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きんのまなざし ぎんのささやき

8月の終わりに(3)

ふと気づくと、秋のお彼岸じゃないですか!?
秋の空気に、秋の空、というこの状況で、まだ8月のお話を書いてるなんて…
いくらなんでも「気まま」過ぎますねぇ。

それに、なにも「事件」らしい「事件」も起こらない地味な妄想だし… (う~む)

だが、しか~し! それでもがんばって書き上げないと! p(`へ´)q


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ひんやりとした夜気の中、様々な色の尾を引いて光の花が咲いていた。
花火をするのはカオルだけでゴンザと鋼牙はもっぱら見る側という図式のまま、花火を1本、2本とするうちにカオルの顔が不機嫌になっていく。
3本目が燃え尽きたとき、とうとう痺(しび)れを切らしたカオルは

「ひとりでしても楽しくないよぉ」

と嘆くように訴えると、ふたりにも花火をするよう勧めた。
すると、ゴンザのほうはその言葉を待っていたのように、

「では、ひとつ…」

と素直に花火を手にした。
そして、童心に帰ったかのように嬉々として花火に火をつけ、その輝きに見入るのだった。

(うふふ。ゴンザさん楽しそう! それに引き換え…)

カオルはチラッと鋼牙を見た。
彼の方は、カオルやゴンザが誘ってみたものの、いや、俺は… と曖昧に口を濁して誘いを躱(かわ)してばかりだった。
とは言え、花火に興じるカオルとゴンザを見ているだけでもそれなりに楽しんでいるようなのは肌で感じていた。
それは、彼がいつもより柔らかい目をしているから、とか、いつもより声が穏やかだ、とかそういうことではなく(残念ながら、辺りが暗くて彼の表情はよくわからなかったし、声でわかるほど彼は喋りもしないのだから)、それこそなんとなく空気で解るという感じだったが、その変化はカオルだけではなく恐らくゴンザも感じているだろう。

(鋼牙がそれでいいならまあいいか)

そう思ったカオルは、その後は無理に誘うようなこともしないことにした。

そんなわけで、カオルとゴンザとが代わる代わる花火に火を点け、鋼牙はそれを眺めて楽しむという体制へと変わった。

「これはどんな花火だろう?」

「次はこれなんかいかがでしょう?」

などとおしゃべりしながら選ぶのも楽しく、火をつけてさらに楽しむという時間がどのくらいだか続いた。
が、それもしばらくの間だった。
カオルの手にした花火がシュンと消えたかと思うと、それを見計らって、ゴンザは、さて、とおもむろに立ち上がったのだ。

「なんだか屋敷の明かりが少し邪魔なようですな。ちょっと消してまいりましょう」

そう言ってニッコリと笑う。
そして、去り際に、

「どうかお気になさらず続けてください…」

という言葉を残して屋敷の中へと消えていった。

そう言われるとなんとなく気になってしまうもので、カオルは新しい花火に火をつけることもなく屋敷のほうを気にしていた。
すると、程なくしてテラスに面しているリビングの明かりがふいっと消え、そのせいで、テラスの闇が少し濃くなったように感じる。
もちろん、屋敷中の明かりがすべて消えたわけではないので、不安を覚えるほど暗くはない。

(うん、ゴンザさんの言うとおり、このほうが花火、きれいかも…)

そう思いつつゴンザを待っていたのだが、一向にテラスに戻ってくる気配がない。
どうやら、あのデキる執事は気を効かせたつもりらしく、あとはおふたりでお楽しみください、ということのようだ。

「ゴンザさん、帰ってこないね」

独り言のようにそう呟いたカオルだったが、ま、いっか、と気を取り直してまだ火をつけていない花火へと手を伸ばした。
残っているのはあと15~6本といったところか。
その中から、カオルが選んだのは、赤く塗られた柄の先にカラフルで光沢のある紙が巻かれている一番長くて大きいものだった。
そして、鋼牙を振り返ると

「ねえ、鋼牙もしようよぉ」

少し甘えるような声でそう言った。
さっきまではゴンザがいた手前もあったが、さすがにふたりっきりになったのだから強引に誘ってもいいかなという気になっていた。
だが、それだけでは鋼牙は、うん、と言わない。
それじゃあ、とばかりに、ぐいっと花火を鋼牙に向けて突き出した。
それでも、鋼牙は、ムムッと顔を引くばかりで受け取ろうとはしない。

「…」
「…」

静かな睨み合いは続く。
もちろん、そんなことでへこたれるカオルではない。
鋼牙の手を取ると、強引に手の平に花火を押しつけた。
そして、下から彼の顔を見上げてニッと笑う。

