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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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Spring, come here!(2)

ホワイトデーをテーマにした妄想のつもりが、少しもそのテーマに近づけずに
います…

う~ん、おかしいなぁ~


努力はしてみます。
はい、できるだけの努力は…


拍手[40回]


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

お茶を飲み終わった鋼牙は、

「ゴンザ、少し出かけてくる。
 夕食までには帰る」

と、改めて執事に告げ、カオルを連れて表へ出た。
天気がよいとはいえ、この時期は陽の翳(かげ)るのが早く、すでに、
太陽の光も勢いを失っていた。
黙ったまま歩を進める鋼牙の後ろを、カオルもまた黙って歩いていたが、
どんどん街中へと近づき、ウィンドウに春らしい優しい色の衣装が
ディスプレイされている店が立ち並ぶ一角に差し掛かったとき、とうとう
我慢ができずに聞いた。

「ねぇ、いったいどこに行くの?」

聞かれた鋼牙は足を止めて振り返った。

「ここだ」

一言だけそう言うと、目の前の店を目で指し示す。

「えっ、ここ?」

カオルは店先を眺めた。
その店は、安い生地を大量生産で仕立てたものを扱う他の店とは、
少し趣きが違っていた。
扱う生地もよく、仕立てもきちんとしていそうな感じの店で、落ち着いた
雰囲気があった。
新しい感じはないが重苦しいものは感じさせず、鋼牙と関係がありそうな、
ホラーだとかゲートだとかが関係しそうな影を、カオルはどこにも
感じられなかった。

そこで、鋼牙に近づいて、声のトーンを落としてこっそり聞いてみた。

「フツウのお店みたいに見えるけど…
 ここの店員さんがホラーだったりとかするわけ?」

すると、鋼牙は目をひんむいた。

『はっはっはっは、こいつはいい~』

ザルバがたまらず笑う。
鋼牙は慌てて左手を覆った。
笑いをかみ殺しながら、ザルバは鋼牙にだけ聞こえるように伝えた。

『お前さんがあんまり何も言わないから、カオルは勘違いしちまった
 じゃないか。
 ちゃんと説明してやるんだな』

鋼牙がこれからすることは、魔戒騎士としての仕事とは一切関係ないと
いうことは、ザルバは明確に解っていた。
そして、何をするのかについても薄々は感づいていたのだが、それは、
魔導輪である自分には関係のないことなので、知らんふりを決め込んで
いた。
だが、さすがに、勘違いしているカオルを気の毒に思ったのだろう、
言葉足らずな鋼牙に釘を刺した。

ザルバの親切な忠告には返事をせず、鋼牙はカオルに話して聞かせた。

「カオル、この店はホラーなどとは関係はない」

鋼牙の言葉を聞いて、少なからず緊張していたカオルの身体から力が
抜けた。

「な~んだ、違うの?」

そんなカオルに、鋼牙はさらに言った。

「その… お前に見てもらいたいものがあって来ただけだ」

「えっ、何?」

「…これだ」

鋼牙が身体を少し横にずらすと、カオルの目にショーウィンドウが
飛び込んできた。
そこにディスプレイされていた何点かの中でも、特にカオルの目を
惹きつけたのは、スプリングコートで、生地も仕立ても申し分なく、
何よりもその色に心奪われた。

ベージュと言われればそうなのだが、ほんのりピンクがかっているそれは、
生地の光沢が見せるものなのか、光の当たり具合や見る角度によって、
ピンクの色が濃くなったり、薄くなったりして見えた。

