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なんだかなぁ…
今夜は、「定番のあのセリフ」をもとに妄想したお話をお届けしますよ。
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『マズイわね…』
シルヴァの声に珍しく焦りの色が見えた。
零の周りには。何重にもグルリと囲むように素体ホラー。
斬っても斬っても、あとからあとから出現してきてキリがない。
シルヴァの呟きに、思わずクッと顔を歪めた零だったが、それでも全身の感覚を研ぎ澄ませ、油断なくホラーの動きに集中する。
突如、零の左手後方のホラーたちに動きがあったかと思うと、布道レオが姿を見せた。
「レオ!」
「零さん!」
声をかけ合った後、ドンッと互いの背中を相手に預ける。
「もう少しだけ頑張ってください。
もうじき応援が来るはずですから!」
「お前が来てくれただけでも助かるぜ。
なんせ、この数… うんざりしてたとこだ」
いつもと変わらない飄々とした語り口だったが、さすがに疲労で歯切れが悪いことにレオは気付いていた。
それでも、
「応援とやらが来るまでもうひと暴れしてやるか!
レオ、後ろは頼んだっ」
と言うなりホラーの群れの中に飛び込んでいく零に、レオは驚くとともにちょっぴり気が抜けてハハッと思わず笑ってしまった。
(まったく零さんて人は。
見た目以上にダメージ受けてるんだろうに…)
風神のごとくホラーをなぎ倒していく零の姿を横目で見てから、レオは自分の前に迫り来るホラーたちをギロリと睨んだ。
「僕だって負けてませんからね?」
いつものレオらしからぬ黒い笑みがフッと浮かび、零とは真逆の方角へと飛び込んでいった。
それからしばらくの後。
息があがり、自分たちの荒い呼吸が耳にうるさく聞こえている中、その声が響いてきた。
「零! レオ!」
声の主をよく知っているふたりは大きく目を見開き、声のした方角に振り返る。
「鋼牙!」
「鋼牙さん!」
轟天に跨った黄金騎士 牙狼の姿をとらえて、零の顔にもレオの顔にも安堵とともに喜びで輝きが浮かび上がる。
そんなふたりのもとに、轟天を駆って鋼牙が一直線に向かってくる。
その進路上にいたホラーはまるでボウリングのピンのように右に左に飛んでいき、轟天の通ってきたところだけが、モーゼの割った海のようにきれいに道ができていた。
騎乗のままふたりを見下ろした鋼牙は、
「零、レオ、魔導馬を呼べ。
一気に蹴散らすぞ!」
と鎧の下からくぐもった声で言い放った。
「だが、鋼牙!
それじゃあ、この辺のものすべて吹っ飛んじまうぞ!」
周辺には人家や学校がある。
魔導馬が生み出す波動はそれはそれは威力が強く、だからこそ零は魔導馬を召喚することなく戦っていたのだ。
『大丈夫だ、零!』
鋼牙に代わってザルバが答える。
『おまえらがどれだけ暴れてもいいように、魔戒法師たちが手分けをしてここら辺一帯に結界を張っている…
ん? どうやら張り終えたようだな。
さあ、これで心置きなくホラーどもを蹴散らすがいいさ』
それを聞いた零はレオと顔を見合わせて大きく頷いた。
ふたりの剣が天空へと突きあげられ、クルリと円形に空間を切り裂く。
ガシンと重い金属音が鳴り響いたかと思うと、妖艶なほどに美しい絶狼と狼怒が姿を現した。
それとともに、2方向から重低音の蹄の音。
絶狼と狼怒がそれぞれの愛馬に跨ると、3人は巧みに手綱を操り、背中合わせに3方向を向いた。
「行くぞ!」
「おお!」
「はい!」」
3騎士は呼吸を合わせ、それぞれの馬を竿立ちにする。
高く上がった前脚が、甲高いいななきとともに強く振り下ろされると、前脚が降り立った場所から物凄く強い気が音速の速さで四方八方へと駆け抜けた。
それとともにふわりと舞い上がったホラーの身体が、あっという間に灰のように粉々に飛び散っていく。
この一撃であれだけ無数にいたホラーも一匹残らず消え失せて、辺りを静寂が支配していた。
魔導馬を返して、鎧を解いた3人は、ホッと安堵の色を浮かべ互いに視線を交わし合った。
「鋼牙さん、ありがとうございます」
「間に合ったようだな」
「まさか応援に来てくれたのが、おまえだとはな…
でも、助かった。礼を言うぜ」
「いや… 元老院からの要請に応じたまでだ。
おまえなら、結界さえ張ってしまえば、俺の手などなくても片づけられただろう」
鋼牙の言葉には答えず、零はニヤリと笑うだけにした。
が、ふと、あることに思い至り、零は険しい顔をして鋼牙を見た。
「おまえ、今日はカオルちゃんとの大事な日なんじゃなかったか?