「はい、こっち、こっち」

何事もなかったように朗らかに言うと、苦々しい表情をしている鋼牙をよそに、その手を引っ張るようにしてろうそくの前へと連れてきた。
そして、そこにしゃがむようにと手を下に引いて従わせると、自分もその隣にしゃがみ込み、早く火をつけろというように目で訴えるのだった。

  ふうっ

仕方がないな、とばかりに鋼牙は溜め息をつく。

いつもながら思うが、ホラーをもビビらせる魔戒騎士を相手にこうまで物怖じしない女は珍しい。
もちろん、魔戒法師の中には鋼牙と対等に渡り合おうとする者がいないこともない。
だが、食わせ者の多い魔戒法師でも、さすがにそういう者は限られている。
それほど現在の鋼牙は、魔戒騎士として一目も二目も置かれる大きな存在になっていた。
ところが、このカオルときたら、出会った当初から鋼牙に真っ直ぐぶつかってきた。
本気で怒り、本気で心配し、本気で涙し…
そういう彼女は、今の鋼牙にとっても、そしてこれからの鋼牙にとってもかけがえのない存在だと言えた。



カオルの見守る中、鋼牙は花火に火をつけた。
花火の先端についている花びら紙がくしゅくしゅと縮こまるように燃えたかと思うと、次の瞬間、細い金色の光の筋がススキの穂のように勢いよく飛び出してきた。
やがて、それが赤い色に変わる。そして次は緑…。
目まぐるしく変化したかと思えば、最後は唐突に輝きを失くしてジュッと消えてしまう。

鋼牙にしてみれば、花火とは火薬の爆発とそれに配合された金属の炎色反応に他ならないわけで、それ以上に特に興味の沸くものでもない。
それよりも、彼にとっては、隣で花火を見つめるカオルのほうが見ていて飽きなかった。
鋼牙に寄り添うようにしたカオルは、目がキラキラと輝き、口元には自然に笑みがこぼれている。それが、花火の光の中でパッと浮かんで見えるのだ。
そして、花火が消えたときには、決まって無意識のうちにフウッと息を吐いて目を伏せるカオル。
小さな喪失感で憂いにも似たその表情にも、鋼牙はハッと胸が掴まれるような感じがして目を引かれる。

花火というものは不思議だ。
刹那的で不確かな光が目のくらむような輝きを見せたかと思えば、同時に柔らかな陰影をも生み出している。
それがいつも目にしているはずの見慣れたものを、実に幻想的なものへと姿を変えさせてしまうのだから。



その後も、カオルに請われるまま鋼牙は立て続けに何本かに火をつけた。
そして、いよいよ線香花火ばかりが数本だけ残った。

「俺は十分にした。あとはおまえが…」

そう言うと、鋼牙は身体を少しずらして、ろうそくの前の位置をカオルに譲った。

「え、いいの?」

カオルは鋼牙を見て、それから嬉しそうに1本を手に取る。

火をつけると、まずは花火の先に小さな火の玉ができる。とろけるような蕾のような玉だ。
やがてそこから遠慮がちに火花が散り始める。

  パチッ…   パチッ…

カオルは線香花火の生み出す温かい色の火花を見つめながら思っていた。

(あたし、浴衣を着て花火してるんだわ。それも、鋼牙と…)

カオルがこの浴衣を見かけて、欲しいな、と思ったのは、一昨年のことだった。
これを着て、いつか鋼牙と花火大会やお祭りの縁日に行けたらといいな… と、恋する女性なら普通に考えることを思い描いていた。
だが、実際にはそういうときに限って鋼牙は屋敷を留守にすることが多く、浴衣はずっと箪笥の奥で眠らせることになっていたのだ。
もちろん、そんなことは半ば予想していたことではあったので、この浴衣の袖に手を通すことを、カオルは半分諦めてもいた。
だが、今年は、もう夏が終わるという頃になってだったが、思いがけなくもこうして着る機会に恵まれた。

(ふふふ。規模はずいぶん小さいけど、これも花火大会には違いないよね~)

線香花火はパチパチといくつも火花を飛び散らせ、一番華やかなときを迎えていた。
が、それも束の間、急に勢いが衰えたかと思うと細く長い糸を引くようになり、人の肌には感じないほどの小さな風にも反応して柳の枝のように揺れ出した。
そして、今度は思い出したかのようにように火花が爆(は)ぜ始める。
小さな花が咲いては消え、消えては咲くようになると、そろそろ終わりが近い…
やがて、花火の先端についたぷっくりとした火の玉だけが残り、あとは最後の刻(とき)を待つように火の玉がじわじわと大きくなり、そして…

  ぽとり

堪え切れなくなった大きな火の玉が地面に落ちて、辺りは闇に帰するのだった。



to be continued(4へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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