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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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鳴らない鈴(17)

7月も終わります。
この妄想も、かれこれ3ヶ月以上も続いてるんですね。

この、のらりくらりとしたお話におつきあいする方も大変だったですよね?
お疲れさまです! そして、ありがとうございます!

こんなふうに書くと… もうわかりますよね?
では、続きをお楽しみくださいませ。




:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

『よかったのか、鋼牙。
 もう、牙狼の鎧は召還できないぜ?』

今更ではあったが、ザルバは鋼牙に言わずにはいられなかった。

「いいんだ、ザルバ。
 鎧が大事なのではない」

そう答えた鋼牙の口調は、どこかサバサバとしていた。
そのやりとりを複雑な顔で見守っていた零だったが、すぐに明るい表情を作って

「心配するな、ザルバ。
 こいつがピンチのときには、俺がちゃんと守ってやるよ」

と冗談めかして言った。
そんな友の心遣いをありがたく思いながらも、鋼牙は、

「ふん、いらぬ気遣いだ」

と嘯(うそぶ)いてみせた。

「ははは、そんなことはわかってるさ」

互いに笑いかけていたふたりだったが、鋼牙は、ふと、心配そうにこちらを見ているカオルに気付いて彼女の肩に優しく手をかけた。

「何も心配することはない、カオル。
 黄金騎士でなくなったとはいえ、俺が魔戒騎士であることに変わりはない」

「そうだよ、カオルちゃん。こいつの強さは尋常じゃあない!
 牙狼の鎧がなくたって、十分強いんだから…」

口々に気遣ってくれるふたりの優しさを、カオルは強く感じた。
だからこそ、ふたりに心配をかけさせない。そのためにも自分は笑わないといけないと、カオルは思った。
なんとか笑顔を作って、こくんとうなずくと、ふたりの魔戒騎士は少しホッとしたようだった。





白く神々しいほどの光が雷牙に降り注がれている。
ここは、英霊の塔。


  …シカシ、今ソノ者ノ意思ガ示サレタ…
  牙狼ノ称号ヲワガ息子、雷牙ニ授ケルト…

  冴島雷牙ヨ…
  今カラオマエハ黄金騎士、牙狼ダ!


感極まった雷牙が涙をこぼした。
父が生きていたのだ。そして、恐らく父のそばには母もいるだろう。

(生きていたんだね、父さん、母さん…

 無事に… なんとしても無事に帰ってきてください!)

雷牙は強く強く心の中で祈った。
ぎゅっと閉じられていた瞳をカッと見開く。
本日只今より、自分は父の意思を受け継ぎ、黄金騎士牙狼として生きるのだ。
いつか必ず… いつの日か必ず再会するそのときに、ふたりに対して恥じることがないように、揺るぎない心で曇りないまなざしで堂々と…





  チリリン…

涼やかで軽やかな音が、鋼牙たち三人の耳に届いた。

(えっ…)

驚きとともに緊張が走る。

  チリリン…

また、聞こえた。

「これは…」

カオルの言葉に、零が半信半疑の面持ちで応える。

「鈴…の音?」

鋼牙は白いコートをサッと掻き分けると、腰にぶら下がっている、あの鈴を見た。
そして、腰からその鈴を外すと目の前にぶら下げてみた。
カオルも零もその鈴をじっと見つめる。

  チリリン…

確かに音はその鈴のほうから聞こえてきた。
だが、鋼牙は鈴を揺らしてなどいないし、鈴のほうもピクリとも動いていなかった。
試しに、鋼牙が鈴を揺らしてみたが、いつも通り、それはチリとも鳴らなかった。

鋼牙と零は険しい顔を見合わせた。
そしてカオルを見る。

だが、カオルのほうはというと、大きく目を見開き、ここではないところに意識を飛ばしているようだった。
実際、カオルの中では収まり切れないほどの記憶の洪水が起こっていた。
鋼牙との出会いから今までの間の出来事が、干からびていた細胞にヒタヒタと水でも浸透するように静かに、だが確実によみがえっていった。

「鋼牙… あたし…」

茫然としているカオルを、鋼牙と零は心配そうに覗き込んだ。

「あたし… 思い出した!」

「カオル!」

カオルの両肩を掴む手に、ついつい力がこもる鋼牙。
目の前の鋼牙にしっかりと焦点を合わせたカオルが、

「まだ、完全じゃないのかもしれないけど、鋼牙のこと、はっきりと思い出したよ! 零くんのことも!
 そして、雷牙… あたしの大事な大事な宝物…」

と言うと、空っぽの手に何かを大事そうに抱えるかのような素振りをして愛おしそうな顔をした。

「カオル…」

噛みしめるように鋼牙は彼女の名を呼んだ。

『よかったぜ…』

心底ほっとしたようにザルバは呟き、零も胸を熱くさせてふたりを見守った。



もともと、持つ者の無事を願う想いが込められた鈴だ。
それが、雷牙の両親を想う祈りが届いたのか、鳴らないはずの鈴の音を響かせたのかもしれなかった。

  会いたい… 無事な顔を見たい…

子を想う気持ちと、親を想う気持ちが時空を超えて共鳴していた。





「さあ、おふたりさん! いつまでこんなところでグズグズしているつもりだ?
 雷牙が待ってるぞ!
 とっとと帰って元気な姿を早く見せてやろうぜ!」

零が大きく声を張り上げて、ふたりの背をドンと押した。

「カオル、帰るぞ」

鋼牙は力強く彼女に言うと、

「うん! 雷牙やゴンザさん、みんなの待っている場所に…」

と少し目を潤ませながら、それでも笑顔のカオルが言った。





歩き出した鋼牙、カオル、零の足取りは軽く、力強かった。
彼らには待っている人がいた。帰りたい場所があった。
彼らの進むべき道には、キラキラとした道しるべが光っている。魔戒竜の稚魚が誘うようにひれをひらひらさせながら先導を努めていた。

もう何も迷いも不安もない。

ただ、まっすぐに…
あの場所へ…



fin
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


はい、唐突に終わり、です。
これ、アニメなんかによくありがちな展開ですよね。
雷牙の元に辿りつくまでを期待していた方には、ほんと申し訳ないデス!

でも、最初っから「さあ、あとは帰るだけだぜっ」というところで終わる想定をしていたんですよね。
それは、親子の再会(あるいは共演)は、やはり、いつか公式様で見たいな~ という願望があったからかもしれません。

それに、そこを書いてしまっちゃうと、読み手の皆さまの妄想のチャンスを奪ってしまう気もして…
再会のとき、鋼牙は何を言う? 雷牙は?
ふふふ、そういう楽しみは大事~にとっておきました!

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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