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きんのまなざし ぎんのささやき

朱(あけ)の誓い(6)

なんだか進みが遅くて、やきもきしている読み手様の顔が見えるようです。ごめんなさい。

さて、大河の父親である闘我さんですが、selfish の頭の中では「北海道室蘭市出身のとある役者さん」を当てて妄想してます。
ふにゃふにゃと情けない感じもあり~の、ワイルドな面もあり~の、シリアスな面もあり~の、カメレオンな役者さんですよ、この方!
selfish の表現力では伝わらないでしょうが、ぜひぜひみなさんの妄想脳をフルに使って人物像を練り上げてくださいませ。


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闘我はゴンザの左耳に手をかけ、耳たぶにある痣を子細に眺めた。
それは直径にして3ミリほどの赤紫色のもので、逆三角形の形をしていた。
そして、とぎれとぎれではあったが、その三角形の角と角をつなぐような線が入っているようにも見えた。
この形は、魔界に関わる者、特に、冴島家との関わりが深い者にとっては、見覚えのある印だった。
そう、それは、鎧に喰われる心滅のときに反転する、牙狼の紋章にそっくりだった。

「…」

ゴンザは目を閉じて待った。

恐らく、この痣を見て闘我は納得し、ゴンザを迎え入れたいという前言を撤回するだろう。
この痣のせいで、冴島家に仕えるという倉橋家の男なら誰でも夢見る希望が絶たれていた。
冴島家だけではない。
魔界にゆかりのある者は、どんなとばっちりを受けるかわからないからと、誰もゴンザを受け入れようとはしないのだ。

闘我の口から拒絶の言葉を聞く、その残酷な時が来るのを待っていると、知らないうちにゴンザの呼吸は浅く早くなり、息苦しくなってきた。

「…ゴンザ」

思いの他近くで響いた闘我の声に、ゴンザはビクッと身体を強張(こわば)らせた。

「はい…」

ゴンザは少し掠れた声で返事をして、闘我の言葉を待つ。

「改めておまえに訊く…
 うちに来たくはないか?」

(えっ?)

てっきり、今の話はなかったことに、と言われるはずだと思っていたゴンザは、闘我の思いがけない言葉に彼を見た。

かなり間近なところにある闘我の顔。
ゴンザをじっと見つめる彼の目は、心の奥底までも覗き込むような鋭さを持っていた。
そこには、先程までの粗野で豪放、飄々として捉えどころのないといった印象の男の顔はすっかり消えてなくなり、真の王者が持つ、溢れ出る気迫と泰然とした風格をまとった、別人のような顔をした男がいた。
少し前までは、本当にこの人が牙狼なんだろうかとうさん臭く思っていたのが、今は、彼が間違いなく牙狼であること、牙狼たりうる力を持つことを、すんなりと受け入れていた。

だが、不思議と、この男に恐ろしさは感じない。
どんな些細な嘘、偽りをも通用しない、真の本質だけを見つめるようなまなざしは、同時に、ゴンザの欲するところを真摯に受け止めようとする寛容さをも感じられたからだ。

「行きたい… 俺、行きたいですっ!」

ふと気づくと、ゴンザは反射的にそう叫んでいた。

「ゴンちゃん!」
「ゴンザっ」

嬉しそうなアンナの声と焦りを帯びたジエンの声が重なる。

「闘我様、お待ちくだ…」

ジエンが話の流れを手繰り寄せようと口を開くが、すぐに

「ジエン、少し黙っていてもらおう」

と闘我に封じられた。
闘我は声を荒げたわけでもなく静かに制しただけだったが、一瞬、その場が真空にでもなったような感覚に捉われ、ジエンはこれ以上何も言えなくなってしまった。

闘我はゴンザに改まって向きなおった。
そして、何かを言おうと口を開きかけた。



…が、そのとき、廊下の向こうからパタパタと小さな足音が聞こえてきた。
足音はひとつではなく、いくつか重なっていた。

「大河様、そっちへ行っちゃ駄目です!」

というサトルらしい少年の声や

「さあ、あちらのお部屋でおやつを食べましょ?」

となだめるような女性の声も聞こえる。



「やれやれ、起きちまったか…」

闘我が独り言のように呟き、さっと立ち上がると、座敷の戸を大きく開けて廊下に顔を出した。
闘我の視線の先には大河がいて、父親の姿を見つけた大河は、

「父さん!」

と叫ぶなり、一目散に走って父親に抱きついてきた。
大河の後を追ってきたサトルとお手伝いらしき若い女が、闘我を見て、さっと青くなった。

「も、申し訳ありません!
 お昼寝から起きた大河様が、闘我様のところに行くと言って走り出してしまって…」

と女のほうが震える声で告げて、頭を低く低く下げた。
闘我は、それにフッと笑顔で応え、

「なあに、構わんよ。
 ふたりともボウズが世話をかけたな。
 こいつは俺が見るから、ふたりとも下がっていいよ」

と優し気な声で言った。
大河を抱えた闘我は、

「すまないな、話がそれちまった…」

と言いながら座敷の中へ入り、元の場所に胡坐(あぐら)をかいて座った。
大河は膝の上だ。

「さて、ゴンザ。
 俺は、ただの使用人がほしいわけじゃない。
 おまえなら、このボウズを、兄のように叱りつけることもできよう。
 そして、時には友のように、一緒になって無茶もしてくれるだろう。
 俺はおまえに、そういうことを期待しているんだ…」

闘我はそう言うと、父性に満ちた顔でゴンザに笑いかけた。
が、すぐに表情を引き締めると、こうも言った。

「けれども、おまえがこれからうちに来るというなら、身を置くのは普通の家じゃない。魔戒騎士の… 黄金騎士牙狼の鎧を継承する者の家だ。
 覚えることも身に着けなくちゃならないことも山のようにある。
 脅すわけじゃないが、それなりの覚悟がいることは肝に銘じてほしい…」

闘我の言葉に、ゴンザの顔も自然と険しくなった。

「どうだ? それでも来てくれるか?」

闘我の問いかけに、ゴンザは無言で悩んでいた。

(さっきは勢いで「行きたい」と言ったけど、俺なんかで本当に務まるんだろうか…
 それに…)

やはり、痣のことが気にかからないわけでもない。
せっかく自分に声をかけてくれた人の家に、もしも… もしもだが、災いをもたらすようなことでもあったなら、と思うとなかなか即答ができない。

ただならぬ雰囲気に、大河は父親の上で黙ってふたりの顔をキョロキョロと見ている。
アンナもやきもきとしながら、心の中でゴンザにエールを送っていた。



ゴンザの心中を慮(おもんぱか)って、黙って彼の返事を待っていた闘我だが、ふと思いついたことを口にしてみた。

「ゴンザ、もうひとつだけ言わせてくれ。
 その痣のことだが… 俺は気にしない。
 だが、おまえ自身が少しでも気になるようであれば、今この場で始末をつけてやろう」



to be countiued(7へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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