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きんのまなざし ぎんのささやき

Spring, come here!(1)

ホワイトデーだから… と考えてみたものの、あまり関係のない妄想が
浮かび、離れてくれなくなりました。 (苦笑)

まぁ、ホワイトデーってことはこの際、忘れて(おや? 忘れていいん
だろうか? 苦笑)、楽しんでもらえたらいいなと思います。

区切りがいいところまで頑張って書いたのですが、なんだか長くなりました。
(↑ 読んでるほうにしてみれば、区切り悪いかも、ですが)

明日中に終わるのかな?
っていうか、もう数分で日付が変わる… (苦笑)



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  ふん、ふふん ~♪

鼻歌を歌い出しかねないくらいの満面の笑みを浮かべながら、カオルは冴島邸を
目指して歩いていた。
いや、実際には、スキップしそうになるくらい気分が高揚しているので、たまに
歩くテンポが微妙に狂っていたのも事実だ。

  コツ コツ コッツ コツ コッコツ コツ コ …

冴島邸に着くなり、勢いよく玄関を開ける。
そして、この屋敷の執事が出迎えに来るより早く、つかつかと奥へと足を進める。

ここは、カオルの家ではない。
だが、いつだってカオルを温かく向かい入れてくれるところ…

カオルは、この時間、執事がいそうなところを目指しながら声を張り上げた。

「ゴンザさ~ん
 こんにちは~」

すると、キッチンのドアがガチャリと開いて、初老の男が出てきた。
その男… ゴンザは、カオルの姿を認めると、にっこりと笑みを作り、

「これはこれは、カオル様。
 よくいらっしゃいました」

と、歓迎の意を言葉にした。

「ゴンザさん、今日はとってもよいお天気ね。
 風は冷たいけど、すんごく気持ちよかったよ。
 一生懸命歩いたら少し暑くなるくらい… ふーっ」

そう言いながら、カオルはコートを脱ぎ始めた。
3月に入った途端、それまで雲間にずっと隠れていた太陽が珍しく輝いた
日だった。
カオルの脱いだコートを預かり、共にリビングに向かいながら、ゴンザは
尋ねた。

「それでは、お茶でもお淹れましょう。
 あっ、それとも、冷たいもののほうがよろしいですか?」

「う~ん…  あったかいものにします。

 ところで…  鋼牙は、いる?」

思い出したように、カオルはこの屋敷の主(あるじ)の所在を尋ねた。

「鋼牙様はお出かけですが、もう間もなくお帰りになると思いますよ」

「そっか」

この時間、彼が家にあまりいないことを、カオルは重々承知のはずだが、
習慣のようにいつも聞いてしまう。
そして、ゴンザの返事に少しだけ落胆するのがいつものことだった。
だが、すぐに明るい表情をつくる… これもまたいつものこと。

「ねっ、ゴンザさんも一緒にお茶しよう?」

ちょこんと首をかしげて、ゴンザに尋ねた。
きれいに巻かれた髪がくるんと揺れる。

「はい。
 先ほどスコーンが焼き上がりましたのでお出ししますね?」

ゴンザもカオルの調子に合わせて、朗らかに応える。

「わぁ、嬉しい!」

そんな会話を交わしていると、冴島邸の空気がどんどん明るく軽やかなものに
変わっていくのを、ゴンザは感じていた。

(カオル様のお陰で、この屋敷にも春が来たみたいですな…)

そう思いながら、ゴンザの顔にも自然と笑みが溢れる。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

リビングで、午後のお茶をサーブしながら、ゴンザはカオルに尋ねた。

「カオル様?
 今日はまた一段と楽しそうに見えるのですが、何かございましたかな?」

差し出されたお茶の香りを楽しんでいたカオルが、瞳をキラリと輝かせて
言った。

「えっ…
 ゴンザさん、わかる?」

「はい。
 とても、うきうきしているのが伝わってまいりますよ」

自分用に淹れた紅茶を前にして、ゴンザもソファーに腰掛けた。

「実はねぇ…」

…と、そのとき。
リビングのドアがガチャリと開き、鋼牙が入ってきた。

主の姿を認めたゴンザは、すぐさま立ち上がると、

「これは、気付きませんで…
 おかえりなさいませ」

と声をかけ、コートを受け取るために鋼牙に近づいた。

『なんだ、カオル… 来てたのか?』

鋼牙よりも先に、魔導輪のザルバが声をかける。

「うん、ついさっき来たとこ…

 おかえりなさい」

ザルバに答えながら、カオルはザルバと鋼牙をかわるがわる見た。

「あぁ」

素っ気なく返事をする鋼牙だったが、ここにいる者はみな、鋼牙の機嫌が
それほど悪くないことを感じ取っていた。
鋼牙の小さな感情の変化を敏感に(そして自然に)察知し、なによりも、
鋼牙自身が身構える必要を感じていない、家族同然の間柄だった。

