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きんのまなざし ぎんのささやき

青い空の下

青い空、白い雲。
あ~ 今日も洗濯日和~♪
ノー、ノー、ちっがぁぁぁう!

こんな日は、どこかに行きたくなりますよね?
ふらっと日常を離れて…

と、そんなわけで、妄想の世界へと Let's go! ですぜ。


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

「ねぇ、ボールで遊んできていい?」

母親似の大きな瞳に興奮の光を輝かせて、雷牙がカオルを覗き込んだ。
4歳になったばかりの雷牙は、親譲りの好奇心と運動神経、負けず嫌い、天真爛漫、お喋り、… とにかく、かわいい盛りを迎えていた。
今日は、一家総出で屋敷から2時間余り車を走らせた森にピクニックにやって来ていた。

「ええ、いいわよ」

母親の返事に喜びの表情を見せると、雷牙はくるりと振り返り、ゴンザに言った。

「おかあさんがね、いいって言ったよ!
 ねぇ、早く行こ! 早くったらぁ」

晴天の下に広げられたシートの上には、今しがた終えられた食事のための皿やフォークなどが片付けられている途中であった。

「雷牙様、もう少しで片付くのでちょっとだけ待ってはもらえませんか?
 それに、食べてすぐ動かれると、あとでお腹が痛くなるんじゃ…」

「だーいじょうぶだよぉ~
 もうずぅぅぅっとお腹痛くなったことなんかないもん!」

ボールを両手に抱えた雷牙が、ピクニックバスケットの中に皿を重ねて詰め込んでいるゴンザの前で仁王立ちになる。

「ゴンザさん、あとはあたしがやるから、雷牙の相手をしてあげてくれない?」

カオルがそう言うと、

「いえいえ、奥様にそのようなことは…」

と抵抗をするゴンザ。
けれども、

「ねぇ、行こうよぉぉぉぉ」

と可愛く駄々を捏ねる雷牙に降参したゴンザは、

「あとで片付けますので、どうかそのままに…」

と言い置いて、雷牙に手を引かれて広い平らな場所を目指して緩やかな丘を下っていった。

  ピー ピル ピルルルルー

どこか空の高いところから、小鳥の声が聞こえてくる。
時折吹いてくる風に運ばれて、雷牙たちの楽しそうな声も聞こえる。

「楽しそうだな」

鋼牙が丘の下のふたりを見下ろし、穏やかな声で言った。
シートの上に腰を降ろしている鋼牙は、片方の膝を立て、反対側の足は投げ出していたが、長い足は狭くはないはずのシートから飛び出していた。

「そうね」

カオルも、片付ける手を休めて、しあわせそうな笑顔で答える。




シートの上が片付いたところで、カオルは鋼牙の横に腰を降ろした。

「素敵なところね…」

カオルは両手を大きく広げて深呼吸をした。
透明度の高い青い空に、刷毛で引いたような白い雲。
降り注ぐ陽光は暑いくらいだったが、時折吹き抜ける風が頬の火照りを癒し、髪を優しく撫でていく。
目を閉じて、大いなる自然に身体を預けるような感覚でいると、カオルはふいに ’重さ’ を感じて目を開けた。
自分の膝の上に視線をやる。すると、そこには…

「え?」

そう、そこには、鋼牙の頭が乗っていて、こちらを見上げているではないか。
驚くカオルとは裏腹に、鋼牙の表情は一切の照れも羞恥もない。
そして…

「空ってのは、青いんだな…」

と決まりきったことを、独り言のように言うのだった。
鋼牙の視線は、どうやら、カオルを通り越して、その上に広がる空へと注がれているようだ。
カオルもそれに導かれるように上を見上げる。
魔戒騎士には、昼間の空をのんびりと見上げるようなことは皆無なのかもしれない。
そう思ったカオルは、少し切なくなる。

