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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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8月の終わりに(1)

夏が終わる。夏が終わる。
季節の変わり目って、「書き残したことがないか?」とちょっと焦りを感じます。

そして…
久し振りに「to be continued」って書いて、ドキドキしている自分に笑っちゃってます。


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  コンコン…

カオルの部屋のドアがノックされた。

(この叩き方はゴンザさんね…)

無意識にそう思いながら、カオルは

「はぁ~い、どうぞ」

と返事をした。

  カチャ

ドアが開けられて、顔を覗かせると同時にゴンザは話し出していた。

「カオル様、お届け物が届いて… おや?
 これはこれは…」

中身は書籍か何かなのか、A4サイズ程度の小ぶりなダンボールを手にしたゴンザが、室内を見て絶句した。
ゴンザが目にしたのは、引き出しが何段も開けっ放しになっているチェストと、ベッドの上に広げられた衣類の数々だ。

「これはまた、何かお店でも始めるつもりですかな?」

茶目っ気たっぷりにそう言うゴンザに、あはは、と笑いながらカオルは答えた。

「この頃、少し肌寒い日もあるでしょ? だから、薄手の長袖なんかを何枚か出しておこうと思って…
 そしたら、もう絶対着ないような夏物もいくつか、ついでにしまってしまおう、ってなってね。気がついたらこんなふうになっちゃったの」

確かに、ベッドのかたわらにきれいに畳まれて積んであるのは、この夏、カオルがよく着ていたレモンイエローのノースリーブシャツだったり、涼しげなプルーを基調としたエスニックな柄のサンドレスだったりした。
恐らくこちらは片づけられる予定のものなのだろう。
そして、ベッドの上に広げられているのは、カーディガンやショール、それに薄手の長袖カットソーなどで、こちらは、チェスト行き決定… といったところか。
そんな中に、ゴンザはちょっと変わったものを目の端に見つけていた。

「カオル様、これは…」

そう言ってゴンザが手を伸ばしたのは、
わりと大きな長方形に畳まれたもので、それだけひとつ別格とばかりによけて置かれていた。

「ああ、それね…」

そう言ったときにカオルが見せたのは少し寂しげな表情。だがそれも一瞬で、

「なかなか着る機会がなくて、一度も着たことがないんだよね。
 もう着る機会もないし、片付け候補の一番!ってところかしら?」

と明るい声で言った。

「そう、ですか…」

表情を曇らせつつ返事したゴンザは少し何かを考えこんだが、すぐに明るい顔をカオルに向けた。

「カオル様。
 それなら、今晩、これを着てくださいませんか?」

「え?」

戸惑い顔のカオルに、ゴンザはまだ手にしていた荷物を満面の笑みで渡してから、

「せっかくですから、ぜひ! いいですね?
 お夕食ができましたら声をおかけしますから、必ず着てくださいよ?」

と言い残して部屋を出ていった。
ゴンザが出て言ってひとり部屋に残されたカオルは、複雑な表情を浮かべて、ベッドの上のソレとゴンザの出ていったドアを交互に見るのだった。





その日の夕食の時間。
ゴンザはカオルの部屋の前で止まると、自然にニヤついてしまう顔を引き締めてから、もったいぶってノックをした。

  コンコン

「カオル様、夕食のご用意ができました。鋼牙様はすでにお待ちです」

そう言ってドアを離れたゴンザの背後で、少し慌てたような足音が聞こえてドアの開く気配がした。

「ゴンザさん!」

呼ばれたゴンザが振り返ると、ドアの隙間から不安げな顔を覗かせているカオルがいた。

「あの… 変なところがないか、ちょっと見てほしいんだけど…」

そう言うと、おずおずと廊下に出てきたカオルは、見てくれ、とばかりに両手を広げた。
そして、その場でゆっくりと一周してみる。

「どうかな?」

審判でも待つような心持ちのカオルに対して、ゴンザはニコニコと笑いかけ

「大丈夫でございます。大変かわいらしゅうございますよ」

と言って聞かせるように答えた。
それを聞いたカオルは初めて、ホッとし、リラックスした微笑みを浮かべる。

「さ、鋼牙様がお待ちですよ。急ぎましょう」

ゴンザに促されたカオルは、うん、と言うと、パタパタとゴンザを追いかけて小走りに走り出した。



ドキドキしながら、リビングのドアを開けてみる。
すると、ゴンザの言うようにすでに鋼牙は席についていた。
ふっと顔を向けた鋼牙と視線が会い、カオルの身体はおのずと固くなる。
ちょっとした沈黙があってから、鋼牙のほうからカオルに声をかけた。

「今夜、どこかに出掛けるのか?」

「へっ? どうして?」

真意がわからず、驚いたカオルが問うと、

「そんなものを着てるからな。
 …誰かと出掛ける予定でもあるのかと思った」

いつものようにクールさを装おうとしつつもの、少し目が泳いでいて、カオルは、あれ?、と思った。

(鋼牙… 照れてる?)

そんなところへ、ザルバの声。

『なかなか似合うじゃないか、カオル。
 そんな恰好をしていると、少しは女らしく見えるから不思議だな。 クックックッ』

明らかにからかっているんだと解りつつも、カオルも対抗して答える。

「失礼ね。あたしだってもうイイ大人なんです!
 カオルさんはいつも女らしいですね、って言われることだって…」

『あるのか?』

ザルバの絶妙な問い返しに、カオルはウッとなり、言い渋るように、

「…ないです…」

と小さな声で言った。が、すぐに声を荒げて、

「ないけど! そう思っている人がひとりやふたりいるわよ、絶対!」

と答えていた。

(あちゃ~ こういうところが子供っぽいところだよね、あたし…)

と内心思っていたが、ザルバにそれを気取られるのも癪に障る。
だから、カオルは精一杯、なんでもないふうを装うのだった。
それを知ってか知らずか、

『ま、そういうことにしとこうか』

とカオルへのからかいの手を緩めたザルバが、今度は
その矛先を鋼牙へと向けた。

『鋼牙。
 今夜は指令もないことだし、おまえさんがどこかに連れ出してもいいんじゃないか?

 …いや、それとも、こんなカオルを他の奴らの目に触れさせたくはないか?
 ふむふむ、おまえさんだけで独り占めしときたい気持ちも判らんじゃないがな…』

ひとりで勝手に納得しているザルバに、

「勝手なことを…」

と鋼牙は言ったが、決して不機嫌なわけではない。
そんなおしゃべりを黙って聞きつつ、料理をセッティングしていたゴンザだったが、

「さあさ、カオル様の可愛らしい浴衣姿でおしゃべりが弾むのもよろしいですが、せっかくのスープが冷めてしまいますよ。
 おしゃべりは、お食事をしながらごゆっくり…」

と促して、いつになく賑やかに冴島家の夕食が始まったのだった。



to be continued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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