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きんのまなざし ぎんのささやき

目指せ! 牙狼クイズ王~(6)

さてさて、優勝の栄冠は誰の手に…


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何歩か鋼牙を追ったレオだったが、カオルを連れてスタジオから出て行く鋼牙の背中があっという間に見えなくなると、空しく伸ばしていた手をパタンと降ろしてガックリと肩を落とした。

そんな状況の中、スタジオの片隅ではスタッフたちが小さな円を作って額を集めて今後のことを協議していた。
それを尻目に、残された回答者たちは傍観者となっている。

「あ~あ、どうなるのかな、この後…」

「まったく、鋼牙のやつももう少し大人の対応ってのができないもんかねぇ~」
ため息交じりの零と邪美。

「なぁゴンザ。カオルのこととなると鋼牙はいつもああなのかい?」

邪美は鋼牙の去っていった方向を顎でくいっと示しながら、にこにこと笑っているゴンザに訊いた。

「えっ、ああ、鋼牙様ですか?
 いつも、というわけではございませんが…
 ふふふ、まあ今回はちょっと余裕がございませんでしたな」

と、ゴンザは一層目尻の皺を深くした。
そこに今度は零が尋ねる。

「ところでさ、ゴンザは絵本の最後のページに何が書かれているのか知らないのか?」

そう問いかけた零も、絵本の存在は知っていた。
鋼牙の書斎の立派な書架に、それだけ異彩を放って飾られている絵本があることを。

「はい、わたしは直接それを見たことはございません。
 やはり、それはおふたりにとって大事なものでしょうから。
 ただ…」

「ただ?」

少し言いよどんだゴンザに、邪美が促すように声を掛ける。
すると、どこか遠い目をしていたゴンザが少し俯いてフッと笑みをこぼしてから零と邪美の方を見た。

「ただ、カオル様があのページに描かれるものを悩まれていたときに、構想途中のものは拝見したことがあります。
 ですが、そのときのものは、カオル様ご自身があまり納得していないようでしたので、それがあのページにそのままの形で描かれているとは思えませんが…」
絵本の最後のページの絵は知らないというゴンザだったが、それでも、その顔にはなんとも言えないしあわせそうな笑みがうっすらと浮かんでいるのを見て、邪美は言った。

「でもさ、ゴンザの見たのも、いい絵だったんだろ?」

そう言った邪美を見た零が、再びゴンザを見ると、ゴンザの口角が大きくあがり、

「はい、それはもう…
 優しくて、暖かくて… それはそれは素晴らしいものでございました」

と言い切った。
そんなゴンザに、零も邪美もその幸福感を分けてもらえたような温かさを感じて、無意識のうちに表情が緩んでいた。




と、そのとき、スタッフの間で決定された事柄がレオに伝えられ、レオは再びマイクを握り直した。

「さて、みなさん。
 鋼牙さんがカオルさんを連れて途中退席してしまうというハプニングが発生してしまいましたが、協議の結果、初代、牙狼クイズ王が決定しました!」

そこまで言うと、レオはコホンと小さく咳払いをしてから、

「栄えある初代、牙狼クイズ王はっ!」

と声を張った。

「ジャカジャカジャカジャカジャカ…」

控えめながらも鈴のドラムロールが続く。そして、

「ジャンッ!」

とレオに合図を送ると、レオは大きく息を吸い込んで、

「倉橋ゴンザさんっ!
 あなたが牙狼クイズ王ですっ!」

と高らかに発表した。
だがしかし、当のゴンザは、

「ほぇっ?」

とひどく間の抜けた声を発したきり、口を半分開けたまま固まってしまった。

「おめでとうございます、ゴンザさん!
 優勝した今のご心境をお聞きしたいのですが…」

そう言うと、レオはゴンザにマイクを向ける。
それにより、ゴンザは夢から覚めたようにハッとして、レオに慌てて問いかけた。

「な、なぜわたくしなのです?
 最終問題に正解したのは鋼牙様のはずですが…」

当然の問いにレオは大きくうなずいてから答えた。

「はい、確かに最終問題の正解者は鋼牙さんで、1万点の得点は鋼牙さんが獲得しました…」

それを聞いて、ゴンザもそうだろう、そうだろうとうなずいている。

「ですが、優勝者の発表を待たずして退席された鋼牙さんは、残念ながら ’失格’ ということになりました」

「そんな…」

「ですから、それまでのクイズでの最高得点を獲得されたゴンザさん、あなたが優勝者だと決定いたしました」

「…」

優勝者だと改めて言われたゴンザであったが、嬉しさよりも困惑のほうが強く、なんとも複雑な表情である。

「ゴンザさん。あなたは冴島家に長く仕える執事として、その経験と幅広い知識で高得点を獲得したのです。
 あなたが初代、牙狼クイズ王となることに、誰も文句はありません。
 ですから、ぜひこの栄冠をあなたに贈らせてください…」