何してんだよ! おまえ、帰れ! 今すぐ帰れよ!」
それを聞いて、レオも顔をこわばらせて心配そうに鋼牙の顔を見る。
が、鋼牙は慌てることなく
「ああ、まあ、そうだな…」
などと落ち着き払った様子のままだ。
その様子に、零が大袈裟に大きなため息をついて、
「おまえなぁ、こんな日くらい、指令を断ってカオルちゃんのそばにいてやれよぉ~
そんなんじゃあ、いつかカオルちゃんに愛想をつかされるぞ?」
と鋼牙に言うのだった。
そして、なおも問うのだ。
「カオルちゃんに言われないのか?
仕事とあたしのどっちが大事なのよ、ってさ」
そう言われて、しばしの間、鋼牙は考えた。
そして、出した答えがこうだ。
「今のところ、そんなふうに言われたことはない。
ただ…」
「ただ?」
「ホラーは待ってはくれないが、あいつは…」
そう言う鋼牙の脳裏にカオルの姿が浮かび上がり、自然に表情が穏やかになっていく。
その穏やかな表情のまま、零にしっかりと目を合わせて、
「カオルは待っていてくれるさ、きっとな…」
と余裕ありげに言い切った。
えっ
零は小さく口を半開きにして呆れたような顔をしていた。
一方、レオはというと、くすっと笑ってしまい、慌てて口元を隠しながら取り繕っている。
「天下の黄金騎士が、こうもまあ堂々とのろけるかな…」
呆けたまま、そう呟いた零が、やがて眉根をひそめる。
「あああっ! なんかもうどうでもよくなって来たっ
レオっ!」
いきなり怒鳴るように大きな声で呼ばれたレオがビクッとして、
「はいっっっ」
と行儀のよい返事をする。
「悪いが、上への報告はおまえに任せた!」
そして、今度はひたと鋼牙をねめつけて、
「鋼牙、おまえは、その待っててくれるヤツの元にとっとと帰りやがれ!」
と怒鳴っていた。
「くそっ! 俺は誰も待ってちゃくれないが、帰るっ!」
そう言った零はすでに2人を背にして歩き始めていた。
ドスドスと地響きもしそうに足を鳴らしていた零を、鋼牙とレオはぼぉっと見送っていたが、零が何歩か進んだところで、急にくるっと振り返った。
「何してんだっ!
ぼぉっと立ってんじゃねぇっ
早く帰れっ、てんだろうが!」
苛ついた様子でそう叫ぶと、今度こそもう振り返らず、零は帰っていった。
やがて、鋼牙とレオはどちらからともなく顔を見合わせた。
「帰りましょうか、鋼牙さん」
「ああ、すまないが、あとは頼む…」
「はい。お気をつけて…」
一方、その後の零は、というと…
Bar「ルーポ」の前を差し掛かったとき。
「よお零。なんだ、今帰りか? お疲れぇ~」
と実に呑気な声で、マスター呼び留められた。
(はぁぁぁ、俺を待っていたのはこのおっさんか…)
零は無言のまま、左手をちょっとだけ上げるだけでバクラに応え、深い深い溜め息だけを残して、とぼとぼと自分のねぐらに帰っていったのだった。
fin
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ふふふ、「定番のあのセリフ」というのは、「仕事とあたしのどっちが大事なのよ」というやつです。
そして、タイトルは、零くんの気持ちです。
零くん、羨ましいのかな?
コメント
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
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