ゴンザは、鋼牙のコートをコート掛けにかけてから、

「只今、お茶をお持ちします」

とリビングから出ていった。

『カオル…
 何やら、ゴンザと楽しそうに話していたようだったが、何の話だったんだ?』

鋼牙が、ひとり掛けの椅子に腰を落ち着けた途端、ザルバが聞いてきた。

「ゴンザさんがね、今日のあたしが楽しそうに見えるけど、何かあったか
 って言うから、それに答えようとしていたとこ…

 そこへ、ちょうど鋼牙たちが帰ってきたってわけ」

『ほぉ~
 で、何かあったのか? 楽しいことが…』

鋼牙にはしゃべらさずに、ザルバはカオルと話し続けた。
だが、そんな状況でも、特に鋼牙は構わないようだった。
ティーカップを手に戻ってきたゴンザから、温かく香りのよい湯気が
立ち上る紅茶を受け取ると、ふたりの会話に耳を傾けながら、冷えた
身体に紅茶をゆっくりと落とし込んでいた。

カオルは、ゴンザがソファーに落ち着くのを待ってから、ニヤニヤと
笑いながら一同を見回し、

「実はね… じゃ~ん!」

と自分で効果音をつけながら、手の甲をみんなに見せた。

「ほぉ~、これは…」

『なんだ? その爪は?』

「…」

3人がそれぞれの反応をした。
カオルの手は、いつもなら何の手入れもされず、絵の具の落とし忘れすら
あるようなものだったが、今日はきれいに整えられ、淡い桜色のネイルが
施されていた。
春霞を思わせるような上品なグラデーションに、薬指にだけ、桜の花が
美しく咲き誇っていた。

「なんだ って…
 これはね、ネイルって言うものよ。

 きれいでしょ~」

一瞬、ザルバの言葉に眉をしかめたカオルだったが、すぐに、自分の爪を
眺め、うっとりしながらそう言った。

「初めて近くで見ましたが、素晴らしいものですな。
 いや、これは…  ちょっとしたアートでございますね?」

感心したように言うゴンザの言葉に、

「そうでしょ?
 前から一度はしてみたかったんだけど、なかなかそんな贅沢は…

 でもね、今日は、思い切ってやってみたの!
 だって、久しぶりにこんなにいいお天気なんだもの…

 何日分かの食費が飛んでっちゃったけど、すごく満足してるんだぁ」

と、カオルは嬉しそうにニコニコして言った。

『やれやれ、天気がいいから散財したというのか?
 女の考えることはよく解らんな…』

ザルバが呆れたように呟いたが、気分のいいカオルはさらっと聞き流した。
そして、先ほどから何も言わない鋼牙に、指先を揃えて見せながら尋ねた。

「ねっ、きれいでしょ?」

すらりとした指の先に、艶々とした光沢の桜貝のような爪。
それをひととおり眺めてから、答えようとしてカオルの顔を見た鋼牙は、
少し言葉に詰まった。

今日のカオルはネイルがきれいに仕上がったからか、髪をきれいに巻き、
メイクもいつもより少し華やかにしたようだった。
なによりも、美しいネイルに心が浮き立ち、表情はいきいきと輝き、
春の陽光を身にまとったように美しくみえた。

「…そうだな」

言おうと思った言葉が飛んでしまい、鋼牙は、ようやく一言だけ言った。
一拍置いて聞けた言葉がそれだったので、カオルは少しがっかりした。

「そうだな って、それだけ?」

口をとがらせて恨めしそうに見るカオルに、鋼牙は取り繕おうと口を
開けかけた。
だが、それより先に、ザルバの笑いが漏れる。

『くっくっくっ…  安心しろ、カオル。
 鋼牙だってきれいだと思ってるさ。
 まぁ、きれいだと思っているのは、爪だけじゃないかもしれないがな…』

ザルバの何かを含むような物言いに、その場の者はみな鋼牙に視線を集めた。

(な? そういうことだろ?)
(他のきれいなものって何? 何なの?)
(鋼牙様も、今日のカオル様はおきれいだと思われたのですね?)

それぞれの視線が語るように注がれて、鋼牙は居心地が悪そうに言う。

「なんだ?」

カオルは、少しの間をおいて、クスクス笑い出した。

「ううん、なんでもない! ふふっ」

ゴンザも口元を抑え、笑いをかみ殺していた。

鋼牙ひとりだけが憮然としていた。
が、カオルたちの笑いが収まるのを待ってカオルに尋ねた。

「カオル、今夜は夕食を食べていくだろう?」

「えっ、いいの?」

カオルは、鋼牙に聞き返したあと、ゴンザの顔を覗き見た。

「カオル様さえよろしければ、こちらのほうは大丈夫でございますよ」

ゴンザはカオルに答えた後、鋼牙のほうにも視線を送った。
鋼牙はかすかにうなづいてから、さらにカオルに尋ねた。

「ところで、カオル。
 この後、少し付き合ってもらえないか?」

「えっ、いいけど… 何?」

「来ればわかる」

「…そう」

カオルは、どこに行くのか気になったが、鋼牙があまり答えたく
なさそうだったので、無理に聞くことをやめた。

カオルは、カップの底にわずかに残る紅茶を飲もうとカップに
手を伸ばしかけ、桜色のネイルに気付くと、自然と頬が緩んだ。
少しモヤモヤしていた気分が、癒されていくのを感じた。


to be continued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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