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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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驟雨の中を

このうえもなくダラダラしたお盆休み。
やれやれ、明日からまた仕事か…

それじゃあ、その前の「リハビリ」として、いっちょ、妄想でもしますか!

あれ?
日常生活に戻る足掛かりが妄想だなんて… なんか、おかしいですよね?




::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

それは、唐突に始まった。

夕暮れと呼ぶにはまだ早い、青い空の残る時間のこと。
急に風が出て来たかと思う間もなく、空があっという間に光を失い、物凄い勢いで雨が降り出した。
激しい雨足のため、一瞬のうちに窓の外が白く煙る。

リビングでのんびり画集を眺めていたカオルが、思わず腰をあげるのと同じタイミングで、

「カオル様っ」

とゴンザがリビングに飛び込んできた。

「あたし、2階を見てきます!」

カオルが走り出しながら叫ぶように言うと、

「お願いします!
 わたしは1階をっ」

とゴンザも答えて、すぐにドアから姿を消した。

冴島邸は周囲を雑木に囲まれているため、夏と言えども、コンクリートに囲まれた都市部ほどの厳しい暑さはない。
そのため、普段からリビングやキッチンなどよく出入りする場所を除いた部屋では窓を大きく開け放ち、自然の風を通していた。
だから、このように夕立ちがあると、カオルとゴンザは手分けして屋敷中の窓を閉めて走り回ることになるというわけだ。



数分後。
額にうっすらとかいた汗をぬぐうカオルと、すっかり息のあがったゴンザの姿がリビングにあった。

「ふぅ~
 なんとか間に合ったみたいね」

「はい… はぁはぁ。
 雨がひどく吹き込んだところがなくて、ようございました。はぁ~」

しばらく呼吸を整えていたゴンザが、ようやく落ち着いたところで、

「さてさて、何か冷たいものでもお持ちしますね…」

とリビングを出て行った。
すると、程なくして玄関のほうで物音がした。

(あれ、帰ってきたのかな?)

カオルは鋼牙のことを心に思い浮かべ、ソファから立ち上がるとドアのほうへ向かっていくが、

『ゴンザぁ~ 帰ったぞぉ~』

というザルバの声が聞こえて、それを確信に変えた。
すぐさまカオルの顔には笑顔が浮かび、玄関へと向かう足も自然と早まってしまう。
カオルがリビングのドアを開けたところ、目の前をゴンザが足早に歩いていく。
「鋼牙様っ」

表情も硬く、やや慌てたようなゴンザに、カオルの顔から笑顔が消えて、すぐにゴンザのあとを追う。
が、すぐに玄関に立つ鋼牙の姿を認めると、特にふらつくこともなく自分の足でしっかりと立っている彼に、怪我などを心配することはないようだとホッとした。

けれども…

鋼牙は頭からバケツの水を被ったように濡れそぼっていた。
髪の先からはポタポタと水滴がいくつもこぼれ落ち、鋼牙の足元には水溜まりができていて、それは見ているそばからどんどん大きくなっている。

「タオル、持ってくるっ!」

カオルはすぐに方向転換して、今来た廊下を駆けていく。
ゴンザは、鋼牙の後ろからコートに手を掛け、鋼牙がそれを脱ぐのを手伝っている。
ずしりと重いコートから解放され、鋼牙は小さく吐息をこぼし、足元の水溜まりを見てからゴンザに言う。

「水浸しにしてすまない…」

『まったくだぜ。
 だから、どこかで雨宿りをしようぜって言ったのに…』

とザルバの不機嫌そうな声が被さるように言う。

「後始末はあとでわたくしがいかようにも…
 それよりも鋼牙様、濡れたままではお風邪をひいてしまいますので、すぐにシャワーでも浴びてくださいませ」

ゴンザがそう勧めるところに、タオルを抱えたカオルが戻ってきた。
カオルから差し出されたタオルを受け取り、頭から被ってゴシゴシと拭きながら鋼牙は歩き出した。

「ああ、そうしよう」




ゴンザが水浸しとなった玄関と、浴室へと続く廊下の後始末を終え、ほっと息をついてリビングへと戻ると、シャワーを終えた鋼牙の姿があった。

乾いた衣服を着た鋼牙は、ひじ掛けを背にしてソファの上に長い足を上げていて、その背後に立つカオルが彼の髪にドライヤーを当てている。
鋼牙の髪をさらさらと撫でながら、カオルの顔には優し気な笑みが浮かんでいて、彼女にされるがままとなっている鋼牙は、ゴンザの位置からその表情などはわからなかったが、きっとこれ以上になくリラックスしていることだろう。

「カオル様…」

ゴンザが遠慮がちにそう声を掛けると、ハッとしたカオルが振り返り、シッと唇に人差し指を当てた。
ゴンザは、ハッと息を飲み、自分の口に手を当てる。
それを見たカオルはちょっと微笑み、鋼牙をそっと指差すので、それに誘われるようにゴンザもそっと鋼牙の顔を覗いてみた。

鋼牙は瞼を閉じ、とても気持ちよさそうに眠っていた。

思わずゴンザの顔も緩んでしまうが、

「よほどお疲れだったのでしょうか…」

そう言いながら、ゴンザは眉尻を下げて弱々しくカオルに笑いかけ、カオルも無言で同じような笑みを浮かべていると、鋼牙の腹の上に置かれた左手から、カチカチという小さな金属音とともにザルバが話しかけてきた。

『な~に、おまえたちが言うほど疲れなど溜まっちゃいないさ』

「それならいいんだけど…」

まだ気づかわしそうなカオルに、ザルバはニヤリと意味ありげな笑いを浮かべる。

『どうせ早く帰ってきたかっただけだろうぜ?
 たとえ、ずぶぬれになっても、少しでも早くおまえたちの元にな』

そう言って、パチンとウィンクしたザルバに、今度はカオルとゴンザがニッコリと嬉しそうな笑顔を交わす。



「お夕食の用意をしてきますね…」

小声でカオルに囁いてから、ゴンザはそっとリビングをあとにした。
コクンと頷いて、ゴンザを見送ったカオルは、穏やかな寝息を立てる鋼牙のそばに移動して彼の顔を覗き込む。

(鋼牙…)

心の中で名前を呼び、眉に掛かる鋼牙の前髪に手を伸ばす。

「…あ!」

ふいに伸びた鋼牙の右腕が、カオルの身体を引き寄せ、彼女を胸に掻き抱いた。グンと近づいた顔の距離に息を飲んでいると、鋼牙の目がうっすらと開いてカオルの視線と交差する。
まだ半分まどろんでいる鋼牙の色気に、カオルは呼吸の仕方も忘れてしまう。

だがすぐに鋼牙の目が閉じられ、カオルを抱く手にさらに力がこもる。
鋼牙の胸に押し付けられるように抱かれたカオルの髪の香りを、無意識のうちに大きく吸い込み、彼女の重みを感じながら、鋼牙は至福のまどろみへとその身を沈めていった。



目も開けてられないほどの驟雨(しゅうう)の中、渇望して止まなかったしあわせは、今、その腕の中…




fin
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「驟雨」とは、いきなり降り出す雨のことで、夏の夕暮れにザアッと振る夕立ちやゲリラ豪雨も「驟雨」なんだとか…
今年はあまりそういう雨には遭遇してませんが、雨と魔戒騎士で妄想してみました。

ふふふ♡
雨に濡れた鋼牙を想像してみてくださいませ。
そして、そして、風呂上りのぼぉっとした鋼牙を…

フェロモンMAXレベルで、ぜひぜひお願いいたしますよ?

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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