「そうだね。空は青いし、陽の光はまぶしいね」

そう言ってから再び鋼牙へと視線を落とす。
すると、鋼牙は目を閉じてしまっていて、まるで眠っているかのようだった。

  ふふっ

カオルは思わず微笑んだ。
鋼牙は、カオルがこれまで見たこともないような、子どものように無垢な表情をしていたのだ。

丘を吹き上がってくる風が、鋼牙とカオルの髪を揺らす…
カオルは顔にかかる髪を耳にかけながら、鋼牙の髪もそっと優しく撫でた。





ボール遊びを中断した雷牙が行きほ弾ませながら丘を登ってきた。

「おかあさん、喉が渇いちゃったぁー」

そう言いながら母の膝に飛びつこうとした雷牙が、そこに父の姿を見つけて立ち止まった。
カオルは人差し指を口元に立てて、雷牙に静かにするよう身振りで示した。
それを見て雷牙は、そーっと足音を忍ばせるように近づいてくる。
その大仰な姿も、何とも言えない程、かわいらしい。

「おとうさんどうしたの? 寝てるの?」

小さな身体をさらに小さくかがめるようにして、小声で尋ねる雷牙。

「そうだよ。
 ここはとっても気持ちいいところだから、眠たくなっちゃったのかもね」

「ふう~ん」

おなじく小声で優しくそう言う母の言葉にうなずきながら、雷牙は普段あまり見ることのない父の寝姿にじぃっと見入る。
そのとき、雷牙からだいぶん遅れて、はぁはぁと息も荒くゴンザがようやく丘を登ってきた。

「やれやれ、雷牙様のお相手はなかなか大変…  っ!!」

丘を登り切り、膝に手をついて呼吸を整えていたゴンザも、それを見て驚きのあまり息を飲んだ。

「ゴンザ、しぃー、だよ。
 おとうさん起きちゃうからね?」

雷牙が振り返りつつ、先程カオルがしてみせたように、小さな人差し指を立ててゴンザに注意する。
ゴンザはグッと熱いものがこみあげそうになるのを感じながら、ニコニコと笑い、はいはいとうなずく。
そして、あっと何かに気付いたような素振りを見せてから、雷牙にこう言った。

「雷牙様、ジュースを飲まれましたら、川遊びなどどうですか?
 あちらのほうに小川があるんですよ」

ゴンザの言葉に、雷牙は、こくん、とうなずいて笑顔を見せる。

ボールの代わりに、今度は小さな黄色いバケツをぶら下げた雷牙とゴンザの姿が、先程とは別の方向に遠ざかっていく。
ゴンザは、もう少しだけ、鋼牙とカオルのふたりだけの時間をつくってあげようと思ったのだった。
カオルが雷牙たちの背中を見送っていると、

「カオル…」

と名前を呼ばれた。

「ん? なあに?」

カオルはそう答えたが、鋼牙は目を開けることなく、

「…なんでもない」

と言っただけだった。





それからしばらく経った頃。
雷牙とゴンザが小さなカニを戦利品として見せに戻ってくると、そのときにはもう鋼牙の姿はなかった。

「あれっ? おとうさんは?」

「おかえり、雷牙。
 あのね、おとうさんね、お仕事があって先に帰っちゃったの」

「ええっ! カニ、見せてあげようと思ったのに…」

残念そうに言う息子に、頭を撫でながらカオルは言った。

「雷牙の獲ったカニが見られなくって、きっとおとうさんも残念がるね…
 ねぇ、雷牙。また、おとうさんと一緒に来ようね?」

しょんぼりしていた雷牙は、顔をあげてカオルを見ると

「うん!」

と元気いっぱいに返事をした。





その頃。
魔戒道を目的地へと急ぐ鋼牙。

『せっかくの家族水入らずの時間が残念だったな』

ザルバがそう声をかけてきた。
鋼牙はザルバを自分に向けると、いつもの険しい表情で、

「ザルバ、仕事の時間だ。集中しろよ」

と相棒に注意を促した。
言われたほうのザルバは、派手に片眉をあげて、おやおや、という表情をしてみせたが、

『俺様はいつだって仕事モードだぜ』

と白々しくうそぶくのだった。
ふん、と鼻を鳴らした鋼牙は、真っ直ぐに前を見ると、

「急ぐぞっ」

と一言言い放ち、地を蹴る足に力を込めた。
風を切り、闘いの場所へと赴く鋼牙。
その顔がどこかすっきりとして晴れやかだったのを知るのは、ザルバただひとりであった。



fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


今日はちょっと長くなりました。
長いだけで駆け足な感じですけど、ね。

最後までお付き合いくださいましてありがとう!
さあ、明日から(あ、もう今日か…)また ’日常’ だぜ! (T_T)/~~~

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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