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きんのまなざし ぎんのささやき

迷える子狼へ(2)

魔戒騎士の卵であるシュウヤの疑問。

「人間に憑依し、人間の姿をしたホラーを斬ることに迷いはないのか?」

さてさて、鋼牙さんはどんな答えを返すのでしょうか?



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シュウヤの問いに、その場は水を打ったように静まり、張り詰めたような空気になった。

「自分も父親のような魔戒騎士になりたい」

そんなふうな純粋な憧れしか持っていなかったような子たちも、魔戒騎士となったからには必ずついて回る、その苦い現実に思いが至り、息を飲んでいた。



  ホラーは斬る。

魔戒騎士の家系に生まれた者なら、誰に教わることがなくとも、その身に刷り込まれていることだ。
だから、禍々しい異形な姿をしたホラーに対峙したときに恐れや怖さを感じることはあったとしても、ホラーを斬ることに躊躇いは生じないだろう。
だが、人間に憑依し、誰かの親であったり、誰かの子であったり、守るべき人間と同じ姿をしたホラーに向き合ったときにはどうなのか…

日々修行に励み、身体を鍛え、技を習得し、ホラーと闘う力を手に入れることに努力を重ねているシュウヤであったが、それだけではない別の強さもまた必要なのだということに気づいていた。

不安が垣間見えつつもしっかり鋼牙を見つめるシュウヤを、翼は、

(賢し子だ…)

と半ば感心しながら見ていた。
そして、シュウヤに向けていた視線を、今度は、かたわらに立つ鋼牙に移した。

(さて、おまえはどんな答えをしてやるんだ?)




鋼牙は、シュウヤの、いや、ここにいるすべての人間の視線を静かに受けていた。
無言の刻(とき)が流れ、誰かが無意識のうちにこくりと唾を飲み込んだ小さな音さえもが響くように聞こえた気がする。

やがて、鋼牙が細く息を吐くと、ゆっくり瞬きをし、口を開いた。

「魔戒騎士として、ホラーは斬る。
 そのことに迷いはない」

静かだが力強い鋼牙の言葉に、シュウヤは神妙な顔でうなずいた。

「だが…
 誰かにとって大事な愛すべき者の姿をしたホラーを斬るということは、ひとりの人間として、心惑うことは否定できない」

それを聞いたシュウヤは、複雑な思いで瞳を揺らした。

(あの牙狼でさえも?
 だったら、僕なんて…)



そんな彼に、鋼牙は

「それでも!」

と強い調子で逆接の言葉を吐く。

鋼牙の瞳は、より一層、力強くシュウヤを見つめたが、口調は静かで穏やかなものに戻った。

「それでも、ホラーは斬る。

 迷いがあれば、鎧を召喚することなどできないだろう。
 陰我を断ち切るためには、自分の迷いをも断ち切る…
 牙狼の鎧で闘うということは、そういうことだと思っている」



鋼牙の答えは、そう多くを語ってはいなかった。
だから、この場にいる半数以上の子にとっては、ひどく難しいものに感じたかもしれない。
けれども、鋼牙の真意が正しく伝わってはいないからと言って、何も伝わっていないことにはならなかった。
鋼牙の強いまなざし、落ち着いた声色といったものから、揺るぎない信念や絶対的な意志の強さを、本能的なところでひしひしと感じていた。



そして、シュウヤはというと… 身体の震えが止まらなかった。

(魔戒騎士とはいえ、人間なのだ。人間だから、不安にもなったり、迷ったりもする。
 それは、自分も鋼牙さんも変わらないんだ)

そう思えただけで、強張っていた気持ちが少しだけ楽になった。
もちろん、シュウヤの不安は消えない。

(でも、それは当たり前。あって当然なんだ!)

鋼牙はその不安を受け止め、迷いを断ち切って、相当の覚悟を持って黄金騎士の鎧を召喚している。
そのことを、シュウヤは鋼牙の醸し出す雰囲気から肌で感じ取り、同時に、すごい、と思っていた。

(鋼牙さんの背負う宿命や責任の重さはどれほどのものなんだろう…
 きっと、普通の魔戒騎士の鎧とは比較にならないほどの重みに、この人は耐え、なんでもない顔をしてみんなを守っているんだ…)

そう思いながら、

(自分もいつかこんな魔戒騎士になりたい!
 いつの日か、この人と共に闘えるだけの男になりたい!)

と心ひそかに願い、大いなる憧れの目で鋼牙を熱く見つめ続けた。



一方、翼もまた、内から湧き上がる衝動のような思いを感じていた。

(やはり、黄金騎士の鎧を継承する男なだけあるな…
 鋼牙と肩を並べて闘い続けられるように、俺も負けてはいられん)





そして、鋼牙はというと、

「こんな答えでよかっただろうか?」

と様子を窺うように、翼を振り返った。
この場にいる者すべて、小さな剣士から白夜騎士である翼までをも発奮させているというのに、そのことに気づかないような鋼牙の様子に、翼はふっと笑いがこぼれた。

「何を言っている。上等だ!」

翼はそう言うと、生徒たちをぐるりと見渡した。

「今日は鋼牙の話が聞けて、貴重な体験ができたことだと思う。

 今日感じたことを胸に、明日からも修行に励むように!
 いいなっ!」

その言葉に、子どもたちは姿勢を正し、大きな声で

「はいっ!」

と返事をした。



いつの間にか太陽は大きく西に傾き、未来の魔戒騎士たちの顔を赤く染めていた。
どの子の顔も明るく、魔戒騎士となって人々を守り、憧れの鋼牙と共に闘う将来の自分を夢見て、輝いているのだった。


fin
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’迷える子羊’ ならぬ、 ’子狼’ くんたちへの鋼牙さんの答え…
いかがでしたでしょうか?

迷いをどんなふうに断ち切るのかは、やはり、魔戒騎士としての試練なのでしょうね。答えは人それぞれで出すしかないようです。
ただ、淡々と「迷いを断ち切る!」と断言する鋼牙の強さに、子どもたちはいろいろ感化されたことでしょう。

師匠から弟子への教えって、そんなもんなのかもしれません。
親切に一から十まで教えるのではなく、自分で考えろよ、ってことなんでしょう。
自分で考えて自分なりの答えを出せる者しか、生き残れない、っていう、ね。

さてさて…
この先、鋼牙さんが他の魔戒騎士と共闘するような強大な敵が現れるのか?
そのとき、この中から一人前になった魔戒騎士がどれだけ馳せ参じるのか?
な~んて、そんな妄想の生まれる日が来るでしょうか? ね?

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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