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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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う~ん!
せっかくの翼と邪美の話なのに、余所様の素敵なサイトのようにちっとも楽しいお話になりませんな…
こればっかりは、selfish の性分なので仕方ないか。 (T_T)

というわけで「楽しい話」は期待せずにお読みくださいませ。


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

あの日を境に、邪美の心は常に揺れていた。

’玻璃の泉’ での出来事は、翼との関係を一気に親密なものにしたかと思えた。
だが、閑岱の里へと帰ってみれば、否が応でも冷静になる。

翼は、閑岱の地を護る魔戒騎士なのだ。
少しくらい頭が固くて頑固なところのある男でも、「彼の嫁」という立場は十分魅力的なもの…
だから、この地の年頃の娘を持つ家ならどこでも、自分の娘が彼の許(もと)に嫁ぐのを夢見ていると言っても過言ではない。
そして、翼にとって見れば、ちゃんとした親の揃っている家の娘をめとったほうが、いろいろな面から心強いのも事実だ。
少なくとも、自分のような何の後ろ盾もない、根なし草のような女を相手にしたのでは、ひとつも得にはならない。
そのことは十分過ぎるほど、邪美は理解していた。

(そう、そんなことはわかってるよ。
 だから、あたしは翼の隣りに並ぶなんてこと、できゃしないんだよ…)



でも、あの日の翼を想うと… そして自分の気持ちを考えると、そう簡単にあきらめることもできなかった。

自分のような鼻っ柱の強い可愛げのない女など、並みの男は怖気づいてしまうか最初から眼中にないかのどちらかで、とにかく敬遠されるのが普通だった。
それが、コクリュウダケの胞子に身体の自由を奪われたとき、翼は邪美をそれはそれは献身的に見守ってくれたのだ。
言葉などにはしないが「俺が守ってやる」という翼の強い気持ちを、あのとき確かに邪美は感じていた。
思えば、誰かに守ってもらったことなど、物心がついてからほとんど記憶にない。
微かに、幼いときの記憶なのか夢なのか、はたまた願望なのかもしれないようなものにしかない邪美にとっては、それはとても新鮮なことだった。
あのとき、仕方がないとはいえ、全面的に翼に頼ってしまったことに自分の弱さを見せた気恥ずかしさも確かにあったが、実はそれほど嫌な気分でもなかった。
それは、これまでになく優しい、思いやり溢れる翼を知り、彼の腕の中がとても心地よかったことが大きい。
それに、他の誰でもなく、相手が翼だったからこそ無意識のうちに安心して頼れたのかもしれないとも思った。

(このまま何も考えずに、翼の胸に飛び込んでいけたらいいのに…)



けれども、実際には、翼があれからどういう気持ちでいるのかが邪美にはよく判らなかった。
普段なら他人のことには敏感に察知できるのに、どうしたことか、自分のこととなるといつものように冷静ではいられない自分がいた。
翼からは、はっきりと避けられているわけではないが、一緒にいてもなんとなくぎこちなさも感じていて、それ以上は混乱してしまってどうにもわからなかった。

(翼は、あの日のことを後悔しているのかも…)

翼の気持ちが読めない邪美は、そんな考えも頭に浮かんでいた。

(ああ!
 いっそ、「何もなかった」ことにして、これまで通りの関係を取り戻せたらいいのか?
 それが一番いいんだろうか…)

迷い過ぎてどうすべきかわからなくなった邪美は、ひとり寂しげに苦笑した。



そのとき、家の表に誰かが立った気配がした。
フッと、いつもの凛とした邪美の顔になる。

(誰だろうね…)

そう思いつつ、邪美は玄関の戸を開けた。

「ん?なんだ翼か… あたしに何か用かい?」

表に立っているのが翼だとわかり、邪美は何事もないかのように声をかけた。

(よかった。 声はうわずってない…)

ほっとしながらも、邪美の胸の鼓動は少し早くなっていた。



家に入れ、入らない、と少しいざこざがあったものの、結局、翼は白菜を手に邪美の家に入ってきた。

「ここに置いてくれるかい?」

「…」

邪美が台所の一角を指し示すと、少し不機嫌そうな翼は黙って言われたところに白菜を置いた。

「それにしても立派な白菜だねぇ。重かっただろ?」

「いや…」

短く返事をした翼が、チラッと邪美を見て、すっと目をそらす。

(ああ、もう!
 こういうジリジリとした探り合いは、あたしの性に合わないんだよ!)

苛立ちを覚えた邪美は、少し捨て鉢な気持ちになっていた。

(ええい、この際だから、今ここではっきりさせようじゃないか!)



to be continued(3へ)
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拍手[9回]

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無題
冒頭、胸を刺す邪美さんの思いに胸がきゅっ、と苦しくなりました。親の揃ってる娘を娶ったほうが...って邪美さんそんなことないよっ、って。
かと思えば、大胆不敵に「はっきりさせようじゃないか!」って、それでこそ邪美姐さまですね。
そうこなくっちゃ。
翼さんに思いっきり「はっきりお言いよ!」って詰め寄っちゃってください!

うん、続きがドキドキです。
Mion 2016/01/22(Fri)00:04:27 編集
Re:無題
姉御肌の邪美姐さんもいいですが、ひとりでクヨクヨ考える邪美もいいかなぁ、って思うんですが、いかがでしょう?
そして、「そんなのあたしの性に合わない!」と不安を振り切って拳(こぶし)をグッと握りしめて立ち上がったりしてるところなんかを妄想しては、ひとりでクスクス笑ってたりします。
そういうカワイイ(?)一面を見てみたいなぁ、って…
はてさて、selfish の気ままな妄想はこの後どうなりますやら。
【2016/01/22 21:13】
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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