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きんのまなざし ぎんのささやき

鳴らない鈴(16)

この無闇に長くなってしまった妄想も、なんとかそろそろケリをつけたい!
そう思って、月曜日も頑張ってみたのですが… う~ん…

ともかく、続きをお楽しみくださいませ。


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『それにしても、よくここまで辿りつけたもんだな』

ザルバが感心したようにそう言うと、零はニヤッと含みのある笑いを見せた。

「まあね…」

『ここは神官の力をもってしても、おいそれとは近づけない場所だから…』

零にしろ、シルヴァにしろ、どうやらそうやすやすとは種明かしをするつもりがないらしい。
鋼牙は黙って考えを巡らせていたが、やがてひとつの解を導き出す。

「烈花… か?」

探るように零を見た鋼牙に、零は指でピストルの形を作り、ウィンクしながら鋼牙に向けて撃つ真似をした。

「ビンゴっ!」

『おいおい、こいつが目印をつけたのは、烈花たちと別れたあの場所からここまでの間の話だろ?
 だがその先は…』

ザルバが魔戒竜の稚魚を顎で指しながら指摘したが、すぐに考えを改めた。

『そうか… なるほど、烈火のヤツ結構やるなぁ』

どうやらザルバにも仕掛けがわかったようだ。
だが、この場でただひとり、話が見えずに不安げにしている者がいた。それは、カオルだ。
いち早くそれに気づいた零が、優しく声をかける。

「カオルちゃん、あのね、俺たちの仲間で、烈花っていう魔戒法師がいるんだ。
 その烈花が、何者かの策略なのか何かわからないんだけど、ここと同じような場所に引きずり込まれたことがあって、その場所から元の世界に帰るときに道しるべを残していったんだよ」



かつて、突如巻き起こった黒雲の中にカオルが引き込まれたときと同じように、烈花もまた異空間に引きずり込まれたときのこと。
ザジとの闘いの最中(さなか)、気を失ってしまった烈花は、彼女のピンチを救った鋼牙とは会えなかった。
だが、意識を取り戻した烈花は、すでに薄れつつあった鋼牙の思念を魔戒竜の稚魚に追わせることにした。
万にひとつの可能性であっても、鋼牙の居場所が掴むことができるかもしれないのだ。

そして、来たときと同じように人ならざる大きな力によって元の世界に戻されようとしていた烈花は、身体を飛ばされながらもあちこちに札を残していった。
魔界の文字が描かれた赤い札は、暗く不透明な空間にしっかりと貼りつくと、おのれの存在を示すためにぽぉっと白く光り始めた。



突然消え去ってしまったカオルを追って異空間へと旅立った鋼牙。
そのふたりを探しに行くという零に、烈花は片手にすっぽりと収まるほどの懐中時計のような形をした魔導具を手渡した。
見た目以上にズシリと重たいそれを角度を変えながら眺めてから、

「これは?」

と零は尋ねた。

「それは、オレが異空間に残してきた札(ふだ)の場所を指し示す羅針盤のようなものだ。
 オレが飛ばされた場所まではそれが導いてくれるだろう。
 そしてそこから先は、鋼牙の思念を追わせた魔戒竜の稚魚が残していった跡を追うといいだろう。

 ただし、そいつが無事、鋼牙と合流できているかどうかは何一つ確信はないのだが…」

烈花は、一抹の不安を覚えながらも、キッと零を見上げた。

「だが、おまえなら辿りつけると信じている!
 必ず… 必ず鋼牙たちを連れ帰ってきてくれ、零!」

昂ぶる感情を抑えつつ、烈花は零に望みを託した。

「烈花…」

零は、掌の中の魔導具を強く握りしめた。
その重みは、烈花の… いや、鋼牙たちの帰りを願う多くの人たちの想いも重なり、より重みを増したようだった。
零は不敵な笑いを浮かべながら、烈花の肩をポンと叩いた。

「ああ、任せておけ!
 鋼牙たちは、どんなことがあっても、必ず無事に俺が連れて帰ってきてやる!」

零は、ゆっくりと力強くうなずいた。
それに応え、烈花もうなずき返す。

スッと真顔になった零がくるりと烈花に背を向けると、空に高々と魔導具を突きつけた。
すると、魔導具から光の筋が空の一点を指し示し、そこに黒々とした穴がぽっかりと口を開いた。
光の筋はその中を真っ直ぐに進み、何かにぶつかると、今度はその先にある一点へと方向を変えて向かっていった。
恐らく、それらは烈火の残した道しるべの札。
零の進むべき道は、烈花によってしっかりと示されていた。

零は身体の中に沸々と沸き起こる不思議な感覚に身震いをした。

(よし、待ってろよ。
 今、迎えに行ってやるからな!)

