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ほんとのところは(1)
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
朝… と呼ぶにはまだ日も明けやらぬ頃。
カオルは自分の部屋のベッドの中で目を覚ました。
(ん、ん…)
目はすっかり開いたというのになんとなく頭が重たくすっきりしない。
それに…
(なんか狭い…)
手足を伸ばそうとするがなぜだかうまく伸ばせない。
窮屈な中でごそごそと寝返りをうったところで、カオルは驚いて目を丸くした。
(え、ええ~っ! なんで!?)
そこには、カオルにぴったりと寄り添うようにして眠る鋼牙の姿があったのだ。
カオルのベッドはごくごく普通のサイズのシングルベッド。
ふたりで寝るのはもちろん、背の高い鋼牙が寝るにはかなり窮屈なものだった。
いくらカオルが細身であったとしても、それこそ身動きが取れないほどに密着していないと落ちてしまうだろう。
いや、現に鋼牙の睫(まつげ)の数が数えられるくらい接近した距離にいるのだ。
カオルは、目の前の眠り込んでいる鋼牙をじっと見ながら、
(どうして鋼牙が…)
と必死に、昨日の記憶を辿(たど)るのだった。
昨日の昼過ぎ。 なんとなく気分が優れないカオルは、午後のお茶の時間をパスして少し横になるから、とゴンザに告げた。
「大丈夫でございますか、カオル様?
確かに顔色がよくありませんね」
心配そうに顔を曇らせるゴンザに、カオルは精一杯の笑顔を見せて、
「大丈夫。
最近、ちょっと根を詰めて描いてたから、少し疲れが溜まっただけだと思うわ。
ちょっと休んだら、きっとすぐによくなるから…」
と答えた。
それを聞いたゴンザの顔は、さらに一層曇る。
カオルとはこれまで随分長く親しく付き合っているというのに、いつだってカオルは最後の最後のところで遠慮をする。
鋼牙にとってはもちろん、自分にとってもかけがえのない存在だからこそ、つらいときには無条件に頼ってくれればいいのに… とゴンザは思うのだったが、幼い頃に両親を失くしたカオルはこれまでずっとひとりで耐えてきたように、無意識のうちに自分だけで痛みを抱え込んでしまうのだろう。
それが解るからこそ、ゴンザは自分の親切心を押し付けないことこそがカオルにとって一番だと思うのだ。
「だといいのですが…
けれどろ、もし何かありましたら、いつでもなんなりと仰って下さいませ。
ああ、そうだ。
あとで果物などお持ちいたしましょう。
それでは、温かくしてゆっくりおやすみください」
そんなゴンザの自然体の優しさは、カオルをとても楽(らく)にさせる。
「ありがとう、ゴンザさん」
心からの笑顔を見せたカオルは、そう言って自室に引き上げた。
(これはちょっとやばいかも…)
カオルは苦しい息の下で思った。
ゴンザが果物やスポーツ飲料と一緒に持ってきてくれた体温計でで熱を測ってみたところ、37.4℃という数字が表示された。
インフルエンザの熱などと比べればそれほど高熱ではないものの、普段の体温がそう高くないカオルにとってはこれでも結構つらい。
カオルに熱があることを知ったゴンザが、すぐに氷枕を準備してくれた。
ひんやりとした氷枕の感触と、ゴンザという頼れる人の存在とに、カオルは少しほっとしたものの、絶え間なく襲う頭痛と気分の悪さに完全にダウンだ。
こんなときは、とにかく、目を閉じてじっと耐えるしかない。
眉間に皺を寄せて、ひたすらスーッとするようなものを考えてみる。
(ミントガム…
ラムネ…
サロメチール…
えっと、高原の風…
あと、滝の水しぶき!)
だけど、そうそうスーッとするものばかりは思いつかない。
(注射のときにする消毒でしょ…
ギャグが受けなかったとき、とか?
それから…
あ! ワサビのたくさん入ったお寿司も?
あれ? これってスーッとするというよりツンとするものだよね?)
