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きんのまなざし ぎんのささやき

つないだ手

いよいよ再会。

本当は、「白夜…」の直後のシーンには、あまり食指が動かなかったのです。
正直なところ、「多分、書かないかも」とすら、思ってました。

でも、「宴の夜」を書いてみたら、なんだか ’勢い’ がついてしまって、

「今なら書ける!
 い~や、今しか書けない!」

っていうふうにテンションあがりました!
(いや、でもまぁ、そんな大した展開もないので、自己満足以外の何者でも
ないのですが)

もし、よろしければ、読んでくださいませ。



:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

北の管轄にある冴島邸。
執事のゴンザが抜かりなく手入れを施す夏の庭には、眩(まぶ)しい陽光が
満ち溢れていた。

ほの暗い邸内から、いきなりテラスへと躍り出た鋼牙は、あまりの眩しさに
一瞬目が眩(くら)んだ。
視界が戻ったとき、鋼牙が見たものは…
生命力に漲(みなぎ)る鮮やかな緑の中に、白く浮き立つ人の影。

(カオル…)

カオルのほうも鋼牙に気づいた。
そのことが判ると、鋼牙はゆっくりとカオルに近づいた。
カオルもまた、鋼牙に歩み寄る。
が、二人の間にはまだ少し距離を残したところで足を止めた。
大きな瞳を潤ませて、カオルがやっと一言搾り出した。

「おかえり…」

「それはこっちのセリフだ」

とても穏やかな鋼牙の顔。
そして、ずっとカオルが聞きたかった鋼牙の声。
だが、吐かれた言葉は以前の調子のままだったので、思わずカオルは
笑ってしまう。
息を整えてから、ずっと言いたかった言葉を言う。

「ただいま」

「あぁ」

いろいろな想いが込められた一言を、鋼牙が受け止める。
そして、鋼牙もまた、自らの想いを込めた言葉を返す。

「おかえり」

差し出された鋼牙の手に重なるカオルの手。
カオルの体温を感じて、鋼牙は思わず強く手を握った。
カオルは溜まらなくなって、鋼牙のほうへと足を進める。
こぼれ落ちそうなくらい、カオルの瞳には涙が満ちていた。

そのとき…

『おい、鋼牙。
 こいつがカオルなのか?』

鋼牙の左手中指から声がする。
鋼牙は左手の拳を握り、顔の高さまで持ってくる。
ザルバとしっかり視線を合わせる。

「あぁ、そうだ」

『だったら、お前、大丈夫なのか?
 カオルが泣くと、確か、お前の胸も痛むんじゃなかったか?』

鋼牙がザルバを制するより、カオルがザルバに顔を近づけて尋ねるほうが
先だった。

「えっ、なになに、そうなの? ザルバ」

カオルの顔は、もういたずらっ子のような好奇心に溢れた表情に変わった。

『あぁ。
 昨夜聞いたのだから間違いない。
 なんでも、カオルが怒ると、鋼牙も頭に血が上(のぼ)るそうだ。
 それで、カオルが笑うと…
 笑うとなんだったかな?
 なぁ、鋼牙?』

カオルとザルバのヒソヒソ話に呆れ顔だった鋼牙だが、話を振られると、
すかさず不機嫌に突っぱねた。

「知らん。
 これ以上、適当な話をするな、ザルバ」

『事実を言ったまでだが…』

ザルバは涼しい顔で反論した。

「ねぇねぇ、あたしが笑うと、何なの?
 鋼牙はどうなるの?」

カオルは余程気になるらしく、質問の矛先を鋼牙に向けた。
瞳を潤(うる)ませていた顔から、今はもう、キラキラの笑顔になっている。
そんなカオルを見ていると、鋼牙は思わず力が抜けた。

「ふっ…  お前ってヤツは…」

「んっ? なぁに?」

「一緒にいると、ほんとに飽きないヤツだな」

「なに、それ?
 よく意味が解らないんですけど!」

今度は眉間にしわを寄せ、少し腑に落ちない、といった表情が表れる。

(コロコロとよく変わるもんだ…)

以前と変わらないカオルに鋼牙は安心した。
だが、口から出るのは意地悪な調子の言葉…

「お前は、ちっとも変わらないな」

「え~っ、ちょっと待ってよ。
 大人になった、とか、キレイになった、とかじゃないのぉ?

