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きんのまなざし ぎんのささやき

癒えぬ傷(2)

先週は突然のお休み、申し訳ありませんでした!
さて、今週は無事にアップ! (ほっ、よかった…)

恐らく、鋼牙×カオルのお話のほうが読み手様の ’受け’ はいいと思いつつも、零くんの話はやめられないんですよねぇ~
もしよろしければ、零話(←れいわ!)に、お付き合いくださいませ…




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鬱蒼(うっそう)と生い茂る濃い緑のトンネルの中を、ゆったりと歩く零。
ふと足を止め、木漏れ日を真正面から浴びるように視線を上げた零は、眩しそうに目をすがめた。
何とも言えない芳香が含まれた少しひんやりとした空気を胸にいっぱい吸い込んで吐き出すと、ほんの少し身体が軽くなったような気がした。

零のいる場所は、不用意に迷い込んだ者の足を止めさせるような、どこか人を拒絶させる張り詰めた雰囲気を持っていて、その一方では、心も体も一瞬にして浄(きよ)めてくれるような静謐(せいひつ)さも持っていた。
きっと、零たち魔戒騎士が自在に操るソウルメタルのように、ここ閑岱の空気は、感じる者の気の持ちようによって、その質感が変わるのかもしれない、そんなふうに零は思った。

(懐かしいな…)

零の脳裏には、鋼牙と翼、そして邪美と闘ったときのことがよぎっていた。
いつになく穏やかな零の様子に、シルヴァもフッと笑みが漏れる。

そこへ…




「零さーん!」

数十メートル先から人懐っこい笑顔を浮かべて手を振る人影が現れた。
零がスッとそちらに目をやると、思わず、目も口もわずかに弧を描いた。
零が自分の存在に気が付いたことを知り、その人物は長い足でゆったりと駆け寄って零の前で止まった。

「よぉ、レオ。
 わざわざ出迎えか?」

「ふふっ、まあ、そうです。
 零さんがサバックに出るって聞いて、楽しみにしてました」

レオは本当に嬉しそうな顔をして、零に笑いかけた。

「おいおい、そういうおまえも出るんだろ?
 いいのか? ライバルの登場を喜んだりなんかして…」

「まあ、そうなんですけどね。
 さすがに、僕の実力じゃ優勝は難しいってことは確かなんで…
 ただ…」

そう言ったレオは、中途半端に言葉を飲み込んだ。
それに零は静かに問い返す。

「ただ?」

長身のレオに対して、零はわずかに上目遣いで見た。
その視線に少したじろぎながらも、レオは

「いえ… なんでもないです」

と曖昧に笑い返した。

そのとき、レオの胸によぎっていたのは鋼牙の面影だった。
兄シグマが騎士たちの胸につけた ’破滅の刻印’ の発動を阻止すべく、ガジャリと契約を交わし、生きて帰る保証のない ’約束の地’ に旅立った鋼牙。レオは、鋼牙の無事な帰還を祈るべく、このサバックで今の自分の持てる力すべてを出し切ろうと思っていた。

鋼牙を思い、少しメランコリックになったレオであったが、その思いは封印してレオに改めて笑いかけた。

「とにかくエントリーを済ませてしまいましょう!
 さあ、こっちですっ」

レオはそう言うと、零を先導するように先駆けて歩き出した。

『フフッ… レオったら、ものすごく張り切ってるのね?』

それまで黙っていたシルヴァが、こらえきれないように笑いをこぼした。
それに対して、

「そうだな…」

と穏やかに答えた零だったが、一瞬、表情が物悲しいものに変わったのをシルヴァは見逃さなかった。

(レオたちとの再会で、少しは零の気が紛れたら… なんて思っていたけど。
 やっぱり、そう簡単じゃないのかしら…)

そう思うと大きく溜息をつきたくなったが、

「零さん、ほら、早く早く!」

と邪気のない笑みを浮かべ、大きく手を振るレオの姿に、シルヴァはホッとした。
そして、

(レオに救われたように感じたのが、ワタシだけでないといいんだけど…)

となかば祈るように思い、零を見上げた。





さて…
今回のサバックは、閑岱の地で行われる。
とは言え、厳密にいえば、閑岱で魔戒騎士たちの闘いが繰り広げられるわけではない。
サバックが行われるのは、人界でも魔界でもない異空間であった。
その異空間への入り口が、今回は閑岱の地に開かれるということだった。

ただし、この大会は少しだけいつものものとは違っていた。
普段なら、サバックの試合は、それに出場することを許されたそれなりの腕を持った魔戒騎士たちと、それを高見で見物する元老院の神官たちしか見ることが叶わなかった。
だが、今回は特別に、その模様が閑岱の広場に設けられた特別ステージで見ることができるのだ。
そのため、閑岱で修行を積む、魔戒騎士の卵たちや、魔戒法師たちが大勢集まっていた。
その中には、無理矢理用事をつくって閑岱に馳せ参じた者達までいたのは、受け入れ側の想定を超えていた。
それ故、特設ステージを急遽増設する羽目になってしまい、閑岱の魔戒法師の長である我雷法師や、その右腕である邪美、翼の妹である鈴たちが駆けずり回って準備に明け暮れたのは、ここだけの話だ。




一方、こちらはサバック会場。
サバックの開始は、姿すら見せない神官の短くそっけない宣告から始まった。
もたもたせずにさっさと戦え、とばかりのその態度に、今回初めて参戦する魔戒騎士だけでなく、何度か出場している者さえも鼻白んでしまう。
だが、その後に声を張り上げた翼に、皆がハッとする。

「今大会の差配を任されている閑岱の白夜騎士、山刀翼だ。
 一言だけ言わせてくれっ」

翼の凛とした声が響き渡り、少しざわついていたのがシーンと静まった。
その場にいる者の意識が自分に向いたことを確認してから、翼はまた口を開いた。
今度は少し声音を落とし、穏やかに言って聞かせるような調子になった。

「サバックのルールについては、この後また詳しい説明を行うが、皆も知ってのとおり、サバックとは純粋に力と技を競うものだ。
 それぞれに心に思うものを持ちながら、この場に集まってきていることと思う。
 だが、それについてひとつ頼みがある…」

そこで一呼吸置いた翼は、再び声を張り上げて言った。

「すべての魔戒騎士の危機を救い、’約束の地’ で今も戦っているであろう男のことを、わずかでもいい、胸に留めて試合に臨んでもらいたいっ!
 彼に恥じぬ戦いとなるよう、各自が自分の持てる力を存分に発揮することを願っている。
 以上だっ!」

翼の言葉が止み、一瞬の静寂が周囲を包み込んだが、その後、おおっという地響きにも似た昂奮が沸き起こった。
それは、その場にいたものが皆、鳥肌が立つような感覚だった。
その昂奮を肌で感じた零は、

(おいおい、煽るのがうますぎるぜ、翼…)

と苦笑を浮かべたが、多くの魔戒騎士が彼… 冴島鋼牙に対して同じ思いを抱いていることに、何とも言えない喜びを感じていた。

零にとって、最初は「義務」と受け止め、あまり気乗りしなかったサバックへの出場だったが、その気持ちが少しずつ変わり始めているのを、零自身も感じずにはいられなかった。




to be continued
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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