そんなふうに馬鹿馬鹿しい事を考えているうちに、カオルはいつの間にかウトウトと眠気に誘われていくのであった。
カオルが次に目を覚ましたときには、ベッドの脇には鋼牙が立っていた。
ゲートのオブジェに出掛けていた鋼牙だったが、つい先程帰って来たのだという。
「熱があると聞いたが… 大丈夫なのか?」
心配そうに尋ねる鋼牙に、カオルは不謹慎にも嬉しいと思っていた。
いつもならカオルのほうが鋼牙の身を案じているのに、今日はその逆なのだから。
熱を測ろうとしてカオルの額に伸ばされた鋼牙の手を、カオルはやんわりと払って言った。
「うん…
少し休めば大丈夫だから」
ほんとは全然大丈夫ではなかったが、つい、そんなふうに答えてしまう。
鋼牙も決してカオルの言葉を信用しているわけではないが、鋼牙にはやるべきことがあった。
「カオル…
すまないが、今日は指令が来た。
だから、今夜はホラー狩りに行かなければならない…」
少し険しい表情でそう言う鋼牙に、カオルは笑顔を見せて言う。
「だ・か・らぁ、あたしは大丈夫だ、って!
それよりも… 鋼牙のほうこそ気を付けて、ねっ?」
熱で顔の赤いカオルが、体調が悪くてつらいはずなのに、それよりも自分のことを気遣ってくれることに、鋼牙の胸がちりちりと痛んだ。
「ほんとうにすまない…」
切なそうな鋼牙の表情を見て、カオルの胸も痛む。
本心を言えば、もう少しそばにいて、と言いたかった。
だけど、彼は魔戒騎士。
ホラーを倒し、人を守るのが彼の役目だ。だから…
カオルの口からはまったく逆の言葉が出た。
「もう少し寝ようと思うから…」
その言葉には、論外に「だからひとりにしてくれ」というニュアンスが含まれていた。
その意を受け取った鋼牙は、とても名残惜しい様子を見せたものの、
「そうか。
では、ゆっくり休むといい…」
と優しい声で言い、カオルの額にキスをひとつ落としてからそっと部屋を出ていった。
鋼牙の消えたドアを見つめ、カオルは猛烈に孤独を感じる。
(馬鹿、馬鹿、馬鹿…
なんで、あんなこと言っちゃったんだろう…
んもう、あたしの馬鹿!)
目尻に涙をにじませたカオルは、自分を罵りながら布団をガバッと頭から被った。
それから、しばらくの間、布団の中からは押し殺したようにしてむせび泣く声が聞こえるのだった。
to be continued(2へ)
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朝… と呼ぶにはまだ日も明けやらぬ頃。
カオルは自分の部屋のベッドの中で目を覚ました。
(ん、ん…)
目はすっかり開いたというのになんとなく頭が重たくすっきりしない。
それに…
(なんか狭い…)
手足を伸ばそうとするがなぜだかうまく伸ばせない。
窮屈な中でごそごそと寝返りをうったところで、カオルは驚いて目を丸くした。
(え、ええ~っ! なんで!?)
そこには、カオルにぴったりと寄り添うようにして眠る鋼牙の姿があったのだ。
カオルのベッドはごくごく普通のサイズのシングルベッド。
ふたりで寝るのはもちろん、背の高い鋼牙が寝るにはかなり窮屈なものだった。
いくらカオルが細身であったとしても、それこそ身動きが取れないほどに密着していないと落ちてしまうだろう。
いや、現に鋼牙の睫(まつげ)の数が数えられるくらい接近した距離にいるのだ。
カオルは、目の前の眠り込んでいる鋼牙をじっと見ながら、
(どうして鋼牙が…)
と必死に、昨日の記憶を辿(たど)るのだった。
昨日の昼過ぎ。 なんとなく気分が優れないカオルは、午後のお茶の時間をパスして少し横になるから、とゴンザに告げた。
「大丈夫でございますか、カオル様?
