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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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そんなことも…(2)

どうしましょう!?

この妄想の発端となった、例のシーンをもう一度見返そうとしたのですが、selfish の持っているDVD(愛憎版… あ、違った! 愛蔵版でした!)には、なんと入っていなかった… orz

(前編から後編にかけてひとつながりになっていて、映画のような仕上がりになっているのです)


う~~~ん! こりゃあ、7年半前の記憶を元に書くしかないっすねぇ~


拍手[22回]


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

「そんなこともあったねぇ…」

邪美が微笑を浮かべながら、そうつぶやいた。
邪美と翼のふたりが我雷法師から頼まれた用事を済ませて、たまたま通りかかったのは、あの日あのときと同じ場所。

「そういえば…」

昔、こんなことが… と切り出したのは翼のほうだった。
あのとき、ふたりの少年におまえは気づいていたのか? と邪美に話を振ってみたのだ。
知らなかった、という答えを予想しながらも、そんなことを聞いてしまったのは、当時と同じ景色、同じ匂いを今いるこの場所に感じたからかもしれない。

(ふっ… 昔を懐かしむなど、俺も年を取ったものだ)

翼は心の中で自虐的にそう思い、笑っていた。
さて、邪美はというと、そんな翼の心の中など気にもかけず、昔を振り返るように遠い眼をしてから最前の言葉を吐いたのだった。



「あぁ、思い出したよ」

何を思い出したのか、邪美が一瞬、パッと明るい表情になったと思うと、突然クスクスと笑いだした。

「あのとき、あんたはものすごい怖い顔でこっちを睨んでたよねぇ?」

含みをもたすような顔で邪美が翼を見る。
その刹那、翼の眼が泳ぐ。

「そうだったか?」

翼の反応を見て、邪美は自分の記憶が正しいことに確信を持った。

「あぁ、間違いないね」

自信満々にそう言った邪美は、

「あたしが思うに…」

と翼からいったん視線を外したかと思うと、急に翼を振り返って、

「あんたは、あたしのことを、

   未来を担う青少年に悪影響を及ぼす悪い女だ!

 …とでも思ってたんじゃないのかい?」

と言い放った。
そして、翼の反応を楽しむように、ニヤニヤしながら翼の返事を待った。

「そんなことは!」

反射的に否定しようとした翼だったが、やがてすぐに思い直して、

「… まぁ、そんなところだ」

と肯定した。
いつになく素直に認める翼の態度に、本能的に違和感を覚えた邪美は、

「おや?
 違ったかい?」

と小さく独り言を言って、いぶかしげに首を捻った。



「…」

翼は黙ったまま、邪美を見ていた。

あのときから、何年も月日は流れている。
今ここで何かを口にすれば、翼の言葉やその抑揚、そして表情などから、翼の心の内を読み取ろうとするに違いない。
邪美との長い付き合いで、無言であることが最も気持ちを悟られにくいということを、翼はイヤというほどわかっていた。
利口な女に自分からヒントを与えることはないのだ。

(確かに当時の俺は、邪美のことを ’忌(い)むべき存在だと思っていた。
 だが、一流の魔戒法師だということもわかっていた。
 そして、美しいとも感じていた。

 理解しがたい感情を持て余した俺は、自分自身に戸惑い、嫌悪した。
 あのとき、邪美を睨んだつもりはなかったが、邪美からすれば睨んでいると見えたのかもしれないな)

事の真相は、まぁそんなところだったが、それを邪美には気取られたくない気持ちがあり、翼は黙っていた。
出会った頃から、どうも自分は邪美にいいようにあしらわれている気がしていた。
これ以上、邪美にいじられるようなネタを与えたくはなかった。

黙ったままの翼の出方をジッと待っているような感じの邪美に、翼はようやく口を開いた。

「さぁ、我雷法師が俺たちを待っている。
 さっさと帰って、頼まれたことは無事に果たした、と早く報告してやろうじゃないか?」

翼はそう言って、邪美を促した。
まるで、遊びはこれまでだ、と言われた子どものように、ちょっと面白くなさそうな顔をした邪美は、すぐさま、ま、いっか、とばかりに息をひとつ吐いた。
そして、

