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きんのまなざし ぎんのささやき

ほんとのところは(3)

熱は滅多に出ない selfish です!
そんな経験不足(?)なヤツが目一杯妄想しながらお送りしています「ほんとのところは」も3話目です。
いや、3話目だからって何か事件が起こるわけでもありませんが…

熱にうかされるカオルちゃんや、それを心配する鋼牙さんの表情や息遣いを、あなたもぜひぜひ妄想してみてくださ~い♡


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薬を飲んで落ち着いたのか、カオルは引き込まれるように眠りについた。
カオルの汗の光る額に張り付いた髪を、少し沈痛そうな表情の鋼牙がそっと払いのけてやる。

『…少し落ち着いたようだな』

鋼牙の左手からザルバの声。

「ああ…」

カオルから目を離さずに鋼牙はうなづいた。

『薬が効いて眠っているうちに、おまえも風呂に入って一息ついたらどうだ。
 今夜の仕事も決して楽なもんじゃなかったからな』

確かに、元老院から下される指令はなかなかに厄介なものが多かった。
今宵の相手も身体を自在に分裂させて攻撃をすり抜けるのが巧みなホラーで、とどめを刺すのが至難の業(わざ)だった。
苦難の末ようやく射止めたときには、さすがの鋼牙も安堵とともに、それなりに疲労感を感じていた。
そして、息つく間もなく早々にグレスへの報告を済ませると、屋敷に戻り、真っ直ぐにカオルの部屋を訪れたのだった。

「…そうだな」

ザルバの気遣いにそう答えた鋼牙だったが、なおもしばらくの間カオルの寝顔を眺めていた。
そして、想いを残しながらも立ち上がると、カオルの部屋を後にした。





熱のため汗の光る額、浅くて早い呼吸、苦しそうにゆがむ顔…
カオルは夢の中で必死にもがいていた。

「いや…」

カオルの顔が恐怖で引きつる。
自分の身体がまったく言うことをきかないのだ。
ねっとりとした粘膜をまとった海藻が手足に絡みつき、一条の光も届かないような深海の底に引きずり込まれるような、そんな感覚がカオルを襲う。

「誰か…」

息苦しさの中、カオルはじたばたとあがいていた。
だが、自分の力ではどうにもできない。
カオルは、かすかに見える金色の輝きに向かい、目一杯手を伸ばした…

「…鋼牙ぁ」

暗く冷たい水底で、カオルは寒さと孤独とに打ち震えながら、愛する人の名を呼んでいた。






鋼牙は風呂を終え、2階の自室に戻ろうとしていた。
熱い湯に浸り、心も身体も十分リラックスして、ベッドに倒れ込むのが待ち遠しいほどだった。
だが…

(もう一度、顔を見ておくか…)

そう思い直した鋼牙は、自室の前を通り過ぎてカオルの部屋へと足を向ける。
ドアの前で申し訳程度にノックをしようとして、次の瞬間、鋼牙の顔色が変わった。
中から彼女の呻くような声が聞こえたのだ。

「カオル!」

ドアを開けながら鋼牙は短く叫んでいた。
部屋に入った鋼牙の目に飛び込んできたのは、苦し気に顔を歪ませたカオルが、手足を強張らせるようにしてビクン、ビクンと身体を揺らしている光景だった。
すぐさま駆け寄り、枕元に跪(ひざまず)く鋼牙。

「どうした!」

壊れものでも触れるように恐る恐る頬に手を伸ばしたところで、

「いや…」

と言うカオルに、ぴくりと動きを止める。
だが、よく見ると、カオルはいまだ夢の中のようで硬く目を閉じたままだった。

「誰か…」

どうやらカオルは悪夢にうなされているようだが、そんな彼女を起こすべきかどうかを迷う鋼牙。
そのうちにカオルの動きが収まり、みるみる哀し気な表情になる。

「…鋼牙ぁ」

か細い声がそう呼ぶと、カオルの手がもぞもぞと布団から出てきた。
その手を取る鋼牙。

「カオル…」

彼女の名を呼び、震えている彼女の指に熱い唇で口づける。
すると、カオルの目がうっすらと開き、焦点の定まらないまなざしが鋼牙のほうをゆらりと見た。

「カオル?」

顔を覗き込む鋼牙。
カオルは目を潤ませながら呟く。

「さ…さむ…い…
 そばにいて… 鋼牙…」

鋼牙は胸をかきむしられるような切なさに襲われる。
すばやくカオルの脇に滑り込むと、彼女を抱きかかえるようにした。

「俺はここにいる。 だから、安心して眠るといい…」

「こ…が…」

涙ぐみながら鋼牙の胸に縋りつくカオル。
やがて、鋼牙の腕の中で震えていたカオルが落ち着きを取り戻し、規則正しい穏やかな息遣いになった。



こんなにも弱々しいカオルが一心に鋼牙にすがることは、これまであまり無いことだった。
カオルはいつだって気丈だった。

(カオル…)

カオルを抱く鋼牙の手にぎゅっと力が籠(こも)る。

カオルがそばにいて欲しいと思うときにそばにいてやれず、普通の女性の求めるしあわせを与えられなくて随分我慢させていることを、鋼牙はこれまでもずっとすまなく思っていた。
けれども、カオルは、魔戒騎士として闘い続ける鋼牙を深く理解し、愚痴ひとつこぼさずに、どんなときも大らかな愛情で包み込んでくれていた。
腕の中のこの華奢な身体で、いったいどれほどの想いを閉じ込めてきたのだろう。
そう思うと、彼女への愛おしさが堰(せき)を切ったように溢れてくる。

(カオル…
 今このときは、この身はおまえのためだけに…)

嘘偽りのない真っ直ぐな想いを胸に、鋼牙はそっと目を閉じた。



to be continued(4へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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