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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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最近の’お礼’

for you

前の妄想から、少し間が空いてしまいました。

実は、この妄想が少し長いからなんですが、長くなったとしても、多分これは
一気に読む方がいいと思ったので、少しずつ分けずに一気に公開しようと
頑張って書きました。

鋼牙とカオルと零の素敵なトライアングル
…になっているといいのですが。



::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

「ねぇ…」

そう呼びかけたきり、思い迷う素振りを見せながら、カオルが黙った。

ここは冴島邸のリビング。
それぞれバラバラに訪れたふたりが、この屋敷の主(あるじ)を待ちながら、
穏やかな午後の時間を過ごしているときだった。

「なぁに、カオルちゃん?」

絶妙なタイミングで零が続きを促す。
急かすわけでもなく、ゆったりと力を抜きながら、羽のような軽やかさで。

「零くんに相談があるんだけど… いい?」

決心がついたように顔をあげたが、それでもカオルは遠慮がちに聞いてみた。

「もちろんさ。 なんでもどうぞ」

少し手を広げて、ウェルカムの意思を態度で示す零。
こういうポーズも彼にかかれば様(さま)になってしまい、決して嫌味がない。




外出中だった鋼牙が帰宅してみると、出迎えたゴンザから、零とカオルが
来ていることを告げられた。
零は、ホラーを狩るために ’ゾーベルンの剣’ を借りたいということで
訪ねてきたらしい。

「鋼牙はもうじき帰って来るんだろ?
 だったら、ちょっと待たせてもらおうかな?」

そう言って待っていたところに、カオルがつい先ほど顔を見せたらしい。

「失礼して、わたくしは夕食の支度をいたします」

そう言うと、ゴンザはキッチンへと戻っていった。
鋼牙は、零とカオルが待つというリビングへと向かった。
リビングのドアノブに触れようとして、鋼牙はふと手を止めた。

中からは、カオルの切羽詰まったような声と、いつもの快活な零の声が
していた。




「あのね、あたし、レオくんにね… ’あげちゃおうかな’ って思ってる
 んだけど」




ドア越しに聞こえたカオルの言葉に、鋼牙は少し動揺した。




零は、ちらりとドアのほうに気を留めたが、フフンと薄い笑いを浮かべてから、
何事もなかったかのようにカオルと会話を続ける。

「あぁ、いいんじゃないかな。
 レオのやつ、きっと、すっげぇ~喜ぶと思うぜ」

「そうかな?
 レオくん、迷惑じゃないかな?」

「迷惑だなんて、そんなことはないさ」

「だって… あたしのなんて、そんな大したものじゃないし…」

カオルの声がだんだん小さくなる。

「かわいい女の子から ’あ・げ・る’ なんて言われたらさ、絶対、嬉しいに
 決まってるよ。
 レオだって、ああ見えて、’男’ だし。

 それに、カオルちゃんが自分で思うよりずっと、’大したもの’ だと
 思うけどなぁ~

 特に、このラインとかさ…  色っぽくない?
 それにこの質感…  なんか、たまんないんだけど。 

 俺は好きだなぁ」

「えっ? 零くん、ほんとにそう思う?」




ドアノブを握る鋼牙の手にぐっと力が入る。

『中に入らないのか、鋼牙?』

反応を楽しんでいることを隠そうともせずに、ザルバが声をかける。

「うるさい、黙ってろ!」

鋼牙は苛立たしげに小さく怒鳴り、ザルバを黙らせる。

(クククッ…)
 
声に出さずにザルバが嗤っているのが、左手に振動となって伝わる。
鋼牙は苦々しく思いながら、さらに一層、魔導輪を睨みつけた。




心配そうに覗きこむカオルに、零は優しく笑いかけて言った。

「だってさ、こんなにキレイなんだぜ?
 大丈夫だって。
 カオルちゃん、自信を持ちなよ!」

カオルにも少し笑みがこぼれた。

「嬉しい! 零くんにキレイって言ってもらえるなんて…
 あたし、なんだか自信が出てきた!