確かに顔色がよくありませんね」
心配そうに顔を曇らせるゴンザに、カオルは精一杯の笑顔を見せて、
「大丈夫。
最近、ちょっと根を詰めて描いてたから、少し疲れが溜まっただけだと思うわ。
ちょっと休んだら、きっとすぐによくなるから…」
と答えた。
それを聞いたゴンザの顔は、さらに一層曇る。
カオルとはこれまで随分長く親しく付き合っているというのに、いつだってカオルは最後の最後のところで遠慮をする。
鋼牙にとってはもちろん、自分にとってもかけがえのない存在だからこそ、つらいときには無条件に頼ってくれればいいのに… とゴンザは思うのだったが、幼い頃に両親を失くしたカオルはこれまでずっとひとりで耐えてきたように、無意識のうちに自分だけで痛みを抱え込んでしまうのだろう。
それが解るからこそ、ゴンザは自分の親切心を押し付けないことこそがカオルにとって一番だと思うのだ。
「だといいのですが…
けれどろ、もし何かありましたら、いつでもなんなりと仰って下さいませ。
ああ、そうだ。
あとで果物などお持ちいたしましょう。
それでは、温かくしてゆっくりおやすみください」
そんなゴンザの自然体の優しさは、カオルをとても楽(らく)にさせる。
「ありがとう、ゴンザさん」
心からの笑顔を見せたカオルは、そう言って自室に引き上げた。
(これはちょっとやばいかも…)
カオルは苦しい息の下で思った。
ゴンザが果物やスポーツ飲料と一緒に持ってきてくれた体温計でで熱を測ってみたところ、37.4℃という数字が表示された。
インフルエンザの熱などと比べればそれほど高熱ではないものの、普段の体温がそう高くないカオルにとってはこれでも結構つらい。
カオルに熱があることを知ったゴンザが、すぐに氷枕を準備してくれた。
ひんやりとした氷枕の感触と、ゴンザという頼れる人の存在とに、カオルは少しほっとしたものの、絶え間なく襲う頭痛と気分の悪さに完全にダウンだ。
こんなときは、とにかく、目を閉じてじっと耐えるしかない。
眉間に皺を寄せて、ひたすらスーッとするようなものを考えてみる。
(ミントガム…
ラムネ…
サロメチール…
えっと、高原の風…
あと、滝の水しぶき!)
だけど、そうそうスーッとするものばかりは思いつかない。
(注射のときにする消毒でしょ…
ギャグが受けなかったとき、とか?
それから…
あ! ワサビのたくさん入ったお寿司も?
あれ? これってスーッとするというよりツンとするものだよね?)
そんなふうに馬鹿馬鹿しい事を考えているうちに、カオルはいつの間にかウトウトと眠気に誘われていくのであった。
カオルが次に目を覚ましたときには、ベッドの脇には鋼牙が立っていた。
ゲートのオブジェに出掛けていた鋼牙だったが、つい先程帰って来たのだという。
「熱があると聞いたが… 大丈夫なのか?」
心配そうに尋ねる鋼牙に、カオルは不謹慎にも嬉しいと思っていた。
いつもならカオルのほうが鋼牙の身を案じているのに、今日はその逆なのだから。
熱を測ろうとしてカオルの額に伸ばされた鋼牙の手を、カオルはやんわりと払って言った。
「うん…
少し休めば大丈夫だから」
ほんとは全然大丈夫ではなかったが、つい、そんなふうに答えてしまう。
鋼牙も決してカオルの言葉を信用しているわけではないが、鋼牙にはやるべきことがあった。
「カオル…
すまないが、今日は指令が来た。
だから、今夜はホラー狩りに行かなければならない…」
少し険しい表情でそう言う鋼牙に、カオルは笑顔を見せて言う。
「だ・か・らぁ、あたしは大丈夫だ、って!
それよりも… 鋼牙のほうこそ気を付けて、ねっ?」
熱で顔の赤いカオルが、体調が悪くてつらいはずなのに、それよりも自分のことを気遣ってくれることに、鋼牙の胸がちりちりと痛んだ。
「ほんとうにすまない…」
切なそうな鋼牙の表情を見て、カオルの胸も痛む。
本心を言えば、もう少しそばにいて、と言いたかった。
だけど、彼は魔戒騎士。
ホラーを倒し、人を守るのが彼の役目だ。だから…
カオルの口からはまったく逆の言葉が出た。
「もう少し寝ようと思うから…」
その言葉には、論外に「だからひとりにしてくれ」というニュアンスが含まれていた。
その意を受け取った鋼牙は、とても名残惜しい様子を見せたものの、
「そうか。
では、ゆっくり休むといい…」
と優しい声で言い、カオルの額にキスをひとつ落としてからそっと部屋を出ていった。
鋼牙の消えたドアを見つめ、カオルは猛烈に孤独を感じる。
(馬鹿、馬鹿、馬鹿…
なんで、あんなこと言っちゃったんだろう…
んもう、あたしの馬鹿!)
目尻に涙をにじませたカオルは、自分を罵りながら布団をガバッと頭から被った。
それから、しばらくの間、布団の中からは押し殺したようにしてむせび泣く声が聞こえるのだった。
to be continued(2へ)
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コメント
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…
ご覧になるにあたって
年代別もくじ
カテゴリー別
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