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きんのまなざし ぎんのささやき

そんなことも…(1)

ふと、白夜の魔獣の前編のEDを思い出しました。
邪美姐さん、美し~

あ、妄想が降りてきたかも…





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「おい、見ろよ、あれ!」

「おぉ~、すげぇな!」

ふたりの少年が、茂みの影でコソコソと何かを覗きこみながら囁きあっている。
近頃、身長もグンと高くなり、変声期を迎え、異性に関する興味も出てきたような年頃の少年たちだった。

ここ閑岱は、魔戒法師を育てる地。
将来、立派な魔戒法師となるために、魔戒法師の子は幼少のころから少しずつ親兄弟によって魔戒法師にとって必要な技や知識などを常日頃から教えこまれている。
そして、少し大きくなってくると、人界(じんかい)の子どもたちが学校や塾に行くのと同じように、薬草の知識の豊富な法師や体術に優れた法師など、親以外の者を師として、子どもたちは集団で学んでいくようになる。

やがて、身体が出来てくる思春期を迎える頃ともなると、教えられる内容のレベルは急速に高くなっていく。
そうしたなかで、法師の ’卵’ たちは大なり小なり挫折を味わったり、将来に漠然とした不安を感じるようになったりし、そうした苦しみから時として逃げたくなることもあった。
目指すものが、スポーツ選手かパティシエか、はたまた魔戒法師か、の違いなだけで、閑岱で暮らす子どもたちも普通の子たちとなんら変わらなかった。
真面目な子どもは真面目に修行し、そうでない子はそれなりに… という具合だ。

閑岱の見回りをしていた山刀翼が、そのふたりの少年を見かけたときも、

(なんだ、あいつら?
 さぼっているのか?)

と思うが早いか、一言注意しなければと即座に思った。
そう、翼は幼いころから、’クソ’ がつくほど ’真面目’ なやつだった。
だから、さぼっている少年を見過ごすことなど断じてできるはずもない。

気配を殺して少年たちの背後に立つ。
そして、仁王立ちのスタイルで、低く抑えた声で少年たちに話しかけた。

「おい、お前たち。
 そこで、何をしているんだ?」

決して大声ではなかったが、急に声をかけられたために、少年たちはビクッと身体をびくつかせた。
そして、恐る恐る振り返る。
自分たちに声をかけたのが翼だとわかると、少年たちは

(やばいっ)

という態度を露骨に見せた。
片方の少年が、言い訳しようと

「あ、あの… ぼ、ぼくたちは…」

と口を開いたが、どうにもいい口実が思いつかなかったのか、もうひとりの少年を肘でこづいた。

(おまえが何か言え!)

まるでそうとでもいう態度で、説明する役目を相棒のほうに押し付けようとする。
押し付けられたほうも焦ったが、なんとか事情を説明しようとする。
もちろん、下手な嘘などつけるわけもなく、

「えっと… わ、忘れ物をしたから、家に取りに帰ってたんです
 ほ、ほんとです!」

と、しどろもどろになりながら一生懸命弁明する。
サボりはするが、そこは閑岱の子。
巧妙に言い逃れることなどできないところが可愛らしい。

どうやら自分の非を認めているらしい少年たちの様子を見て、翼もネチネチと言うつもりはない。

「そうか。 なら、さっさと戻れ。
 他のやつらが、お前らを待っているんじゃないのか?」

そう言葉をかけて、さっさと少年たちを解放した。

「は、はい!」

少年たちは姿勢を正して返事をすると、ぴょこんと頭を下げて駈け足でその場を離れた。
翼のところから離れた後、少年たちは、

「びっくりしたぁ~」

「ヤバかったな!」

と興奮しながら口々に話し、同胞たちの待つ広場へと駆けて行った。




さて、少年たちが立ち去った後、翼は何気なく茂みの向こうに視線を投げた。
特に関心があったわけでもなかったが、少年たちが熱心に覗いていたものが少し気になったといえば、なったのだろう。

茂みの向こうには少し開けた場所があった。
そしてそこには、ひとりの法師の姿があった。



つい先日、妹の鈴が今は亡き阿門法師の使いとして、牙狼の称号を継ぐ冴島鋼牙をここ閑岱に連れてきた。
その鋼牙が、魔戒樹に囚われていた死人を甦らせたのは昨日のこと。
このとき甦った法師、それが邪美だ。

その邪美が、今、茂みの向こうにいるのだ。



ただでさえ、死人だったというその存在が受け入れられない翼だが、邪美の恰好を見て、さらに顔をしかめた。
魔戒法師は魔戒騎士と同様、普段は防御のための魔法衣を身に着けているのだが、邪美はそれを脱いでおり、肌にぴったりと密着したインナーに近い恰好になっていた。
よく晴れた眩しい陽光の下で、黒い衣装をまとった邪美の白い肌がひときわ眩しく見える。
先程の少年たちが邪(よこしま)な眼で見てしまうのも理解できるというものだ。

翼はクラクラと眩暈に近い感覚を覚えたが、邪美は、先程からの茂みのこちら側でのやり取りなど全く気づかない素振りで、ヨガのようなストレッチのようなゆるやかな動きを続けていた。

遠くで小鳥の鳴く声が聞こえ、時折、涼やかな風が頬を撫でて過ぎていく。
その自然の息遣いに自分の呼吸を合わせるようにして、邪美は身体の隅々まで解放するかのようにしなやかに動いていた。
一見するととてもリラックスしているかのようだが、実際のところ、弛緩したところなどは微塵もなく、指の先端にまで意識が届いていて、毛ほどの油断もないことが離れた場所にいる翼にも伝わってきた。

閑岱を管轄とする翼は、これまでにもたくさんの魔戒法師を見てきたが、これほど柔と剛それぞれのレベルが高い法師は多くない。
しかも邪美の場合、そのバランスが絶妙であった。
とても癪(しゃく)ではあったが、どうやら、邪美はかなりデキる魔戒法師のようだ。
そして、とても美しい…


「なにを馬鹿な…」

一度死んだ忌(い)むべき存在であるはずの女に対して、ほんの少しでも賛美する感情が沸きそうだった自分に、翼は戸惑いを覚え、慌ててそれを否定しようとする。

やがて、翼はグイッと両目に力を込めて邪美を睨むようにしてから、フイッと踵(きびす)を返してその場を離れた。


to be continued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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