 これね、鋼牙にも、まだ見せてないの。
 零くんに見せたのが ’初めて’ なんだよ」

弾むようなカオルの声には、少し恥じらいも見え隠れしていた(…ように、
鋼牙には聞こえた)。

「へぇ~、そうなんだぁ…

 なんだか、レオに ’あ・げ・る’ のが、もったいなくなってきちゃった…
 カオルちゃんと俺だけの秘密にしちゃわない?」

悪戯っ子のような顔で、零がカオルに持ちかけた。




リビングの外にいる鋼牙の耳に、ゾクリとする艶っぽい零の声が
聞こえ、鋼牙の顔が、大きく歪んだ。
ザルバはニヤニヤしていたが、そんなザルバに気を回す余裕も
なかった。




リビングでは、調子に乗った零がカオルに甘い声で迫っていた。

「ねぇ、カオルちゃん、もっと見せてもらってもいいでしょ?」

「えっ、 …ちょっと恥ずかしいなぁ」

躊躇しているカオルの声が続いた。

「いいじゃん、もう少しだけ…

 もうじき、鋼牙も帰って来るんでしょ?
 鋼牙が帰って来ないうちにさ、ね?

 それまででいいから、俺に ’全部’ 見せてよ」

「えぇ~、どうしようかな…」

カオルは、まだ迷っている様子だったが、零は、強引に手を伸ばした。

「じゃあ、’全部’ じゃなくていいから、ちょっとだけ? ねっ?」

「あっ、だめだよ、零くん! そんな無理矢理…」




鋼牙は思わず、ドアノブを回そうとしたが、次に聞いたカオルの声に
驚き、動きが止まってしまった。




「んもう、わかったから!
 ちょっとだけ見せるから、零くんは手を出さないでよ? いい?」

渋々といったカオルの言葉の後に、「わかった、わかった」とか、「早く、早く」
とかいった零の言葉が続き、少しの間、沈黙があった。




ゾワゾワとした不快感を感じながらも、鋼牙は息を詰めて、中の様子を
窺(うかが)った。




沈黙を破って、リビングに零の感嘆の声が響いた。

「わぉ、カオルちゃん、すっげぇ、きれいだよ!
 いいじゃん、いいじゃん…
 ねぇ、もっとよく見せてよ」

「駄目だよ、零くん!
 これ以上は、ほんと駄目だから…
 あっ、あっ、いやぁ~ん」




嫌がるカオルの声が聞こえ、何か争うような気配を鋼牙は感じた。
そこへ、極めつけに

『零、いい加減にしなさい!
 そんなことしてたら、黄金騎士に殺されちゃうわよ!』

と零を咎(とが)めるようなシルヴァの声が聞こえた。
その声を聞いた途端、、反射的に鋼牙はドアを押し開けて、リビングに一歩
入っていった。




「!」

鋼牙の目には、零から身体を引き離そうとして、零の肩のあたりを突っぱねて
いるカオルと、薄笑いを浮かべている零の顔が同時に飛び込んできた。
鋼牙は、カオルの衣服が乱れていないことを確かめて、少しホッとした。

鋼牙に気付いたカオルは、

「あっ、鋼牙、お帰りな…」

と駆け寄ったが、鋼牙は、憤怒の形相をして

「お前は黙っていろ」

とカオルを黙らせた。
そして、カオルの腕を掴んで引き寄せると、零から庇(かば)うようにして、
カオルを自分の背に隠した。

そんな只事じゃない緊迫感を孕んだ鋼牙を前にしても、零は涼しい顔で
鋼牙を迎えた。

「やぁ、鋼牙、お邪魔してるよ!」

鋼牙は、ホラーでさえも立ちすくむような殺気を漂わせて言った。

「お前に話がある。
 ちょっと来い!」

「いいよ!