零はぐっと腰を沈めて、渾身の力で地面を蹴った。
光の道しるべを追い、吸い込まれるように零が穴の中に入ると、零を飲み込んだ穴は煙のように立ち消えて、そこには何事もなかったように青空が広がっていた。

(零… 頼んだぞ)

烈花は、零の消えた空を、想いを込めていつまでも見つめた。





「それじゃ、そろそろ出発しようか?
 いつまでもこんなところでぐずぐずしていないで、さっさとおさらばしようぜ!」

零が威勢よく声をかけた。
その声に励まされるように、鋼牙もカオルも明るい表情を見せ、うなづいた。

「よし! それじゃあ出発だ!」

零は今来た道を振り返り、歩き出そうとした。
が、すぐにその足を止める。

何事だろう、とカオルは不審に思いながら鋼牙を振り返ると、こちらも厳しい顔をしている。

「どうしたの?」

カオルがそう声を掛けると、鋼牙はシッと人差し指を立てて彼女を黙らせた。


   …ガ  …コウガ   …サエジマコウガ


どこか遠くから鋼牙の名を呼ぶ低い声が聞こえた。
それはカオルの耳にも届き、驚きでビクリと身体を強張らせる。
そんな彼女を左右から、鋼牙と零、当代随一の魔戒騎士が庇い合う。

遠くから聞こえる声は、徐々にではあったが、近づいてきていた。




『鋼牙。どうやらこれは英霊の声のようだ』

信じられない、という感じでザルバが言う。

「なに?」

訝(いぶか)しそうな顔で鋼牙も答えた。

『ああ、間違いない。これは英霊たちからのおまえへの呼びかけだ!』

ザルバが自信満々に言い切った。
鋼牙はそれを聞いてしばらく考えたが、やがて、声のする方向に向かって仁王立ちとなって叫んだ。

「俺は冴島鋼牙。牙狼の称号を持つ魔戒騎士だ。
 英霊よ、俺の声が聞こえるか?
 俺はここにいる!」

この異空間は人界や魔界とは何も接点がないように思えたが、零がここに辿りついたお蔭なのか、今こうして英霊とつながることできたようだ。



   冴島鋼牙…
   黄金騎士、牙狼ノ称号ヲ持ツ者ヨ…



英霊が鋼牙の位置を捕捉できたからであろうか、空の彼方というよりも、身体の内側から響いてくるような声になった。

「なんだ!」



   今、ココニ、牙狼ノ称号ヲ願ウ者ガイル…
   知ッテノ通リ、牙狼ノ称号ヲ継承スル者ハコノ世デタダ独リ…
   冴島鋼牙、オマエガ牙狼ノ称号ヲ持ツ限リ、コノ者ハ牙狼ニナルコトハデキナイ…



「牙狼の称号を?」

鋼牙の頭の中にある者の姿が浮かび上がる。

「それは誰だ?」



   ソノ者ノ名ハ、ライガ…
   冴島雷牙…



(やはり…)

鋼牙は半分納得し、半分驚いていた。
鋼牙の中では、雷牙の記憶は子どものままだったからだ。
その鋼牙の心の内を読んだのか、零が言った。

「この空間の時間の流れは、俺たちのいた世界とはかなり違っているみたいだぜ」

その一言で鋼牙は理解した。
どうやら、この異空間での時間の経過は遅く、元の世界にいる雷牙はすっかり成長しているということらしい。



「英霊よ!」

鋼牙は尋ねる。

「教えてくれ、英霊よ。
 雷牙は… その者は牙狼の称号を継承するに値あるのか?」



   コノ者ハ、牙狼タリエルチカラヲ十分ニ持ッテイル…
   ダガ、冴島鋼牙、オマエガ許サヌ限リ、コノ者ニ牙狼ノ鎧ハ召還デキナイ…

   冴島鋼牙、オマエニ訊ク…
   コノ者、冴島雷牙ニ牙狼ノ称号ヲ譲ル気ハアルカ…



「!」

突然突きつけられた問いに鋼牙は動揺した。
だが、すぐに気持ちは半分固まっていた。あと半分…

「零…」

鋼牙は零を振り返る。

「おまえに訊きたい。
 雷牙は… あいつは強くなったのか?」

鋼牙にとっては、牙狼の称号が惜しいのではない。
牙狼となり得た者の使命が重いことを十分承知しているからこそ、それを継ぐ息子の身を案じたのだ。
牙狼に託される人々の想いを受け止め、どんな脅威にも打ち勝つ強さがあるのか、と。

真っ直ぐに注がれる鋼牙の視線を真正面から受けた零は、大きくうなずいた。

「ああ。
 なんたってあいつは、誰よりも強いおまえの血を引く男だぜ?

 それにおまえに劣らないくらい腕利きの師匠が、イチから叩き込んだ自慢の弟子だ。
 あいつと別れたときも十分強かったが、真面目なあいつのことだ、今頃は師匠の俺が舌を巻くくらいの、飛び切り強い魔戒騎士に成長しているはずだ!」

自慢げにそう言う零の表情には、父性にも似た強い情愛の念が浮かんでいた。
零のその答えで、鋼牙の胸の内は決まった。

「英霊よ!
 黄金騎士牙狼の称号は、我が息子、冴島雷牙に譲りたい!」



   冴島鋼牙、オマエノ願イヲ、我ラ、シカト受ケ取ッタ…
   本日、コレヨリ、黄金騎士牙狼ノ称号ハ冴島雷牙ガ継承スルモノトスル…



それっきり、英霊の声は聞こえなくなってしまった。


to be continued(17へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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