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きんのまなざし ぎんのささやき

レザロイア~メ!(1)

ああ、今日もいい天気だった。
お天気がいいと、お洗濯するのも気持ちいいし、掃除も頑張っちゃおうかな~ なんて思えます。
のんびり日向ぼっこするのもいいし、お昼寝なんてするのもいいかも!

そんな気持ちのいい秋の日の閑岱の一コマ。どうぞ~


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秋の昼下がり。
どこまでも青く遠い空が広がっている。
その周りを木々の梢が縁取るかのように見えていた。
鈴は庭先にしゃがみ込み、頬杖をつきながら澄んだ青空を見上げていた。
そして、この日何度目かの深い深い溜め息をつく…

「はぁぁぁ」

ここ閑岱の里も、刻一刻と秋が深まっていた。
どんどん落葉樹の葉が色づき始めて温かみを増してきており、日に日に山も里も姿を変えていた。
田も畑も収穫が一区切りを迎えたため、そこかしこで野焼きしている煙たい匂いが漂ってくるのも秋の風情だ。

まあ、かくゆう鈴も、焚き火をしていたのだが…

うず高くつまれた小枝や葉っぱが、パチリと時折はぜながら燃えており、白い一条の煙がゆらゆらと立ち上っていくのを鈴は目で追った。

「おや、焚き火かい?」

背後から突然声が降ってきて、鈴は驚いた。

「あ~ びっくりしたぁ~
 いきなり声かけられると心臓が止まっちゃうよ、邪美!」

鈴は胸を押さえながら立ち上がると、笑顔で振り返った。

「おやおや、また驚かせちまったかい? そいつはすまなかったね」

こちらもにっこりと笑みを返す邪美。
邪美自身はいつだって意識していなかったが、知らず知らずのうちに気配を消してしまうことがあるようだ。
そのため、こんなふうに鈴を驚かしてしまうことも、これまでに何度かあったのである。

「昨日の夜は風がすごかったでしょ? だから、落ち葉の量がものすごくてさ。
 ところで… 邪美はどこかに出掛けるところ?」

「まあね。
 天気もいいことだし、薪でも拾いに行こうかと思ってね」

そう言うと、邪美は背中に背負った空(から)の背負子(しょいこ)を鈴に見せた。
それは何の変哲もない背負子なのに、どうしてだか邪美が持つととてもカッコよく見えてしまうのはなぜだろう…
鈴はそんなことを思いながら、すらりとした邪美の姿を眺めていた。

「邪美はいいよね…」

「ん? なんのことだい?」

溜息混じりにそう言う鈴に、邪美は聞き返した。

「秋は美味しいものがいっぱいあるじゃない? だから、ついつい食べ過ぎちゃうんだよね…
 鈴なんか、この頃は毎晩ビクビクしながら体重計に乗ってるんだぁ。
 でも、邪美はそんな心配ないよね?
 いつだってスラッとしてさ。カッコいいんだもん」

しょんぼりして俯く鈴。

(なんだ、そんなことかい…
 いや、鈴にとってはとっても重要なことなんだよ、きっと。

 ふふふ、鈴も年頃の女の子になったんだねぇ)

そんなふうに心の中でそう思いながら、

「そりゃあ、あたしだって女だからね。
 毎日身体を動かして、それなりに気を付けてはいるさ。
 秋の食べ物がおいしいのは、鈴だけの悩みなんかじゃないよ」

と邪美は鈴に視線を合わせるようにかがんで、母のような、姉のような表情をして、優しい声で言った。
それを聞いた鈴の顔は、だんだん明るくなった。

「そっか。 そだよね…

 あ、引き止めてごめんね。
 薪、がんばって沢山拾ってきてね!」

ようやく笑顔が戻った鈴に、邪美もにっこり笑い、

「ああ。
 それじゃな、鈴」

と鈴に別れを告げて、その場を離れようとした。

が、その動きはすぐに止まり、意味ありげに鈴のほうを見た。
そんな邪美の様子を見て、なんだろうと思った鈴が、邪美の視線の先を目で追っていくと…

「にい…」

朝から出掛けていた翼が帰ってきたところだった。

(まったく! 昼にも帰らず、今頃帰ってきて…)

少し不機嫌になった鈴だったが、それでも兄が帰って来たのは嬉しい。

「にーい!」

手を大きく振り、翼に声を掛けた。
それに応えて、翼も手にした槍を少し上に掲げた。
翼は真っ白な魔法衣を寸分の隙も無くきっちりと着込み、歩くたびに真紅の裾模様を揺らしていた。
そんなふうに悠然と歩く兄の姿は、妹の贔屓目かもしれないけど、ものすごくかっこよかった。

翼がそばまで近寄るのを待って、鈴は言う。

「おかえり、にい。遅かったね。お腹空いてない?」

「鈴、遅くなった。 腹は空いているが…
 それよりこれを見ろ! 土産だ!」

翼は左脇に抱えていた籠を鈴に突き出した。
鈴は籠を覗き込み、それにつられて邪美も後ろから身を乗りだして見てみた。

「うわぁ」
「こりゃすごいねぇ」

翼の差し出した籠の中には、栗にサツマイモ、柿にイチジク、それになんとアケビや松茸まであった。
瞬間的に感じた驚きの後には、いろいろ疑問が沸き起こる。

「これ、何?」

喜ぶ素振りもなく真顔で尋ねる鈴に、そんなことはちっとも意に介していない翼は答えた。

「なんだ、そんなことも解らないのか?」

真面目にそう受け答えする翼に、鈴は少し苛立ち混じりに問い直す。

「これが何なのかくらい、鈴にもわかるよ。
 どうしてこんなにたくさん、にいが持って帰ってきたのか、って聞いてるの!」

翼のほうは不機嫌な妹の様子も意に介さず、なんだそんなことか、という態度で答えた。

「栗とアケビは俺が山で採ってきた。

 柿とイチジクは、一ノ沢のキヨ婆がいくらでも採ればいい、と言うから貰って来たんだ。
 もちろん、キヨ婆のところにもたくさん置いてきたがな。

 それと、この松茸は杉ノ谷のマサ爺が持ってけ、と…
 どうだ、立派なものだろう? これでも遠慮して一番小さいほうから選んだんだぞ。

 それからこの籠なんだが、キヨ婆が貸してくれたんだ。
 明日にでも返しておいてくれないか、鈴?」

いつもより雄弁に語る翼は、自分の戦利品に少しばかり興奮しているようだった。
それを聞いた鈴は、眉根を潜めて明らかに怖い顔をした。


to be continued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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