 でも、その前に…」

零は、鋼牙の背に隠されてしまったカオルを覗き込むようにしてから言った。

「カオルちゃん、スケッチ見せてもらって、ありがとね。
 あと… 他のスケッチを無理に見ようとしてごめんね」

ニコニコと屈託ない様子で言う零に、カオルも

「あ、ううん、大丈夫だよ。
 ちょっとびっくりしただけだから」

と、鋼牙の背中からぴょこんと顔を覗かせて答えた。



ふたりの会話を聞いて、途端に、鋼牙は怪訝な表情を浮かべた。
そんな鋼牙に、ザルバが声をかけた。

『うまく零にハメられたな、鋼牙』

鋼牙は、先程よりも幾分、殺傷能力が低くなった殺気を零に向けた。

「では、レオに ’あげる’ というのは?」

少しニヤニヤしながら、零が答えた。

「カオルちゃんが描いたレオの絵さ…  決まってるだろ?」

その答えを聞いて愕然としている鋼牙に対して、零は説明をしてやった。

「お前が、何をどう聞いたか知んないけど…

 カオルちゃんのスケッチを見てたら、カオルちゃんがレオに絵を
 贈りたいって言うからさ。
 きれいに描けてるから、いいじゃん! って言っただけ。

 いい機会だからもっと他のも見たいと思って、無理矢理見ようと
 しちゃったんだけど、そこへ鋼牙が入ってきた… ってわけ。

 解った?」

それを聞いても、まだ半信半疑の鋼牙は、カオルに「本当なのか?」と
いうように視線を向けた。

「本当だよ。
 出来がいまいちなのもあるから、全部を見せるのは恥ずかしかったの。

 ん? ね、鋼牙どうしたの?」

カオルは、頭を抱えてしまった鋼牙を見て、不思議そうに覗き込んだ。
そんな様子を、零は腕を組みながら、楽しそうに眺めていた。
が、すぐに何かを思い出したらしく、零は口を開いた。

「あっ、そうだ。
 俺、今日は、これを借りに来たんだよ」

そう言うと、コートの胸のところを開き、 ’ゾーベルンの剣’ という
細身の短剣を鋼牙にちらりと見せた。

「借りるだけ借りて黙って帰るわけにもいかないしさ、鋼牙が帰るのを
 待ってたんだけど…

 まっ、そういうわけで、用事も済んだから、俺、帰るわ!」

そう言い終わらないうちに、零はリビングのドアへと向かった。
そして、戸口で振り返ると、まるで天使のように邪気のない笑顔を見せて
言った。

「それじゃ、鋼牙、カオルちゃん、またね!」




零が出ていくと、鋼牙は一番手近なソファに身体を埋(うず)めた。
そんな鋼牙の足元にひざまずき、カオルは心配そうに尋ねる。

「鋼牙、大丈夫?
 疲れちゃったの?」

鋼牙は、ゆっくりとカオルの顔を見ると、ふっと柔らかい表情になった。

「カオル。
 レオに ’あげる’ のも 零に ’見せる’ のも、やめ…

 …いや、なんでもない」

首を振った鋼牙が、再びカオルを見る。

「なに? なんか、今日の鋼牙、変じゃない?
 ねっ、どうしたの?」

訳の判らないカオルがなおも聞く。
鋼牙は、そんなカオルを優しく引き寄せて抱きしめると、カオルの耳元で
言った。

「なんでもない…」


to be continued(おまけへ)
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


「for you」という小洒落たタイトルを付けちゃいましたが、まぁ、なんの
ことはない、鋼牙の勘違いの妄想でした。

途中からお気づきの方も(いや、最初から気付いていた方も)いたかも
しれません。
でも、少しはニヤニヤできましたか?

ドア1枚隔てて、ウチとソトの空気の違いが描けていたらいいのですが、
あとはみなさんの脳内補完にかかっています。
せいぜい、妄想を膨らませてくださいませ!



少し前から、鋼牙が焼き餅をやいたら面白いかな? とぼんやり考えていたの
ですが、そんなときに

「鋼牙が旅立った後の残された人達の個々のドラマが見たい」
「カオルちゃんと零君主演で」
「流石に鋼牙も相手が零君なら余裕ぶっこいてはいられまい」
「(零くんが)どうして俺じゃないの?ぐらいのちょっとサスペンスな」
「鋼牙には内緒だよ?って零君がカオルちゃんに口止めして」

と、コメントいただいたのです。
それで、妄想が加速www

諸々、いただいたコメントとは設定がいろいろ違うのですが、ニュアンスは
近いかなぁ~ などと勝手に思っています。(いかがでしょうか、心太様?)

