忍者ブログ

きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

最近の’妄想’
2025/12/31 ・・・ ようこそ
2023/12/24 ・・・ 金牙新年!
2023/12/03 ・・・ 冬ごもり大作戦(2)
2023/11/19 ・・・ 冬ごもり大作戦(1)
2023/10/15 ・・・ とある秋の日
2023/08/06 ・・・ いちばんの存在(6)
2023/07/30 ・・・ いちばんの存在(5)
2023/07/09 ・・・ いちばんの存在(4)
2023/07/02 ・・・ いちばんの存在(3)
最近の’お礼’

面影を追ってみたら(2)

春はとっても眠たいですね。
週末、なんとしてもアップしようと思ったのに挫折…

今宵は少しだけですが、とにかくできたところまで!




::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

カオルは仕事をするうえで便利なように、市内にアパートを借りている。

これまでは制作活動だけでなく、生活の拠点もずっとそっちにあったのだが、
最近になって、再びこの屋敷に戻り、鋼牙やゴンザとともに暮らすように
なっていた。

市内のアパートから、郊外にある冴島の屋敷に引っ込んでしまうことが
できたのは、カオルの仕事が徐々に軌道に乗って来たからでもある。
もちろん、もっと仕事でいい成果を上げたい気持ちはあるので、本当なら、
市内のアパートにいて精力的に活動していくほうがいいに違いない。
御月カオルという名前が絵本画家として世間に出たことを足掛かりに、
いい作品をたくさん描いて、画家としての成功を確固たるものにするのが、
カオルの夢を実現するには一番だ。

だが、カオルはそれ以上に思うところがあった。
仕事はもちろん大事だ。
だけど、鋼牙のそばにいたいという気持ちが、それよりもずっと大きく
強くなったことに気付き、その気持ちを大事にしたいと思ったのだった。

鋼牙は常に危険とは隣り合わせの身だ。
魔戒騎士としての彼の生き方は、時に不器用にも見えるものだったが、
我が身を削っても人間を守ろうとする信念は揺るぎがなく、そんな
鋼牙の生き方を、カオルは誰よりもそばにいて見ていたかった。

カオルが屋敷に戻ってきたことで、鋼牙のほうは精神的に安定した。
カオルが一緒に暮らしていようがいまいが、鋼牙の強さに違いは
ないかもしれないが、’ホラーさえ倒せればあとはどうでもいい’ と
いう以前のような無謀さが無くなったことについては大きな意味が
あった。
’必ず生きて帰る’ という信念を持つことで、これまで以上に冷静に
戦況を見つめ、余裕のある闘いぶりになっていた。
まさに、魔界騎士の最高位、黄金騎士牙狼にふさわしい闘いぶりだ。

とはいえ、人間の欲望に限りがなく、陰我の消える日がないことも
事実であり、残忍で凶悪なホラーは後を絶たず、その闘いの中で
いつ果てるかわからない状況には少しも変わりなかった。




そんなわけで、カオルは仕事に影響が出ることを承知しながら、
鋼牙のそばにいることを選んだのだが、鋼牙自身はこれまで以上に
仕事に打ち込んでいく結果となった。
カオル自身がそれを望んでいたことではあったが、時折、それが
ちょっとばかり面白くないように感じることもあった。

もちろん、カオルは鋼牙を独り占めしたいわけではない。
仕事よりも鋼牙のそばにいることを選んだのは、誰に強要された
わけでもないし、自分が決めたことだともわかっている。

でも… それでも。
仕事がうまくいかないときには、やっぱり、心のどこかで何かが
引っかかるときだってある。

そんなときだ。
仕事に出掛けたはずの鋼牙が、公園で見知らぬ女性を優しい顔で
見つめているのを見た。
カオルは、なんだか無性にやるせなさを感じたのだ。

そしてその夜のこと。
いつもと違って緊張感のある夕食が終わろうとしたとき、デザートに
手を伸ばそうとしたカオルが、なんだか余裕な様子でこちらを見ている
鋼牙に気がついた。
それを見た途端、カッとしたカオルは思わず口走っていた。

「何ニヤニヤしてるの?
 何かおかしなことでもあるっ?」


そんなトゲトゲしい言葉にも、鋼牙は怒り出すことなく言った。

「気に障ったのなら謝る。
 すまない…」

「…」

素直に頭を下げる鋼牙に少し鼻白んだカオルは、鋼牙を無言で
睨んでから、ぷいと横を向いた。

「何をそんなに怒っているんだ?」

鋼牙の声はどこまでも優しかった。
でも、カオルはその声に答えることができない。
しばらくの沈黙の後、鋼牙は話し出した。

「今、思っていたのだ。
 カオル、お前と出会ってから、自分自身がとても変わった、とな」

それを聞いて、カオルは鋼牙のほうに顔を向けた。

「以前の俺は、月を眺めることも花を愛でることなかった。
 屋敷に帰るのも、ただ食べるため、寝るために帰ってきていたような
 ものだ。

 ホラーを狩る、それだけの毎日だった。

 それが今では…」

鋼牙の眼が一層優しくカオルを見た。
その視線に固くすぼんでいたカオルの心が、少し緩んだ。


「…今日ね…」

カオルは思い切って口を開いた。
それを、

「ん?」

と鋼牙は促す。

「今日の午後、公園で鋼牙を見かけたの…」

カオルは小さな声でそう言った。



to be continued(3へ)
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

拍手[27回]

コメント
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



hitori 様[07/08]
tomy 様[07/27]
麗羽 様[08/23]
夕月 様[12/22]
夕月 様[07/15]
こちらから selfish 宛にメールが送れます。
(メールアドレス欄は入力しなくてもOK!)

PR
忍者ブログ [PR]
Template by repe