「あぁ…」

と渋々返事した邪美は、やがて歩き出した。
それを見て、フッと表情を緩めた翼も歩き出し、邪美の隣に並んだ。



しばらく歩いたところで、邪美は翼に声をかけた。

「翼?」

「なんだ?」

ふたりとも前を向いたまま、肩が触れそうで触れない距離を保って歩き続ける。

「あんたが、ほんとのところはどう思っているのか知らないけど…

 あたしはさ、この世界に戻ってこれて、よかったよ」

邪美の口調からはしみじみとした実感がこもっていたが、どこかサバサバとした清々しさも感じられた。

「…そうか」

一言そう言ったきり、翼は何も言わなかった。

たまに邪美が本心を吐露したときでも、この男はそれを茶化したりはしないし、必要以上に突っ込んでくることもない。
その点は、自分の素や弱い部分を他人に晒さない邪美にとって、とてもありがたい存在だと言えた。
だが、今に限ってはその淡泊さに物足りなさを感じてもいた。

(あぁ、もう少し何か言ってくれてもいいんじゃないかい?)

邪美は、寂しげな表情で小さな溜め息をついた。



そろそろ、我雷法師の庵(いおり)も見えてきた。
黙々と足を運んだふたりは、程なくしてその戸口の前に辿り着く。

翼が引き戸に手をかけながら、不意に翼は言った。

「邪美。
 おまえは鈴の命の恩人だ。

 だがな、たとえそうでなかったとしても、俺はおまえがここにいてくれて嬉しい」

「えっ?」

言われた邪美は驚いて、翼の顔を見た。

(今のは、ひょっとして、さっきの話の?)

だが、邪美がそれを確かめるまでもなく、翼は引き戸を開け、さっさと中へ入ってしまった。

戸口にひとり残された邪美は、今言われたことを頭の中で反芻してみる。
そして、じわじわと喜びに満ちた笑顔が浮かび、ほんのちょっと泣きそうな顔にもなった。

自分を必要としてくれる人が確かにここにいると知ることは、どこかくすぐったい気持ちがしてぽぉっと心があったかくなる。
邪美は、自分の胸元をぎゅっと掴んでしあわせを噛みしめた後、翼に続いて庵の中へと消えていった。



fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

白夜の魔獣で初登場の山刀翼は、ほんと衝撃でした。

天下の黄金騎士を相手に、「この閑岱の地では勝手な真似はさせん」と最初から臨戦体制!
(鋼牙が、ホラーの血を浴びた女を救ったのが、掟破りに思えたんだろうけど)

かと思えば、零にはサッと手を差し出し握手を求めるという友好ムードだしwww
(零は、正式に番犬所の命でやってきたから、ですよね?
 でも、西の管轄から勝手に東の管轄に越境して、無実の魔戒騎士の命を狙ったヤツなのに~)

邪美に向かって「なぜ死人がここにいる!」と声高に叫んだりすりゃあ、そりゃ、姐さんもカッとなるわぁ~
(もともとソリが合わないと感じていたみたいだろうけど。
 翼の登場で、姐さんったらソッポ向いてましたしねぇ~)

掟にこだわる男という設定ですが、邪美に関してはヒステリックなくらいだったから、なんかあったんじゃないかと勘繰っちゃいませんでしたか?
だから、こんなことがあったかもね、と妄想したのがこのお話です。

EDのあのシーンは、魔戒樹から救われた後、鋼牙から「まずはゆっくりと休め」とかなんとか言われた邪美が、「魔戒樹の中で十分休んでたからな…」ということで、まずは肩慣らしとして人気(ひとけ)のない場所で身体を伸ばしていたんじゃないかな? なんていうふうに思いました。
そして、その邪美を覗いていたのは… みたいな話です。
(あ、それを現在のふたりが懐かしんでる、っていうふうにしてますけど)

あの頃と違って、邪美に翻弄されるだけの男じゃあなくなっているといいんだけど…
ねっ、翼!

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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