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きんのまなざし ぎんのささやき

ゴンザの願い

梅雨が明けたと思ったら、なにこれ、この暑さ!
PCの前で汗だらだらですが、妄想は止まりませんよ!

少しでも楽しんでいただけますように、と願いを込めて…


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「カオル様」

冴島邸の玄関先。
スケッチブックを手に、アプローチ脇の名もない白い花を一心にデッサンしていたカオルが

(うーん、こんなもんかな?)

と手を止めて描けたもの眺めると、それを待っていたかのように遠慮がちなゴンザの声が聞こえた。
ハッとしたカオルは、声の主を振り返って微笑むと、

「暑い中、あまり長くいますと倒れてしまいますよ。
 何か冷たいもので一服されませんか?」

と、ゴンザも柔らかい笑みを浮かべてティータイムを提案してきた。
それを聞いて、カオルは自分の額に浮かんでいた汗に気づいて、手の甲でぬぐった。

「夢中になっていて気づかなかったわ。
 そうだね、ゴンザさんの入れたアイスティーが飲みたいなぁ」

少女のような無邪気な笑顔を浮かべて、そんなふうにねだるカオルに、ゴンザはふふふと笑って、

「はい。
 それでは、カオル様のためにおいしいアイスティーをご用意いたしましょう」
と嬉しそうに言った。





涼しい屋内で、チュ~と一気に半分くらいのアイスティーを飲んだカオルが、ストローから口を離して

「おいし~♡」

と満足そうな顔を見せた。

「それはようございました…」

そう言いながら、ゴンザは、メロンやブルーベリーの乗ったフルーツタルトの乗ったお皿をカオルの前に置いた。

「うん、ゴンザさんの用意してくれるものは何でもおいしくて好きだよぉ」

さっそくフォークを手に取り、ワクワクしながらフルーツタルトを見つめるカオル。
フォークを横にして一口大にしたフルーツタルトを、

  あ~ん

という擬音が聞こえそうな様子で口を開き

  パクッ

という擬音が聞こえそうな様子でタルトを口に入れた。
そして、すぐに

  むふ~♡

という擬音が聞こえそうなしあわせそうなほどの笑顔がこぼれる。

けれども、そんなカオルとは反対にゴンザが曇り顔だ。
ゆっくり堪能しながらタルトを食べ進むカオルに、ゴンザは迷いながらも声を掛ける。

「カオル様?」

「ん? なあに?」

自然とこぼれている笑顔のまま、ゴンザに顔を向けたカオルに、

「ひとつお願いがあるのですが…」

とゴンザは言う。
なんだろう? そんなふうに顔を傾けるカオルに、

「そろそろ、’ゴンザ’ と呼んではいただけませんか?」

とゴンザが願った。

ゴンザは冴島の家に仕えている執事だ。
現当主の鋼牙には絶対の忠誠を誓っているのはもちろんだが、その鋼牙にとってかけがえのない存在であるカオルにも、並々ならぬ想いを持っている。
実際にはまだふたりの関係を夫婦と認める書類などはなかったが、それでも、だ。
だから、カオルが自分を呼ぶたびに、

  ゴンザさん

といまだに敬称をつけられることに戸惑いを感じていたのだった。

少し切なげにカオルを見つめるゴンザに、カオルの顔からも笑顔が消える。
まだ口の中にあったタルトをごくりと飲み込むと、タルトの乗った皿をテーブルに置き、アイスティーを一口飲んだ。
そして、おもむろにゴンザに視線を向けると穏やかな笑みを見せながら、きっぱりと

「それはできないわ」

と言った。
その言葉にゴンザの目が大きく見開く。

「それは… どうして…」

普段は冷静なゴンザも、珍しく動揺して、言葉が震えてしまう。
そんなゴンザに、カオルはふっと溜め息とも笑みとも区別のつかない表情を浮かべて一瞬目を伏せたが、すぐにゴンザをまっすぐに見た。

「だって、ゴンザさんは冴島家の執事でしょ?
 鋼牙にもゴンザさんにもとても大事にしてもらってるけど…
 それはすごく感謝してるけど、やっぱりほら… 違うでしょ?」

なんとなく言いにくそうに、曖昧な言い方をして力ない顔をして微笑むカオルに、

「そんな…」

とゴンザの顔も悲し気に歪む。
けれども、すぐにきりりと表情を引き締めて口を開いた。

「わたくしは、カオル様を当家の奥様としてお仕えしているつもりですっ!」

その言葉に目を見開いたカオルは、嬉しそうに控えめな笑みを浮かべる。

「ありがとう、ゴンザさん」

「ですから、どうか ’ゴン…「じゃあ!」」

とカオルがゴンザの言葉を遮る。

「じゃあ、ゴンザさんは、あたしのこと ’奥様’ って呼べる?」

「それは…」

ゴンザが勢いをなくして沈んだ顔をするのを見て、カオルは努めて明るい顔をしてゴンザを覗き込むようにした。

「あのね、あたしは別に、’奥様’ って呼んでほしいわけじゃないからね?
そんなふうに呼ばれなくても、ゴンザさんがあたしを大事に扱ってくれていることはわかっているから大丈夫だよ?」

この先の未来に、鋼牙から何か約束があったわけではない。
でも、そのことにカオルが不安や不満があるわけではなかった。

鋼牙がいて、ゴンザがいて、そしてそこに当たり前のように自分がいて…

たとえ、明日、魔戒騎士である鋼牙の身に何が起こるかわからなくても。




「だから、これからもずっと、ゴンザさんのことはゴンザさんって呼ぶからね?」

カオルはそう言ってニッコリと笑う。
そして、この話題はこれで終わり、とでもいうように、

「ゴンザさん、このメロン、とっても甘いんだよ?」

と言いながら、再び、フルーツタルトの皿へと手を伸ばした。
あー、しあわせ、などとニコニコ顔で頬に手を当てながらタルトを楽しむカオル。
そんな彼女を、ゴンザはしばらく複雑な心境で見つめていたが、やがて、何かを吐き出すように静かに重い息をついた。
そして、何かを吹っ切ったように表情を引き締めた。

「カオル様?」

「ん?」

フォークをくわえながらカオルがゴンザを見上げる。

「わたくしも、ずっとずっと ’カオル様’ と呼ばせていただきます。
 カオル様をお名前で呼ぶのは、それだけ大事な方だと思うからです」

’旦那様’だとか’奥様’だとか、そんな、誰かの何かということではなく、その人を個人として尊重し敬愛するからこそ、その人の名で呼ぶ…
ゴンザは、そんな考え方に落ち着いたのだ。

「それだけは覚えておいていただけませんか?」

そう言うと、ゴンザは優しい笑みを浮かべた。
カオルは、フォークをくわえたままゴンザと見つめ合っていたが、

「うん、覚えておく」

と言って、同じように微笑んだ。

「ね、ゴンザさんも食べよ?」

カオルの誘いにゴンザも即座に応じる。
それを皮切りに、リビングには、あはは、ほほほ、と温かい笑顔が溢れだした。




冴島邸のティータイム。
温かく、優しい時間。
いつまでも、いつまでも、この穏やかなしあわせが続きますように。


fin

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ゴンザさん、selfishにも冷たくておいしいアイスティーお願いします…
あちーっ

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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