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きんのまなざし ぎんのささやき

癒えぬ傷(4)

零が対戦相手に囁かれた言葉… それは!?
さてさて、今日こそ、その一言にたどり着けるかな? ドキドキ…


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試合開始直前に会場に姿を見せた零は、ろくなウォーミングアップもしないまま相手の男と対峙していた。
零の対戦相手は、腕周りも胸周りも零より一回り… いや二回りは大きななかなかにマッチョな男だった。
その男が振り回すと、重たいはずの鉄製の剣も軽々と空(くう)を斬り、ブンブンと唸っている。

序盤は双方ともに相手の出方の探り合いだ。
相手の男は闇雲に剣を振っているように見えて、意外に隙がなく、こちらの動きにも即座に反応して攻め方を変えてくる。
さすがにサバックに出てくるだけあって、力も技もなかなかなものであったが、零を慌てさせるほどの奇抜な攻撃を仕掛けることはない。
なので、その攻撃を受け流すことは百戦錬磨の零にとって、そう大した苦でもなかった。

けれども相手はそうは捉えていないようで、防戦一方の零に、少なからず手応えを感じているらしい。
面白いくらいに鼻息はどんどん荒くなり、勝利を確信して薄く笑みまで見せている。
そんなヒートアップしている相手とは対照的に、零のテンションは下がっていくばかりで、とうとう溜息をついてしまった。

(なんか、つまんねーな。
 正直、サバックにも出たくなかったんだよな…)





少し前、レオからサバックのことを聞かされたときもそうだった。

別に、自分の腕に自信がないわけではない。
けれども、その少し前の闘いでアリスという少女を救えなかったことからくる底知れない喪失感と何とも言えない虚無感が、零の心をどうしようもなく凍らせていた。

食べることや眠ることすら、なんとなく惰性で行う日々…
シルヴァに口うるさく言われて渋々食べ物を口にする。

(疲れたな…)

とぼんやり思っていたら次の瞬間にはハッとしていて、そうなったことで、今、自分が気絶したように眠っていたのだということに気づいて自虐的な笑みをこぼす。
そんな、およそ生気に乏しい毎日を零は送っていたのだ。

その当時、零がみずから考えみずから動くのは、ホラーと闘っているときだけだった。
ただ、そのときですら、魔戒騎士としての使命感や強い信念があって闘いに臨んでいたわけではない。
これまでの闘いの中で身に付いた感覚が自然と零を助け、勝利に導いたに過ぎなかった。
恐らくだが、仮にホラーとの闘いの中で敗れたとしても、その命が消える瞬間でさえ、零はなんらかの強い執着を覚えることはなかったかもしれない。

それほどに零を襲った哀しみは深く濃かった。

そんなふうにあるべき自分の姿を見失っていた零だからこそ、サバックに対しても少しも乗り気にはなれなかった。
最終的には、グレス様からじきじきに参加を促されたことで、渋々、閑岱の地まで足を運んだのだが、試合の直前まで、出場を辞退しようか迷ったくらいだった。

(もし勝ち続けたところでどうなる?
 優勝して誰に会いたいと言え、と?)

今は亡き、零を愛し、零が愛した人々の顔を思い浮かべるが、零の顔は歪むばかり…

(会いたい者などいやしない。
 会ってしまえば… 自分が壊れそうだ)





けれども、結局、試合開始ぎりぎりで会場に来てしまった。

(なんなんだろうな…)

ククッと小さく自虐的に笑うだけで、答えなどわからない。

対戦相手を軽んじるつもりはさらさらないが、戦ってみての力量の違いを考えれば、この試合の勝ち負けは零の決断次第だ。

(勝ちをゆずるか… それとも… どうする?)

そんなときだ。
自分の優勢に気をよくした対戦相手から、零を挑発するような言葉が次々と掛けられてきた。

「はっ、涼邑零ってのは、案外手応えの無ぇ奴なんだな?」

「おいおい、ちったぁ歯向かってくんねぇと、俺の強さが引き立たねぇじゃねぇかー」

もちろん、そんな挑発に乗るつもりはない。
が、零の身体のほうは自然と反応していて、それまでは弾いてばかりいた相手の剣を思わず真正面から受けて、力と力の押し合いに持ち込んでしまっていた。
それを好機と捉えたのか、男は大きな体ごと押しかかるように零に覆いかぶさってきた。

互いの息がかかるほど顔を近づけたとき、相手が囁いた。

「このままあんたが俺に負けるんだったら、黄金騎士のライバルは俺ってことでいいんだよな?」

ピクリと零の眉が動く。

「はぁ?」

鋭くなったまなざしに、低い声で零が問い返す。
それまでのらりくらりとしていた零が初めて見せた強い反応に、男はちょっとたじろいだ。

「だ、だって、そうだろ?
 そんな細っこい身体じゃ、このまま力で俺にねじ伏せられるだけじゃな…」

と言ったところで、相手はあわわと急に言葉を切った。
というのも、ニヤリと口元に笑みを浮かべた零が、力いっぱい抑えつけていた男の剣を、いとも簡単に押し返したからだ。
そして、そのまま動揺する男に向かって、双剣が閃いた。
まるで、一匹の竜が身をくねらせているかのように滑らかに剣が舞い、多彩な攻撃が仕掛けられて、これまでの劣勢が一気にひっくり返った。

あっという間に剣を弾き飛ばされて頬に小さな傷をつけられた男が茫然をしていると、

  うぉー

と歓声があがった。
零の勝利を告げる審判の声も掻き消すほどの歓声に紛れて、零は口を開く。
その言葉は、まだ現実に起こったことを消化しきれていない男の耳にだけ届いた。

「黄金騎士のライバルだなんて、あんたじゃまだまだ無理だと思うよ。
 あいつの実力はこんなもんじゃないんだから…
 もちろん、俺の実力もね」



to be continued(5へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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