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きんのまなざし ぎんのささやき

また巡り逢える(5)

ちょうど(?)美佳ちゃんも語学留学中ということで、それじゃあ、
カオルちゃんもNYへLet's Go!

ひどく安易な発想ですが、そこがまた、気ままな妄想のいいところでは?
(と、自己弁護)

NYなんか行ったことないから、うまく書けるのかな… と、不安MAX!




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NYは夕日の美しい町だ。

マンハッタンの道路は碁盤の目のように真っ直ぐなため、東西方向に延びる
道では、どこからでもキレイな夕日が見える。
道の両側に並ぶ高層の建物に切り取られた細長い空。
その限られたスペースを、とろけるような夕日が沈んでいく。

それは、人や物でゴミゴミとしたNYの街並みを、ただの黒いシルエットに
変えていく瞬間でもあった。
家路を急ぐ人々の波から外れて、道端に佇むカオルは、ひとり取り残された
ような錯覚を覚えながら、今日最後の太陽を見送った。

燃えるような夕日を見ながら、鋼牙が旅立ってからのことを、カオルは
振り返っていた。




シグマとの死闘を終えたばかりだというのに、鋼牙は休む間もなく
’約束の地’ に旅立ってしまった…

愛する人と離れ離れになり、暗く沈みがちだったカオルを救ったのは、
絵本の創作活動だった。
鋼牙が命がけで闘っているであろう同じときに、カオルも絵本づくりに
全力を注いだ。
そうすることで、鋼牙も試練を乗り越え、笑顔で帰ってきてくれると
信じて。
もちろん、そんなことは勝手な思い込みだとはわかっていたが、今、
カオルにできることはそれしかないと思ったのだ。

絵本が完成した後も、販促のための取材やサイン会といった、非日常的で
嵐のような日々にカオルは翻弄された。

だが、その忙しい日々も過ぎてしまうと、カオルの気力がプツリと切れた。
自分を取り巻くものが色を失くし、自分自身までもが空っぽな存在に
思えた。




そんな状況から抜け出したい、と、カオルはNYにやってきた。
バネッサというイタリア留学時代の学友を訪ね、彼女の個展を見るのが
目的だった。

NYに来て、真っ先にバネッサに会いに行った。
カオルと同じように画家を志す彼女は、スレンダーボディに知的な印象の
目をしたクールビューティだったが、絵のこととなると、途端に闘志を
剥き出しにするような熱い女性だった。

カオルとは、目指す絵のイメージがまったくかけ離れていたが、バネッサの
絵にかける姿勢には、すごく共感できるものがあった。
それは、彼女のほうも同じようだった。

何年ぶりかの再会で言葉もなく抱き合った後、バネッサはマシンガンの
ように近況を話し出した。

(やっぱり、バネッサはすごい!)

早口でまくしたてるバネッサの話の半分以上を、カオルは聴き取ることが
できなかったが、それでも十分に、カオルは身体が熱くなるのを感じた。

肌の色も瞳の色も髪の色も違うけど、同じように、絵にかける情熱を
持つバネッサ。
海を隔てた遠い場所で、同じように頑張る友がいる。
そう感じられただけでも、カオルは大きな勇気をもらったように感じた。

そして、バネッサの個展をのぞいてみて、カオルは、その想いをより
強くしたのだった。

彼女の選ぶモチーフ、アングル、色、光、影…
そのどれもにハッとさせられる。

そして、同時に思うのだ。

(あたしも負けられない!
 もっともっと、いい絵を描きたい…)

と。




夜、場所を改めて、小さなバーでふたりは乾杯した。

「カオルとの再会を祝して…」

「バネッサの個展の成功を祈って…」

それぞれがグラスに口をつける。


その夜は本当にいろいろなことを話した。
絵のこと、留学時代のこと、個展のこと、絵本のこと…

「カオルは、相変わらずとってもパワフルだね」

「えぇ! そうかな?」

「そうだよ。
 イタリアにいるときもずっと思ってたけど、そんな小さな身体の
 どこにパワーがあるんだろうってね」

「う~ん、自分じゃちっとも判んないけど…

 実はね、NYに来るまでは、あたし、なんにも手につかないくらい元気を
 失くしてたんだよ」

「冗談でしょ?」

バネッサは豪快に笑い飛ばしたが、カオルの顔が真面目なままなので、
ほんとのことなんだと気づいた。

「どうしたの? 何かあったの?

