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きんのまなざし ぎんのささやき

鳴らない鈴(15)

気ままな妄想って、(ちょっと)怖い…
思いもしなかったことを、ペロッと書いちゃうから。

こんなこと書いてよかったのかな、と今更ですが思うのです。
いや、しばらく経ってからも思うかも。

何のことを指してるか… は、読んだらわかると思います。多分…


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魔界竜の稚魚が落ち着きなくチョロチョロと動き回る中、鋼牙は微動だにしない。
鋭い視線が一点に注がれている。
鋼牙の陰からカオルも同じ方向をそっと覗き見てみるが、何も見えない。

…いや。

太陽が高くなり、陽炎がゆらゆらと見え始めた中を、誰かがしっかりとした足取りでこちらに向かってきている。
それが見えたとき、あっ、と緊張したカオルとは相反して、鋼牙のほうは少しだけ緊張を解いていた。

『ほほう。これは、これは…』

面白いものでも見た、というようにザルバが呟く。

「ザルバ、間違いないか?」

確認するように尋ねる鋼牙に、

『ああ、間違いない。ヤツだ』

とザルバは断言した。
ふたりの会話を訝(いぶか)しみながらも、カオルは近づいてくる人物から目をそらさない。

この異空間はどこをどう切り取っても不思議な感覚に襲われる場所だと言うのに、その人物はそんなことを感じさせないくらい、ひょうひょうと歩いている。
やがて、彼の表情まで見える距離に来るが、涼しい顔で笑みを浮かべているではないか。

(あっ…)

この感覚は前にも確かに経験している…
カオルがそう感じると、いくつかのシーンが頭の中に浮かんでは消えた。



夜の埠頭… 後ろから抱き留めらた恰好のカオルの左手を取り、その指にチュッとキスをされる。

男が両手に剣を持ち、その切っ先が壁に触れて火花を散らせる中、どこまでも冷ややかな目で近づいてくる。

組み敷かれたカオルにゆっくりと覆い被さり、少し切なげに傷ついたような顔を近寄せ、キスされそうになる。

カオルの首に剣を突きつけ、鋭い痛みとともに赤い血がじわりと流れる。

少年のような顔で微笑み、安心して、と優しく言う。



どれも掴み取ろうとすると、するりと躱(かわ)されてしまい、確たるものは残らなかったが、確かによく知っている人物であるらしいことはわかった。
カオルが失くした記憶の糸を手繰り寄せようとしている間に、その男は目の前まで近づいていた。



「よぉっ! やっと会えたぜ」

カオルの脳裏に浮かんだ姿よりもいくらか年を取り、男っぽく骨太になり、同時に落ち着きが増して渋みも加わったイイ男が笑っている。

「零、おまえ…」

「鋼牙たちがなかなか帰ってこないから、何か力になれることはないかと思ってさっ。
 …ってか、無事、カオルちゃんに逢えたんだな。よかった…」

鋼牙の後ろにいるカオルに優しい視線を送り、安堵の溜め息をつきながら、彼… 涼邑零は心底ほっとしたように呟いた。

『なかなか居場所がわからなくてな。
 カオルと会えたのもつい最近のことなんだ』

そう言うザルバに、

『あらっ、あなたともあろう者がそんなに手こずるなんて…
 こっちに来て、鈍くなったんじゃない?』

とシルヴァがからかうように言う。
カオルは、声の主を探して大きな瞳をキョロキョロさせたが、零と呼ばれた男の左手のグローブにある美しい魔導具だと解ると好奇心いっぱいの顔でじっと見つめた。

『おいおい、久しぶりの再会なんだから、もう少し口のききようってもんがあるだろ?
 まあな、おまえさんの口から「遭いたかったわ~」なんて言葉が聞けるわけもないがね』

『あら、そんなことを言ってほしかったの? いいわよ?

 遭いたかったわ~ン♡
 …これでどうかしら?』

『よせよ! 寒気がしてしょうがないぜ』

魔導具どうしのやりとりは、相変わらずのようだ。

「おいおいふたりとも!
 カオルちゃんがびっくりして何も言えないじゃないか」

ザルバとシルヴァのいつまでも続きそうな会話の間を、零が割って入った。
ね、カオルちゃん? とでも言いたげに、零はカオルを見たが、カオルは曖昧な笑みを浮かべるだけだった。

(おや?)

カオルの様子を不審に思った零に、鋼牙が説明を加える。

「零。
 カオルは今、記憶をなくしている。
 どうやら術か何かのせいみたいだ」

「えっ?
 おまえのことも覚えていないのか?
 雷牙のことも?」

眉をひそませて、零が訪ね返す。
それには、無言でうなづいて、鋼牙は返した。

『だが、それも徐々に消えつつあるようなんだ。
 わずかずつだが、記憶も戻っては着ているようだ』

ザルバの言葉に零は少しほっとした。

「そうか…」

零はカオルを怯えさせないよう、少しだけ顔を近づかせて穏やかな声で言った。

「カオルちゃん、俺は、涼邑零。鋼牙と同じく魔戒騎士だ。
 そして、こいつはシルヴァ。俺の相棒…
 どう? 覚えてない?」

カオルは零を真っ直ぐに見て、申し訳なさそうにわずかに首を横に振った。

「あ、でもね。
 あなたを見たとき、パパパッ、って昔のことが出てきたの。
 殺されそうになったり、キスされそうになったり、なんだかすごくチグハグな記憶なんだけど…」

キス…
それを聞いた途端、鋼牙の顔が険しくなり、零の方は動揺した。

「あ、いや、その、俺たち、過去にはいろんな行き違いはあったんだけど、今はすっかりわだかまりも何もないから。うん。
 だから、俺はカオルちゃんの味方だから、ね?」

零は、鋼牙のほうは見ないようにしながら、カオルに言った。



(俺の知らないところで、カオルと零の間に何があった?)

鋼牙は少し不機嫌になったが、

(まあ、そのことはカオルの記憶が戻ってからじっくり訊きだすとして…)

と気分を変えるために、深呼吸をひとつしてからカオルに言った。

「カオル。
 零は、俺が最も信頼している魔戒騎士だ。
 だから、こいつのことは、俺と同じくらい信用していい」

カオルは右と左、当代一を争う実力を持つふたりの魔戒騎士を交互に見た。
カオルは実際にはホラーを狩る魔戒騎士としてのふたりの実力を知らない。
だが、見上げるくらいの長身、鍛え上げられた均整のとれたスタイル、そして、実力に裏打ちされた余裕あるたたずまい、そして、カオルを見つめる目には誠意と優しさを認め、うっとりとするくらい美しい男たちを前に気持ちはすでに固まっていた。

「うん。あたし、あなたたちのことはずっと前から信頼しています、きっと…」


to be continued(16へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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