鋼牙はどこまでも穏やかに、サクヤの視線を受け止めていた。

「だが、これだけは言える。 …俺もサクヤと同じだ。

 俺も、あいつのしあわせをいつも願っている」

鋼牙の答えはそれだけだった。
だが、サクヤにとっては十分な答えった。
その言葉を聞いた瞬間、サクヤは一瞬泣きそうな顔を浮かべ、すぐに笑顔に
なった。

「ありがとうございます!

 これで、サクヤは思い残すことなく、この屋敷から出ていけます」

胸の前で抱えていたお盆をぎゅっと握って、サクヤは喜びに浸った。

だがすぐに、はっとして、

「あっ、すいませんでした。お仕事のお邪魔をしてしまいました。
 すぐに失礼いたします」

と言うと、一礼をして、ドアのほうへと向かった。
そして、去り際に

「鋼牙様。
 ぜひ、カオル様にじかにそのことをお伝えくださいませ。
 とてもお喜びになると思います…

 では、失礼しました」

と、言い残して去っていった。


『なんだかバタバタした ’最後の仕事’ だったな…
 まぁ、それも、サクヤらしい、か?』

ザルバの呟きを聞き流して、鋼牙はカップを手に取った。
そして、サクヤの ’最後の仕事’ を、大事に大事に味わった。



to be continued(8へ)
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拍手[21回]

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無題
ご無沙汰いたしましてすみません、かわいいあのこ、愛読させていただいております、カオルさんのお姉さんぶりいいですね,鋼牙とカオル、おたがいがおたがいに焼きもちかわいいサヤク、1期のカオルさんの若かりし頃がすこしよぎりました、あわてん坊のところ、サヤク、又機会があればさいどの登場願っています、ジグソパズル昨夜やっと完成、今度は、即糊ずけしました、ああ,額にはめて毎日ながめております、最後のほうは、チンタラチンタラしておりますて、見かねた主人が手伝ってくれました感謝本とは、机を占領してパソコンが使えないのが原因みたいですがないはともあれ、完成にいたっのでうれしいです。
かままま 2013/05/26(Sun)22:27:34 編集
Re:無題
「かわいいあのこ」は、鋼牙とカオルにお互いにヤキモチを焼かせると面白いかしら? と思って、新しいメイドさんに来てもらったのですよ。
サクヤのキャラが最後まであやふやだったのですが、そこは、みなさんの脳内でテキト~に作り上げてもらえばいいかな? と甘えちゃっいました。
そうですか、かなまま様の脳内では、1期のカオルちゃんがよぎりましたか。
少しドジっ子にしたのは、笑いが欲しかったからなのです。
selfish は関西人ではないのですが、「笑い」をとってなんぼやろ、と思っているところがありまして…
どこかでクスッと笑っていただけたなら、嬉しいです。

それと…
ジグソーパズル、完成おめでとうございます!
これで、次の楽しみは鋼牙ドールとなりますね?
舞台もゾクゾクと観劇予定でしょうか?
楽しみがいっぱいあって、かなまま様が羨ましいです!!
【2013/05/27 21:10】
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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