 もうっ!」

そう言うと、鋼牙の手を振り解(ほど)き、カオルはゴンザの待つテーブルに
向かおうとした。
が、つながれた手を、鋼牙は決して離そうとしなかった。

「…」

ちょっと驚いてカオルは立ち止まった。
カオルが鋼牙を見つめると、鋼牙は静かに言った。

「おかえり、カオル」

もう一度そう言うと、鋼牙が先に立ち、ゴンザの元へと歩き出した。
つながれた手はゴンザの視線を避け、隠されるようにしていたが、
決して離されようとはしなかった。



fin
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


「白夜の魔獣」がTVで放映された際は、閑岱から帰ったあとのラスト部分は、

(1)リビングで修復された絵に気づく
(2)テラスを走り抜け、ゴンザの横を走り抜け…

だったと思うのですが、selfish の持っている愛蔵版DVDでは、

(1)リビングで修復された絵に気づく
(2)動揺を隠せない様子で廊下を走る
(3)テラスを走り抜け、ゴンザの横を走り抜け…

となっています。(つまり、(2)はTV版ではカットされていたんです)

selfish は愛蔵版をベースに妄想しています、ということを踏まえておいて
くださいね。

絵が修復されているのを知り、カオルがいるのか? と思い当たって
平静を失って廊下を走る鋼牙に、selfishは、「なぜ、そこまで動揺するの?」と
ちょっと注目してみました。
その慌てぶりを、「長く会っていないので」という理由だけでは片付けたくないな~ と。

なので、「宴の夜」で、カオルが再び鋼牙の元に帰ってこなくてもいい、と
そう思っている(あっ、捨て鉢な意味でなく、ですが)という伏線を仕込んで
おきました。
カオルが再び鋼牙の前に現れないかもしれない、というふうに鋼牙は
思っていたから、なおさら、「カオルがいる?!」と判ると、すごく
驚いたんじゃないかなと。
ちょっと無理があるかしら?

それにしても…
愛蔵版を持っていなかったら、「宴の夜」に伏線を張ろうなんて、きっと
思わなかったんですよ。
で、「宴の夜」を書かなかったら、この「つないだ手」も書かなかったと
思うと、ちょっと運命を感じます! (んっ? オーバーですか?)

拍手[28回]

コメント
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無題
あの廊下を疾走する鋼牙に萌えました!
冷静沈着な鋼牙が あれだけ動揺して突っ走る様はもう見ものでしたね。
あの場面だけで一体何回リピしたことか!

繋いだ手を離さずに でもあからさまはちょっと照れるので身体の後ろに隠してお茶の席に近寄る鋼牙が素敵♪

一期、白夜ときて
次はRR? まさかのキバ?
それとも二期かな~。
次作が楽しみです♪
hitori 2012/08/30(Thu)18:41:36 編集
Re:無題
鋼牙があそこまであからさまに慌てているのは、後にも先にもあそこだけですよね?
(一瞬たじろぐ、とか、一瞬どぎまぎする、とか、そういうのはあったとしても…
 あっ、第2期のウソ泣きのときは、「一瞬」よりもう少し長かったでかな?)

久しぶりの再会は嬉しさ半分、照れるのも半分かな? と思い、カオルも必要以上に笑ったり、怒ったりしたかも… なんて妄想してみました。
そして、鋼牙のほうも嬉しいけど… っていう感じです。

「次」は、今のトコ selfish にも解りません! ははは
あちこち(時にはちょっと時間を戻して)ちっこい妄想をしているだけで、まだまだ… デス!
【2012/08/30 21:52】
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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