拍手[32回]

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無題
こんばんは、for youカオルと零の関係と誤解と招くやり取りうふふ、いいですねいいよ 鋼牙の嫉妬心がもやもや、こういうたぐいの展開には零君最高、去りぎはもホント、最高、鋼牙のなんとも情けない心情が零には分かりカオルには、?・・?そこがまたいいですね、ついこの間パチンコのイベントの鋼牙と零をtou
で見ましたが、黒と白の衣装でしたが、牙狼の衣装ではなかった、やはり冴島鋼牙は卒業改め複雑パチンコ行こうかなでも、一度もしたこと無い。
かなまま 2013/04/15(Mon)21:02:43 編集
Re:無題
おニュ~なパソコンからのコメントでしょうか?
ありがとうございます!

鋼牙がヤキモキしそうなのを知ってて、零くんがしかけていますけど、この一番の原因は、すっとぼけたカオルちゃんに他ならないと思いますよ❤
鋼牙が剣を抜く前にいかにスマートに零を退場させるか、に苦労したので、かなまま様に「去り際」を褒めてもらって嬉しいです!!

CR(パチ)にも、とうとう「Final」の文字がついてしまったので、最後なんだな~ としみじみ…
(いやいや、本心では「最後」だなんて思ってないですからね! と強がる)
ものすごい高性能な台みたいですから、かなまま様、翻弄されているうちにあっという間におしまい… となるかもデスヨ!
お気を付けくださいませ~

【2013/04/16 18:46】
鋼牙はヤキモチ
…しそうですよね。しかも勘違い発信で。
相手が零くんともなれば、もう冷静ではいられない感じになるのも、何か有り得そうです。
鋼牙がそうなるのを、解ってやってる零くん。人が悪いと言うか、そこが零くんらしいと言うのか。
三人でジャレ合う感じの内容が、素敵でした!

あ、魔戒騎士の収入源。ナルホドです。
鋼牙(これまでの冴島家の人々)があの豪邸に住めてるのも、最強騎士・牙狼の系譜だからこそ…なのですね。納得です。

そして、Selfish 様ぁぁッッ!!
大ッ変、長らくお待たせ致しました。
「いつ書くの?今でしょ?」の、リクエスト作。ようやく Up する事が出来ましたッ!!
是非、ご一読下さいませな。…って、あんまりお待たせし過ぎて、忘れ去られてたりするパターンかもですね。
ともかく、お待ちしてまぁ~す!
URL 2013/04/16(Tue)13:12:46 編集
Re:鋼牙はヤキモチ
今さらなことが疑問になるのですが、零くんがカオルちゃんを追い払うためにキスしようとしたことを、鋼牙さんは知っていたのでしょうか?
(あの、泣いて帰ってきた日…)
それを知っていたと捉えるか、知らないままだと捉えるかで、鋼牙の心情も変わるでしょうね?

魔戒騎士の収入源www
芽様、納得しないでください~~~
歩合制な魔戒騎士なんて、イヤじゃないですか? (苦笑)
鋼牙さんに関しては、なんだか特別な収入源がある設定らしいんですよね?
まぁ、お金の匂いがあまりしないほうが、カッコいいから、深くは追及しないでおきましょう。 (笑)

そして、芽様ぁぁッッ!!
書けたのですねっ!
かならずや、お伺いすることを約束します!
(でも、少しだけ、猶予をくださいね…)
【2013/04/16 18:58】
天使と小悪魔
カオルちゃんが天然天使で小悪魔が零くんですね!ドアの向こうでもう鋼牙の拳が震えてそうですw零くんの笑顔って時々すごく無邪気で、時々すごく悪魔ですよね~。
くわい 2013/04/18(Thu)19:41:49 編集
Re:天使と小悪魔
天使にも悪魔にも弄ばれる鋼牙さんって、なんだかとっても気の毒…
(と言いつつ、ニヤニヤしていたりします。 ふっふっふっ)

零くん役が玲くんで、ほんとによかったです…
鋼牙にメラメラする熱い一面も、カオルちゃんにすり寄る無垢さとしたたかさの両面を持ち合わせた絶妙なアンバランスさも、玲くんじゃなきゃ出せなかったものですよね?
いや~、実にイイ!
【2013/04/18 21:47】
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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