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きんのまなざし ぎんのささやき

L'Oiseau bleu(10)

いよいよ大詰め!

’ひとつきりの方法’ とは何か?
やっぱり、アレでしょうか? (ニヤニヤ)

ここでのらりくらりと時間を食っていると、よいこのみんなは、眠たくなって
しまいますね。
さあさ、メルヘンの時間の始まりですよぉ~





::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

レイが ’用事’ のために城を出た日。
その日一日、シャロンはぼんやりとして過ごしました。


思い出すのは、あの舞踏会の夜。
大きなシャンデリアが輝くお城の大広間。
きらびやかに着飾った人たち。
優雅な音楽に合わせて軽やかに踊られるダンス。
さざめきのような笑いとお喋り。

フロアの隅っこにいたシャロンは、見るモノ聞くモノすべてに興奮して
いました。
誰からもダンスを誘われない、なんてこと、どうでもいいくらいでした。


そして、舞踏会最後の曲…
誘われるなんて夢にも思っていなかったのに、生まれて初めて誘われた
ダンスの相手は、城中の女の子の憧れの人、レイでした。
城の庭から出ないようなシャロンでも、もちろん、レイのことは知って
います。

優しく誘うレイに勇気をもらい、差し出された手に自分の手を預けました。
それからあとは、めくるめくような時間!
踊っている間、シャロンは、それこそ天にも昇る気持ちでした。

でも、最後の曲が終わったとき。
シャロンは夢から覚めたような思いがしました。
なんだか急に、この場にいることが自分には相応しくないように思えて、
レイの前から逃げ出すように駆け出しました。


舞踏会の夜から、そのまま何日か過ぎ、

(あれは、ほんとに夢だったのかもしれない…)

そう思い始め、それでも十分しあわせに感じていたシャロン。

でも、そんな彼女の前に、突然… ほんとうに何の前触れもなく、再びレイが
姿を現わしたのです。
夕闇に沈もうとしている美しい庭で、優しく笑いかけるレイ…

(夢がまた始まったの?)

それがシャロンの正直な気持ちでした。
その夢は、次の日も、そのまた次の日も続きます。

シャロンを楽しませようと、いろいろな話を聞かせてくれるレイ。
シャロンを喜ばせようと、おいしいお菓子を持ってきてくれるレイ。

そんな特別なことでなくても、レイが野の花を摘んで、微笑みながら、はい、と
差し出してくれる… ただそれだけで、もう、シャロンは喜びで胸がいっぱいに
なりました。

あまりにもしあわせなのが怖くて、レイから遠ざかった方が自分のためだと
考えたこともありました。


でも、今日になって、シャロンは気づくのでした。
レイが城を留守にして、まだ一日しか経っていないというのに、こんなにも
何も手につかなくなるくらい気落ちしている自分自身に。

(レイ…)



長い一日が終わり、ベッドに潜り込んだ今も、シャロンはレイのことを考え、
理由もなく胸が苦しく感じられ、泣きたい気持ちになっています。

(神様、どうかレイが無事に… そして、早く帰ってきますように…)

シャロンは静かに十字を切ると、いつまでもいつまでも祈りました。




次の日の朝。
いえ、日はまだ昇っていません。
まだ明けきらない暗いうちに、シャロンはふと目を覚ましました。

(まだ朝じゃないのね)

そう思い、再び眠りにつこうとしたそのとき…
シャロンの部屋の窓に

  コツン…

と何かが当たりました。

(… なに?)

シャロンは、いぶかしみながら、窓のそばへと近づきます。

薄暗い中を目を凝らしてよく見ます。
すると、そこには、レイが立っていました!

シャロンは慌てて施錠を外し、窓を大きく開け放ちました。
少し冷たい外気が、さっと部屋の中に流れ込みます。

「やぁ、シャロン。
 今、帰ったよ」

辺りを気遣うように、できるだけ声をひそめて、レイが言いました。
シャロンは驚いたように大きく息を飲み、その口に手を当てました。

「ごめんね、こんな時間に…
 でも、早く会いたくてさ。
 夜通し歩いてきたんだ」

よく見ると、レイは夜露に濡れ、ずいぶんくたびれたナリをしているように
見えました。
シャロンはすぐに窓のそばを離れると、ブルーのカーディガンを手に取ると、
それに腕を通しながら、できるだけ素早く、そして静かに階下へと降りて
いきました。

玄関のドアを開けて外に出ると、レイのところまで駆けて行きました。
レイの前で立ち止まったシャロンに向かい、レイは

「ただいま、シャロン」

と言いました。
シャロンは、手で ’おかえり’ と表しました。
それは万感の想いを込めたように、力強くしっかりと形づくられました。


「実はね…」

そう切り出して、レイは、昨日どこに何をしにいっていたのかを手短に、
シャロンに話して聞かせました。

「…というわけで、シャロン、君の声を取り戻すことができそうなんだ。
 どう、すごいだろ?」

レイは、シャロンの反応を確かめるように覗き込みました。
シャロンは、まさか、自分のためにレイがそんな危険なことをしに出かけて
いたとは知らなかったため、ひどく気が動転していました。

「あれっ? 嬉しくないの?」

シャロンの様子に、レイは少し不安そうに尋ねました。
シャロンは、懸命に首を振ります。

(違うの、レイ!
 あたしは… あたしは…)

話せないことが、こんなにもどかしいことだったなんて、と、シャロンは、
ずいぶん久し振りに思いました。
動揺しているシャロンの様子を勘違いして、レイはこう言いました。

「あぁ、うん… 問題は、その… 誰がそれをシャロンにするか、だよね?

