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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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L'Oiseau bleu(9)

この妄想の発端は、
「好意を持つ少女のために、たどたどしく手話をするレイを書いてみたい!」
と、それだけの思いつきでした。
たったそれだけだったはずが、気ままにダラダラ書き過ぎて、気付いたときには
もう9話目! (長っ…)

それでも、もし、まだ飽きていないようでしたら、あなたが眠りに就く前の
ほんの少しの時間、牙狼メルヘンでお楽しみくださいませ。




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シャロンの声を返せと息巻くレイ。
そんな彼を相手にしても、魔女は一向に動じません。

魔女にいいようにあしらわれているようで、レイは苦虫を噛み潰したような
顔です。
それでも、相手の実力と真意が判らないうちは、先に手を出すのは得策では
ないと考え、魔女の出方を待ちます。

魔女はそんなレイの考えを知ってか知らずか、さっさと自分の聞きたいことを
尋ねました。

「あなた、この湖に入ったわね?」

非難するような目で、魔女が見ます。

「あぁ。
 ちょっと、身体中が臭くてたまらなかったんでね」

硬い表情のまま、レイが言いました。

「その汚い身体を、わたしのお気に入りのこの湖で洗ったというのね?」

魔女は鼻に皺を寄せて、不快感を露わにしました。

「あんたのお気に入りの場所だったって?
 そいつは悪いことをした。 知らなかったんでね…

 確かに、こんな綺麗な水を汚すのは俺としても不本意だったが、どうにも
 あの匂いには我慢できなかったんだよ」

少し言い訳めいた感じでレイは言いました。

「あなたのその匂い… ガウラの匂いかしら?」

「ガウラ?
 …あぁ、あの化け物のこと?

 そいつがいきなり襲ってきたんでね、ちょいと相手をしてやったんだが…
 とにか、ひどい目にあったよ。

 まさか、あいつもあんたのお気に入り、ってわけじゃないだろうな?」

レイは半分冗談のつもりで尋ねました。

「まさか!
 あんな醜いもの、わたしが気に入るわけないじゃない。
 この森からさっさと追い出したいくらいだったわよ。

 でもね、あの匂いでしょ?
 直接あいつと会ってどうこうするなんて、考えたくもない!
 だから、そのまま放っておいたのよ」

ガウラのことを話しているうちに、匂いまで思い出したのか、魔女は
しかめ面をしました。

「なぁんだ。
 じゃあ、俺が始末してちょうどよかったってことか」

何気なく言ったレイの言葉に、魔女は眉を片方だけあげました。

「あなたがあの厄介者を倒してくれた、ですって?
 それは、嬉しい知らせだわ」

魔女は嬉しそうに笑うと、

「…いいでしょう。 この湖に無断で入ったことは許してあげるわ」

と、鷹揚に言いました。

「そいつは、どうも…

 …じゃあさ、そろそろ、俺の質問にもちゃんと答えてくれてもいいんじゃ
 ない?」

レイは飄々とした口調でそう言うと、次の瞬間には、低くトーンを落として
言いました。

「あんたがシャロンの声を奪ったのか?
 だとしたら、その声、返してもらおうか」

手にはいつでも抜けるように剣を握りしめ、隙のない態勢で魔女をじっと
睨みます。
魔女は、ふふん、と薄く笑ってから、落ち着き払って言いました。

「… あぁ、そうそう、シャロンって娘のことね。

 確かに、そういう名の少女が、以前、この西の森に迷い込んだことが
 あったわ。
 そのときは、別になんとも思わずに放っておこうと思ったのよ。

 この森には、あなたが倒してくれた、ガウラという怪物がいるわ。
 このままこの娘を放っておいたら、やがて、泣きだし、じきにガウラの
 餌食になる…

 でもね、その娘の瞳の色がとっても素敵だったから、名前を尋ねたわ。

   シャロン…

 ヘブライ語で ’森’ っていう意味よね?

 彼女の瞳の色とその名前のせいで、あたしは気まぐれを起こしたのよ。
 この娘の声を奪ってしまえば、ガウラの餌にならないかもしれない、
 ってね。

 別にね、わたしにとってはどちらでもよかったのよ。
 その娘が助かっても助からなくても。
 ほんとに、ただの 気・ま・ぐ・れ。

 でも、あなたのその口ぶりじゃ、その娘は助かって無事にこの森を
 出たようね。
 それはそれで、よかったんじゃない?

 …どう? あなたが聞きたいのはこういう話?」

魔女はそう言うと、レイの相手をするのに飽きたらしく、小さく欠伸を
しました。

レイは、魔女の話に驚きました。
シャロンの声を奪ったのは確かに魔女でしたが、そのことは、結果的に、
彼女をガウラから守ったことになっていたからです。

「…話はわかった。
 では、彼女の声はどうやったら元に戻るんだ?
 その方法を教えてくれないか?」

レイは、それまでの険しい顔を少し緩めて、重ねて問いました。
そのレイの問いに、魔女はおかしそうに笑いました。

「声を戻す方法ですって? ふふふ…」

そして、少し意地悪そうに、こう言いました。

「魔女の呪いを解く方法といったら、今も昔もひとつきりしかないでしょう?
 あなた、そんなことも知らないの?」

レイは怪訝な顔をして、問い返しました。

「ひとつきり?」

「そっ、それしかないわ。

 さて…
 あなたの用は済んだみたいだし、あたしはもう行くわ。

 それじゃね」

魔女は手をひらひらさせて別れの挨拶をすると、天を指差すように立てた
人指し指で宙にくるりと小さな円を描きました。

どこから起こったのか、つむじ風のような風が巻き起こり、魔女の身体を
包みこみました。

今にも消えてしまいそうな魔女に、レイは慌てて叫びました。

「おい、待てよ。
 名前… あんたの名前ぐらい、教えてくれよ」

風の中で魔女は妖艶に微笑むと、艶っぽい声で言いました。

「わたしは、ヴァルーシ。

 レイ…  シャロンと仲良く… おやんな… さ… い…」

その言葉が終わるか終わらないうちに、目の前のつむじ風は、レイの目の前で
霧散してしまいました。
レイは、どこへともなく消えた魔女の気配を探すように周囲を見渡しましたが、
どうやら、ほんとに魔女は帰っていったようでした。

ようやく、剣の柄から手を離し、先ほどまで寝そべっていた岩にペタリと
腰を下ろしました。

「ひとつきりの方法… か」

レイは呟くと、美しい湖の上に広がる、広くて青い空を仰ぎ見ました。


どのくらいそうしていたでしょう。
いつの間にか、太陽がずいぶん西よりの位置に移動していました。
レイは、疲れた身体を引きずるようにして、湖のそばを後にしました。

なんとか日暮れ前に西の森を出ることができ、数羽の鳥が森に帰っていくのを
見送るような恰好で、レイはくるりと森を振り返りました。

闇に沈もうとしている空をバックに、早くも黒々と闇に沈んだ森が見えました。

レイは何を言うわけでもなく、フッと笑みを浮かべてから、サエジーマ国へと
歩き始めました。



to be continued(10へ)
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拍手[16回]

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たった一つの方法
って、お姫様の呪いをとくには王子様のキスでしょうか?
なんでしょう、とっても気になります。*^^*
Mie 2013/07/18(Thu)22:59:32 編集
Re:たった一つの方法
そうそう、ここは、コーガ王子がシャロンにチュ~♥ って!
…ダメですよね? (笑)
【2013/07/19 22:46】
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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