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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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ほんとのところは(4)

カオルちゃん、もっと素直に甘えればいいのに…
うちのカオルちゃんは妙なところで意地っ張りというかなんというか…
この先どうなるんでしょう?(どうしましょう?)
迷いつつも、Let's Go!

拍手[19回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

鋼牙がどうして自分の隣で寝ているのか…
カオルはどんなに記憶を辿っても、肝心なところがどうしても思い出せなかった。

(あの薬を飲んだ後、どうしようもなく瞼が重たくなって…)

昨夜、鋼牙から手渡されたのは市販の風邪薬などではなく、薄く紅い紙で五角形に包まれた粉薬だった。
魔戒法師のつくった薬なのだろうか? 生薬(しょうやく)の独特な匂いが感じられ、「なんとなく効きそうだ」と思ったのを覚えている。
が、その後のことはどうにも判然としない。
何か嫌な夢を見ていたような気がするが、それも具体的にどんな夢だったのかは今となっては全然思い出せない。

(その夢に鋼牙が出てきたような…)

ふわふわとした雲の上でも歩いているような危なげな感触の中で、なんとか記憶の糸をたぐろうとするものの、

(うう~~~ん! やっぱ、なんにも思い出せないっ!)

悔しそうに眉根をひそめたカオルは、もはや昨夜のことを思いだすことは諦めてしまおうと思った。

そう開き直ったところで、目の前の寝ている鋼牙の顔をじっと見つめる。
額に柔らかくかかる髪。
真っ直ぐに整えられた眉。
きれいに通った鼻筋。
そして薄い唇。
耳から顎にかけての美しいカーブ。
そのどれもに、思わず触れてみたくなる衝動を覚えてしまう。
いくら親しい仲であっても、こんなふうに無防備な彼の寝顔を見るのはそうそう機会がないことだから、カオルはうっとりと見つめていた。

すると、ふいに、軽く引き結ばれていた唇が動いた。

「…なんだ?」

空気を震わせて鋼牙の低い声が響き、カオルは小さくビクッとする。
やがて、鋼牙の目が静かに開いた。
その目は優しく穏やかなのに、射抜かれたようにカオルは動けない。

「俺の顔になにかついているのか?」

カオルの反応を楽しむような余裕たっぷりの口調が、悔しいけどかっこいい。

「べ、べつに…
 どうしてこんな狭いとこで鋼牙が寝てるのかなぁ、って考えてただけだよ」

どきどきしながら平静を保とうと試みる。
だが、あまりうまくはいかず、かぁっと顔が熱くなっているのが自分でもよくわかる。
きっと、鋼牙の目には赤くなっている自分が見えているだろう。

「カオル、おまえ… 覚えていないのか?」

「なにをよ?」

「…」

カオルの返事を聞きながら、鋼牙は少し考えている。
その落ち着きが一層カオルを落ち着かなくさせる。

「熱で浮かされたおまえは、そばにいてくれと俺に言ったんだ」

「う、うそよ」

カオルは慌てた。
まさか鋼牙が嘘をつくとは思えないが、そんなことは言った覚えがないのだ。
寂しいとき、心細いとき、その一言をカオルは言いたくて言いたくてたまらなくなったけれど、いつだって言わずに我慢してきたのだ。
カオルは鋼牙の目をジッと見る。
言っていないとは思うけど、記憶が曖昧なのは確かなことなので、確証がない。
すると、鋼牙の瞳にみるみる輝きが増す。

「嘘なもんか。
 一晩中一緒にいてくれ、じゃなきゃ寂しくて死んじゃう、とおまえは泣いて頼んだんだぞ?」

少し楽しそうな鋼牙の様子にカオルは確信した。
これは明らかに嘘だ、と。

「そんなわけない!」

ぜったいの自信で否定するカオル。
だが、鋼牙は動じない。

「そうか?
 確かに、そう聞いた、と思ったんだがな?」

なおもとぼけて言う鋼牙に、カオルは重ねて反論する。

「そんなこと、あたしが言うわけないわ!
 だって、そんなこと少しも思って…」

と、そこまで言って、はたと口を閉ざす。
鋼牙はクスッとかすかに笑って、

「そんなこと思って?」

と問い返した。
その表情はとても優しかった。
そこで、カオルは渋々小さな声で言う。

「思って…ない…ことないです…」

恥ずかしくて顔から湯気が出そうなカオルだったが、布団を引っ張り上げて顔を隠したくなる衝動をぐっと我慢して尋ねた。

「で、ほんとのところはどうなの?
 一緒にいて、なんて… ほんとにあたしが言ったの?」

どこか不安そうなカオルが真剣な表情で尋ねる姿を見て、鋼牙は昨夜感じたのと同じように強く愛おしさを感じながら、はてどうしたものかと考えていた。

(おまえの本心を、ほんの少し聞けたことを話そうか?
 そして、そう言われて、俺がとても嬉しかったことも…)

そんなふうに自分だけの大事な秘密について考えているうちに、いつしか顔が緩んでいたようだ。

「なあに、鋼牙? 一人でニヤニヤしちゃって…
 やだ! なんかいやらしい…」

少し身を引いて、咎めるような視線を投げるカオルに、今度は鋼牙が慌てた。

「俺は! …ニヤニヤなどしてない」

なんとなく歯切れ悪くそう言いながら、

(ほんとのところなど、何があっても絶対言ってやらん!)

と心の中で固く誓うのだった。





けれど…
まだ疑わしそうにこちらを見るカオルを、鋼牙は布団の中で抱き締めるとこう言った。

「少し良くなったからと言ってそんなにはしゃぐと、また悪くなるぞ。
 もうしばらくはおとなしく寝ていろ!」

口ではぶっきらぼうにそう言いつつも、

(早くよくなれ…)

と心底そう思う。
その気持ちがわかるのか、カオルは大人しく鋼牙に身を預けてうなずいた。

「うん…」

そして、静かに目を閉じる。

(もうちょっと、こうしていてね… 鋼牙…)



fin
おまけ[大人限定] ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


甘い路線に行くよね、行くよね… と、頭の中で妄想していたときにはず~~~っと大人限定の内容でグルングルン(?)してたんですが、書き出したら、全然別の方面に進んじゃいました。なんか、すいません!(ん、誰に謝ってるんだろw)
カオルちゃんが本調子に復活したら、ご存分にどうぞ! 鋼牙さん!?
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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