 俺でよければいつだって協力するけど。
 …いや、もちろん、シャロンが嫌なら無理にとは言わないさ。

 まぁ、とにかく、そういうことなんで、君の声は今にきっと取り戻せる
 んだよ」

レイは、シャロンを安心させるように、優しく言いました。
そして、急に慌てると、

「あっ、ごめん!
 俺、ちょっと匂わない?
 それに、ヒゲも剃ってないし…
 あぁ、なんか、恥ずかしぃ~

 声を取り戻す方法を君に伝えさえすれば、俺の用事はおしまいだ。

 夜が明けるにはもう少し時間があるから、部屋に戻って休みなよ。
 ごめんね、呼び出したりしてさ」

そう言うと、レイは、じゃあね、と手をあげて、城の方へ帰っていこうと
しました。
そのレイの腕にシャロンはすがりつきました。

(レイ…)

「えっ?」

驚いた顔のレイが振り返ります。
シャロンは、レイの瞳をまっすぐに見ます。

「シャロン?」

レイもシャロンの視線をしっかり受け止めます。

「…」

やがて、ふたりの影がひとつに重なりました。
それは、ほんとにごく一瞬の出来事でした。

「シャロン…」

このうえなく優しく、甘く、レイが彼女の名を呼びます。
シャロンの艶やかな唇が、少し開き、小刻みに震えます。

彼女の言葉は、まだ声になりません。

レイは、静かに彼女を抱き締めます。

「シャロン、大丈夫だよ。
 絶対に君の声は戻ってくるから。
 焦らなくっていいんだ」

そして、身体を少し離すと、シャロンを見つめて言いました。

「ごめん、シャロン。
 もう一度…」

レイは、ゆっくりとシャロンに顔を近づけました。
そして、今度は少し長く、彼女の唇の感触と温度をゆっくりと味わいました。

レイがようやくシャロンの唇を解放したとき、シャロンの口から、ほぉ、と
吐息が漏れました。
うっすらピンクに染まる頬のシャロンは、レイの目にそれはもう愛らしく
映りました。


「シャロン… 君が好きだ」

何の気負いもなく、正直な気持ちがレイの口からこぼれました。

「……
 レ… イ…」


レイは、驚きで目を見開きました。

「シャロン?
 今の、シャロンだよね?

 やった!
 シャロンの声が聞けた!」

「… あ… うぅ…」

シャロンは、もう一度声を出そうとしましたが、あまりうまく出せません。
喜んでいたレイは、すぐに、気遣うように、

「シャロン、無理しなくていいんだよ。
 なぁに、すぐに慣れるさ。
 ゆっくり… ゆっくりでいいから」

と言いました。
シャロンは嬉しそうにうなずくと、自分から、レイの腕の中に飛び込みました。
声を出せると判って、シャロンのレイに対する気持ちも行動となって表に
出てきたようです。

レイは驚きながらも、シャロンをぎゅっと抱きしめました。
そして、しみじみとこう思いました。

(あぁ、ようやく、つかまえたんだ。
 俺のしあわせの青い鳥…)






その頃、西の森では…
魔女、ヴァルーシが呟いていました。

「あの男… 今頃、うまくやってるのかしら?」

そして、突然、フフフと笑い出したかと思うと、こう続けました。

「魔女の呪いですって? あぁ~、可笑しい!

 あんな気まぐれでかけた魔法に、呪いというほど長く強い効力はないって
 こと、気付かないのかしら?

 ’ひとつきりの方法’ なんか試さなくても、あの娘に喋ろうとする気力さえ
 あれば、1週間も経たずに喋ることができたはずだけどねぇ」

そう言って、ひとしきり嗤った後、ヴァルーシはすました顔で言いました。

「まぁね、どうなろうと、わたしの知ったことではないわ。

 あとは、そう、あなた次第よ、レイ」




fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


さぁ、お話はこれでおしまい!
よいこのみんな、おやすみなさ~い!



あっ、そうそう、タイトルの「L'Oiseau bleu」(ロワゾブルー)について、
少しだけ…
これは、フランス語で「青い鳥」の意味です。
レイの青い鳥を探す旅(ん? 旅なのか?)というイメージでつけてみました。

作者のメーテルリンクはベルギーの人で、ベルギーはフランス語やオランダ語を
話すらしいです。
そこまで知ったらさ、やっぱりさ、フランス語だよね?

…というわけで、3話目で、シャロンと再会したときには、青いワンピースを、
西の森から帰ってきたときには、青いカーディガンを着せてみました。



さて、さて、零くんの青い鳥は、一体どこにいるんでしょうねぇ?

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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