「このコート、素敵だねぇ」

カオルは溜め息をつくように、感想をこぼした。

「気に入ったか?」

コートに見とれるカオルの横顔を盗み見るようにして鋼牙は尋ねた。

「…う~ん…でも、無理だ…」

カオルの返事に、鋼牙の表情が少し曇った。

「だって、あたし、今日、ネイルしちゃったし、食費削んなきゃだし…
 …うん、やっぱり、無理!
 とても買えないよぉ」

えへへ、という感じの笑顔を鋼牙に向けた。

「そうか…

 だが、着てみるだけならタダだ。
 せっかくここまで来たんだから…」

そう言うと、鋼牙は店の中へと入っていった。

「え~っ、そんないいって、鋼牙!
 ちょっと待ってよ…」

カオルは慌てて鋼牙の後を追った。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

カオルが鋼牙に追いつくと、すでに鋼牙は店のスタッフに話をつけていた。

「少々お待ちくださいね」

と言って、下がっていったスタッフは、しばらくすると、あのスプリング
コートを手にして戻ってきた。

「こちらに鏡がございますから、どうぞ」

そう言うと、カオル達をフィッティングルームに案内した。
こうなっては着ないわけにもいかず、カオルは自分の着ていたコートを脱ぎ、
スプリングコートに手を通した。
コートの内側に入り込んだ髪を両手で掻き上げ、鏡を覗き込んで見る。

外から「よろしいですか?」と声がかかり、扉が開かれた。

フィッティングルームから外に出てみて、店内の明るい光の下で、鏡に映る
自分を見て、それから鋼牙を振り返る。

「どう?」

恥ずかしそうに、でも、嬉しそうに尋ねるカオルに、鋼牙は素直な感想を
告げる。

「よく似合っている…」

ふたりの会話に遠慮がちにスタッフも加わる。

「このコートは珍しいカラーですが、どんな年代の方でも着られるものかと
 思います。
 でも、お嬢さんが着られると、とても華やかに見えますね。
 よくお似合いです」

店の雰囲気と同じように、年の割には落ち着いて見える女性のスタッフは、
商品を愛しそうに見つめて、穏やかにそう言った。

「ほんとに、これ、素敵です…

 あっ、でも…」

カオルはもう一度鏡に映る自分を見ていたが、買えないことを告げるために、
慌てて値札に手を伸ばした。
だが、その手を鋼牙が止めた。

「どうやら気に入ったようだ。
 これをもらうことにする」

そう言う鋼牙に

「でも、あたし、お金がない…」

とカオルが思わず事実を言う。
言ったあとに、しまった、と恥ずかしそうにスタッフの顔を見る。

「俺が払うから問題ない」

鋼牙の台詞に、

「ちょっと待って!
 あたし、そんな… 鋼牙に買ってもらうわけにいかないよ」

と、さらに慌ててカオルが言う。

「では… チョコレートのお返しだとでも思えばいい」

「チョコのお返しって… バレンタインの?
 だってホワイトデーはまだ先だよ?」

「その日まで待たなければならないのか?
 早かろうが、遅かろうが、プレゼントしたければいつでもいいだろう?」

鋼牙は困惑気味に言った。

「ふふふ…」

そのとき、スタッフの女性が笑った。
鋼牙とカオルは思わず振り返った。

「あっ、ごめんなさい。
 なんだか素敵だなって思って、おふたりのことが…
 それに、彼の言うことに、ほんとにそうだな って感心しちゃって。

 で… いかがいたしましょうか?
 ごゆっくりお考えいただければいいですよ」

ふたりの注目を集めたスタッフは、そう言うと、鋼牙とカオルを交互に見た。
その仕草は、最初にスタッフに対して感じた落ち着いた印象よりも、ずっと
キュートで親しみやすいイメージを植え付けた。

鋼牙とカオルは目を合わせると、鋼牙がきっぱりと言った。

「このコートをもらいます」

その答えを聞いて、スタッフはふんわりとした笑顔を浮かべてうなづいた。

「はい。
 ありがとうございます」

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

スプリングコートの包みを抱えながら、カオルは鋼牙と並んで歩いていた。

「ねぇ、鋼牙」

「なんだ」

「このコート、前から目をつけていたの?」

「いや…
 今日、お前のその爪を見ていたら、ふと思い出しただけだ」

「あぁ… そうなんだ…」

カオルは、右手を持ち上げ、ネイルをちらりと見た。

ふたりの会話を、ずっと黙って聞いていたザルバが、突然、口を開いた。

『とか言いながら、ここ何日かは毎日のように、あの店の前で足を
 止めていたようだったがな』

「ザルバ!」

ザルバをたしなめる鋼牙だったが、時すでに遅し。

「…ふ~ん」

カオルの脳裏に、店の前でウィンドーの中を覗いている鋼牙の姿が浮かんだ。
思わずクスクスと笑いが漏れる。

「なんだ?」

「ん? なんでもない…」

そう言うと、カオルは鋼牙の左腕にぶら下がるようにすがりついた。

「鋼牙…
   ありがと…」

「…」

鋼牙はチラリとカオルを見たが、何も答えずに歩き続けた。



北の大地に日が暮れようとしていた。
冷たい空気が頬に痛い。
カオルがスプリングコートに手を通すのはまだしばらくの間、お預けだ。

(あ~ぁ、早く春が来ないかなぁ…)