 …あっ、わかった! 男でしょ?
 ねっ、そうでしょ? 当たった?」

カオルは苦笑しながら、グラスを傾けた。
そして、バネッサになら話しても大丈夫かな… などと思いながら、
ポツリポツリと、当たり障りのないところを話し出した。



「…ふ~ん、なるほどね。
 カオルが絵本の創作に夢中になっている間に、 ’彼’ は命すら危険な
 状況に陥っていたってワケね。
 だけど、 ’彼’ はそのことを一言もカオルには話さなかった…」

「うん、そうなの。
 心配させたくないって思ったんだろうけど…」

「カオルにしてみたら、言ってほしかった、っていう気持ちになるわよね、
 当然…」

「うん」

そのときの気持ちを思い出して、カオルの顔が悲しそうに歪んだ。

「で、どうしたの?」

「言ってくれればいいのに、って、言ったよ。
 できるだけ責めないような口調でね。

 でも、その後、 ’彼’ が何か言いそうになったとき、あたし、思わず、
 何も言わなくていい、って言っちゃった…

 理解のある女に思われようとかそんなじゃなくって… なんかね、
 急に怖くなったっていうか…
 そのまま話を続けたら、あたし、泣き出してしまいそうだなって思って。
 そういうの、なんかとっても嫌だったの」

バネッサは同調するように、うんうんとうなずきながら話の先を促した。

「…で、 ’彼’ はどうなったの?
 まさか…」

バネッサが、急に青い顔をして黙り込む。
どうやら、最悪の展開を想像したようだ。

「あっ、大丈夫だよ!
 ’彼’ は無事…  命の危険もなくなったわ」

「はぁ~ なんだ…
 よかったじゃない、カオル」

バネッサは少し大袈裟なくらいに安心してみせた。
そんな、バネッサにカオルは泣き笑いのような顔を向けて言った。

「…ううん、バネッサ。
 そのときの事件は解決したの、無事にね。

 でもね、今度は別の事件が起こっちゃって…
 今度は、 ’彼’、遠くに行って闘っているの」

「ちょっと、待って!
 あんたの ’彼’、いったい何の仕事をしているのよ!
 そんなにその仕事が大事なの?
 可愛い彼女を放っておいてでもやらなきゃいけない仕事ってこと?」

カオルの気持ちを代弁するように、バネッサは驚き呆れ、怒ったように
言った。

「バネッサもそう思う?」

「あたりまえじゃない!
 その ’彼’ って、あんたをいいように利用しているだけじゃないで
 しょうね?
 大丈夫なの、カオル?」

バネッサが心配そうにカオルを覗き込む。
カオルは、穏やかな笑みを返した。

「ありがとう、バネッサ。
 でもね、あの人は、それこそ ’命がけ’ でその仕事をしているの。

 それって、あたしたちもそうじゃない?
 あたしたちだって、生半可な気持ちで描いてるわけじゃないでしょう?
 それと同じ…  そうよ、同じなんだわ!」

カオルの表情がパッと明るくなった。
そして、バネッサに話すというより、自分自身に言い聞かせるように
呟き始めた。

「鋼牙は、あたしの描く絵が好きだ、って言ってくれたの。
 そして、これからもたくさん絵が描きたい、って、あたしが言ったら、
 俺がその絵を描かせてやる、って…

 あたしが絵を描くことを、鋼牙は誰よりもよく理解してくれてる。
 だから、あたしも…
 そう、あたしも、鋼牙が闘い続けることを応援したい…」

みるみる表情のよくなっていくカオルの様子に、バネッサは少し呆れた
ように言った。

「なんだかよく解らないけど、’答え’ が見つかったみたいね?」

カオルは、バネッサを振り返って、照れ臭そうに笑った。

「バネッサ、ありがとう。

 今までひとりでモヤモヤしていたんだけど、あなたに話を聞いてもらえて、
 あなたがあたしの代わりに怒ってくれたから、少し冷静に考えることが
 できたわ。
 なんだか、笑っちゃうくらい、気分がスッキリしているわ」

「そっか…
 で、結局のところ、あたしはカオルののろけ話を聞かされただけって
 ことになるのかしら?

 あたしはこんなにも理解ある恋人に愛されてます、ってね?」

バネッサはウインクしてみせた。
カオルは途端に真っ赤になり、

「やだっ!
 あたし、そんなつもりは…」

「ハイハイ、ごちそうさまでした。
 ところで、あんたの ’彼’ は刑事か何かなの? それとも探偵?
 命の危険なんて、普通の仕事じゃないってことよね?

 ハッ、まさか、危ない関係の人?」

「ち、ちがうって!」

慌ててオロオロするカオルが可愛くて、バネッサはその後しばらくは
カオルを冷やかした。

(カオル、いい人が見つかってよかったね…)

こうして、夜が更けるのも忘れて、カオルとバネッサは尽きない話で
語り明かしたのだった。




to be continued(6へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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