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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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朱(あけ)の誓い(8)

いよいよ痣に引導が…
どう書こうか迷ったものの、代り映えしないような、したような、う~ん…

拍手[10回]



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

闘我は耳と道具の消毒を終えた後、牙狼剣により細く鋭く尖らせた目打ちの先端を、ゴンザの耳の痣に突き立てた。
ゴンザは耳にチクッとした痛みを覚えたが、すぐにそれは灼けるような熱さに変わった。

(熱い…)

その熱は、ホラーを陰我もろともに斬り、浄化するソウルメタルの剣で削られたためなのか…
チリチリとした痛みとも熱さとも言える感覚は、闘我が手を止めるとともに弱まった。

「よし、空いたぞ」

闘我は、ゴンザの顔をちょっと覗き込んでそう言うと、すぐにまた視線をゴンザの耳たぶに移した。
耳たぶが少し引きつれるように思ったときには、もう目打ちはゴンザの耳から抜き取られた後だった。

ゴンザの耳の痣のちょうど真ん中に、小さな穴が空いていた。
そう大して血は出ていないが、闘我の指先にはゴンザの血がついていた。

ジエンが横から

「闘我様…」

と清潔な白いタオルを差し出す。
けれども、闘我は手のひらを立てて見せ、それを拒絶した。
まだ、仕事は終わってないということのようだった。

闘我の目つきがギラリと変わった。
すると、今度は目打ちをみずからの左手の中指に突き刺したのだった。
指の先に、ぷっくりと丸く赤い血が噴き出てくる。
闘我は、その珠(たま)のような血に向かって口の中で何やら呪文のような言葉を唱えると、そのままその指をゴンザの痣に押し当てた。
小さな円を描くように痣を撫でながら、声にならない呪文がひとしきり唱えられた。
と、唐突にそれが止み、闘我の目つきも柔らかく緩んだ。

「まあ、こんなもんだろう。
 最後のは、まあ、気休めにしかならんがな…」

そう言って、ジエンから受け取ったタオルで手をぬぐった。

「どうだ、ゴンザ… 何か変わったか?」

のほほんとして、すっかり脱力している闘我にそう訊かれて、ゴンザはしばらく考えてみた。
が、ゆっくりと首を横に振る。

「いえ、特には何も…」

その答えを聞いて、ジエンは眉をひそめ、アンナはえっと驚いた表情を見せたが、闘我はニヤッと笑った。

「そうか。特には変わらんか…」

「はい… でも!」

「ん?」

「ありがとうございます!
 俺… いえ、私は、闘我様にこんなにしてもらって、すごく嬉しいです!
 この痣は消えなくっても、がんばれそうな気がします。いえ、がんばらなきゃいけないなって思いました」

「そうか、そりゃあよかった…」

「はい!」

「そうだ、アンナ!」

「えっ、あ、はい!」

「おまえさん、ゴンザに適当なピアスを作ってやってくれよ。
 せっかけ空けた穴が塞がっちまったら、元も子もないだろ?」

そう言って、へたくそなウインクをする闘我に、アンナは二カッと笑って元気よく

「はい!」

と返事をした。
希望に輝くゴンザと満面の笑みのアンナ。
彼らを見ながら、にこにこを笑っていた闘我は、やがて、その表情を崩すことなく、ゴンザにこう言った。

「…で、うちに来る気になったか?」

ゴンザの傍(かたわ)らにいるアンナは、祈るように手を前に組み合わせて、小さくウンウンと何度もうなずき、ジエンは苦虫を噛みつぶしたような苦い顔をしていた。
そして、ゴンザは…





「こうしてわたくしはこのお屋敷にやってまいりました。
 このピアスはオシャレとか、そういうものではないんですよ」

遠い昔を思い起こしていたゴンザが、少し照れ臭そうに笑ってカオルを見た。
すると、カオルは大きな目を潤ませながら、猛烈に感動しているようだった。

「ゴンザさん!
 そのピアスは、鋼牙のおじい様との思い出の… ううん、思い出なんてものじゃないね?
 もっと強い運命のような巡り合わせの証(あかし)みたいなものなんだね?」

「運命なのかどうなのか…
 でも、わたくしはこの家にお仕えできて本当にようございました。
 それだけははっきりと言えますよ」

そう言うと、ゴンザは至極しあわせそうにほほ笑んだ。

「闘我様… 大河様… そして、鋼牙様…」

ゴンザはこれまでに仕えてきた、歴代の冴島家の当主を思い浮かべていた。
魔戒騎士の家に仕えるのだからつらく悲しいことも少なからずあったが、不思議と、思い出されるのは楽しかったこと、嬉しかったことのほうが鮮明だった。
思い出に浸っているゴンザを見て、カオルも微笑んでいる。

が、ふっとゴンザが茶目っ気のある笑顔を見せた。
そして、こう言った。

「このゴンザ、ゆくゆくは鋼牙様のお子様にもお仕えできることを楽しみにしておりますのですよ。
 だから、カオル様。ゴンザの元気なうちに… 頼みますよ?」

それを聞いてカオルは驚きの表情を浮かべてから、すぐに赤くなった。

「やだ、ゴンザさんたら…」

「ほっほっほ…」

ゴンザの朗らかな笑い声が、冴島家に響いた。



(闘我様、ありがとうございます。
 わたくしは、今、とてもしあわせでございます…)



fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


すっごく駆け足になってしまいましたが、ひとまず終わらせることができました。
よかった、よかった…(ホッ)

闘我が自分の血を塗り塗りするのはヤリ過ぎかなとは思いつつ、ちょっとおまじない的なことをさせたかったので書いてしまいました。
牙狼は、魔戒騎士の中でも、なんたら八卦(←うろ覚え)の札を使える珍しい魔戒騎士なので…

あと、ところどころ、アンナがいいアクセントになってくれました。
幼なじみだから、と思いつきで引っ張り出しただけなのに、なんていい子なんだろう!
感謝、感謝です…
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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