そう思うカオルの心の中は、ぽぉっと温かかった。
そして、それは恐らく鋼牙も同じことだったに違いない。


冴島邸の明かりが見えてきた。
あの明かりの下で、ゴンザの作るおいしい料理に舌鼓を打ち、楽しい会話が
交わされる楽しい夕食がもうじき始まる。

しあわせそうに揺れる、ひとつに交わる長い影を、一番星だけがひっそりと
見守っていた。


fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


長くなりましたが、何とか書き切りました。
何という事件も起こらないのに、ズルズルと長く、単調なお話になって
しまいましたが、最後までお付き合いありがとうございました!


このお話を妄想するとき、最初に、

「バレンタインデーのお返しはどうするの?」

って、鋼牙さんに問いかけてみたら何て答えるかな? と考えてみたの
ですが、

「お返し?
 そんなのは、したいときにすればいいじゃないか。
 ホワイトデーまで待つ必要などない!」

と、スッパリ断言されそう… と思ったところから、こうなりました。


前半部分のカオルさんとゴンザさんの会話は、書き始めると止まらなく
なってしまい、「ホワイトデー」というテーマからどんどん外れていって、
「日常のごくありふれた幸せのワンシーン」みたいになっちゃいました。

書いてる selfish は楽しかったのですが、読まされるほうは、
つまらなかったかもしれませんね。


多分、そのスタートがよくなかったのでしょう。
最終的には、「ホワイトデー」は完全に霞(かす)んでしまいました。
(苦笑)


というわけで、つけたタイトルも「春よ来い!」ということに…


北の管轄では、春はまだもうすぐ先のことですが、カオルちゃんなら
鋼牙さんと一緒にいられたら、それだけで「春」を感じているんじゃ
ないでしょうか?
そうだといいな~ という妄想でした!


コメント
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良いなぁ
プレゼントをしてくれる鋼牙、良いですねぇ!
どうやったら、こんな優しい鋼牙が書けるのか…。私の中にいる鋼牙の肩を掴んで、「オイッ、カオルに何かしようという気は無いのかッ!」と、言ってやりたい感じです。
多分、“ うっとおしい ” という表情を返されると思いますが…。
URL 2013/03/15(Fri)13:43:35 編集
Re:良いなぁ
いやいやいや、優しくならないように書いてるつもりなんですけど…
優しいですか、うちの鋼牙さんは?

芽様のとこの鋼牙さんはそんなに優しくないかなぁ?
う~ん、十分優しい って思いますけど…
いや、優しいというより、どちらかというと、不器用な男の子って感じでかわいいなぁって思うかも。
それは、selfish が、鋼牙よりう~んと年上だから(あっ、いやいや、ちょっとだけ年上、ね)、そう思うのかもしれませんけどね。 うふふ…
【2013/03/15 22:44】
春ですね!
デートの鋼牙の格好は「切札」回のスーツですね!鋼牙にとってカオルちゃんは春の女神ですね~!前回のRPG話のカオル謹製お菓子の破壊力に爆笑でした!あのお菓子サンポールでも入ってそうww
くわい 2013/03/16(Sat)15:11:01 編集
Re:春ですね!
ふふふ、爆笑していただけましたか?
サンポール! さすがにそれは入れてないと…
そこらへんに生えていたドクダミぐらいは入れそうですけど。 ははは…

どこのサイト様でもすでに何度となく書かれていることなので、「なんだよそれ~」とみなさんに冷笑されちゃうかな~と思いながら実は書いてましたのン
でも、ほんと、みなさんあったかくって、素直に笑っていただけて、よかった、よかった…
【2013/03/16 19:44】
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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