そう言うとレオは大きくうなずき、ふわりと笑った。
それを受けて、ゴンザも居住まいを正して、

「ありがとうございます。
 わたくしごときが、とは思いますが、謹んでお受けしたいと思います」

と返し、どこかスッキリとした顔で微笑んだ。
それを聞いて、ほっとしたレオ。

「よかった…

 さて、優勝されましたゴンザさんには、なんと! 素敵な賞品が用意されています」

そう言うと、スタジオから「おおっ」という声が上がる。
そこにすかさず、

「ですが、その前に…」

というレオに、一転して「ええっ」という空気が伝わる。

「おいおい、もったいぶってないで、早く賞品を紹介しろよ、レオ」

と焦れた零が声をあげる。

「すいません、零さん。
 けれど、その前に ’ある方’ を紹介しないといけないんです」

「ある方ぁ?」

「はい。
 その方は、賞品のプレゼンターとなる方なんです。
 それでは、その方をご紹介しましょう!
 元老院の神官であらせられます、グレス様です!」

そう言うと、中央にあるビジョンが切り替わり、グレスの姿が映し出された。

「レオ、ようやくわたくしの出番ですか?
 ずいぶんと待ちくたびれましたよ?」

聖母のような慈愛に満ちた微笑みを浮かべながらも、グレスは待たされたことに対する文句を言った。

「はっ、申し訳ありません、グレス様。
 予定外のことが起こりまして、対応に時間がかかりました。
 それでは、さっそくですが、賞品のほうをお願いできますか?
 優勝されたのは、こちらの倉橋ゴンザさんになります…」

そう言ってゴンザを手で指し示すと、レオはグレスに頭を下げた。

「ゴンザさん、少し頭を下げてください」

小声でレオに囁かれたゴンザは慌てて頭を下げた。
長く冴島家に仕えているが、ゴンザといえども、元老院の神官にまともに対面するのは初めてだった。

「倉橋ゴンザ」

グレスの問いかけに、さすがのゴンザも

「はい」

と答える声が震えそうになる。

「優勝おめでとう。
 優勝者への賞品はそなたのものです」

「はっ、ありがとうございます」

「では、グレス様から倉橋ゴンザさんへの賞品の授与です!」

レオが一段と声を張った。
すると、グレスはおもむろに両手を踊るように動かしてから

「初代、牙狼クイズ王である倉橋ゴンザ。
 あなたにこれを贈ります。祝福を!」

そう言って見えない何かを差し出すようにして、グレスはにっこり笑った。

「…」

ゴンザはわけがわからず戸惑ったが、しばらくの後、

「…ありがとうございます」

とようやくお礼の言葉を口にした。

「グレス様、ありがとうございました!」

戸惑っているゴンザをスルーして、レオが言い、中央のビジョンからグレスの姿がプツリと消えた。




邪美がこっそりと問いかける。

「…おい、零。あれはなんだ?」

「…あれって? 祝福を、ってやつ?
 んなの、俺にわかるわけないだろ?」

そう言って、肩をすくめる零。

「なんだ、おまえにもわからないのか…
 神官ってやつのやることは、よくわからないねぇ」

邪美は、大きなため息交じりにそう呟いた。




「ゴンザさん、よかったですね。
 それでは、優勝しての一言をいただけますか?」

そう言ったレオにマイクを向けられたゴンザは、まだ困惑していたが、

「一言ですか… ええっと… はい。
 優勝できまして大変嬉しく思います。
 今後も一層精進し、大河様、鋼牙様に続きます次代の当主にもお仕えできるよう頑張っていく所存でございます」

と答えた。

「ありがとうございます。

 それでは改めまして…
 牙狼クイズ王の初代の栄冠は、倉橋ゴンザさんに決定しました!
 ゴンザさんに負けず劣らず、牙狼好きを自負するみなさん。
 今度は二代目の牙狼クイズ王を目指して挑戦しましょう!

 それでは、次回の牙狼クイズ王でお会いできることを楽しみに…」

レオがそんな言葉で締めようとしたところで、スタジオのあちこちから

  パンッ

と大きな破裂音が響き、

「うひゃ」

と小さくなって首をすくめたゴンザと、瞬時に戦闘態勢に入った零と邪美に、大量の金の紙吹雪が舞った。
音の正体が危険なものでないことがわかり、放心状態となったゴンザと緊張を解いた零と邪美を無視して

「ありガロ~ございました~」

とにこやかに手を振るレオと鈴を最後に、番組の収録は終わった。




さて、後日談。

「ゴンザさん、優勝おめでとう」

先日のクイズ番組の優勝者がゴンザだと聞いたカオルが、ゴンザにお祝いの言葉を贈った。

「ねえね? 賞品はなんだったの?
 なんか素敵なものってレオくんが言ってたけど、何? 何?」

好奇心いっぱいのカオルに、ゴンザは何とも言えない笑顔を見せた。
が、ふいに気づいたことがあり、カオルに答えた。

「これが賞品の効果なのかわからないのですが… 腰が…」

「腰?」

「ええ、痛かった腰が全然痛くなくなりました。
 ええ、はい、きっと、これが ’祝福’ なんでございましょうな…」

ひとりで納得しているゴンザに、カオルは何のことやら皆目見当がつかず、首をかしげながら、

「へぇ… それはよかった… ね?」

と言うしかなかった。



fin
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ふふふ、ちょっと、拍子抜けの最後になりました~
賞品は最初っから「あれだ!」と決めていたのですが、優勝者までは決めておらず、その時になったら決めればいいな、と相変わらずの気ままな妄想になってしまいました。

少しでも、ふふふ、と笑ってもらえたらいいのですが…

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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