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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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面影を追ってみたら(1)

何ということもないのですが、久しぶりに鋼カオを書こう!

…こんなユルい感じで書き始めていいのかな?


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(あっ、鋼牙!)

カオルがしばしば訪れる公園にはいくつもの彫刻作品が点在している。
よく晴れた日の昼食後、散歩がてらスケッチでもしに行こうかと
思いたったカオルは、公園の中で冴島鋼牙の姿を見つけた。
今日もいつものように、オブジェの浄化に出かけて行った鋼牙
だったが、どうやらこの近くで仕事をしていたようだ。



(こんなところで会えるなんて…)

この嬉しい偶然を、カオルは素直に喜んだ。
鋼牙に声をかけ、走り寄ろうとした… だが、カオルはすぐに足を
止めた。

「…」

カオルの顔が怪訝そうに曇る。

カオルの10m程先にいる鋼牙は、カオルに背中を見せていた。
いや、正確には、左斜め後ろという感じで、カオルからは鋼牙の
横顔が微かに見えた。
その鋼牙は、どうやら何かに心奪われたように眺めている様子だった
のだ。


(いったい何を見てるんだろう?)

そう思ったカオルは、鋼牙に気付かれないように鋼牙の視線の先を
たどってみた。

すると、そこには、ベンチに座ってお喋りしているふたりの若い女性が
いた。
ひとりはさらさらとした髪の長い女性で、もう一方はショートヘアの
とてもよく似合う女性だった。
もちろん、そのどちらの女性も、カオルの見知った顔ではない。

カオルの場所からはずいぶん距離があるため、何を話しているのか
まったく聞こえなかったが、彼女たちの表情からは楽しげな雰囲気が
伝わってくる。


一瞬、カオルの頭の中に、そのどちらかの女性がホラーなのかも
しれない、という考えが浮かんだ。
だが、彼女たちを眺めている鋼牙の表情を見ると、そんな考えは
すぐに消えてしまった。
なぜなら、鋼牙は彼女たちをとても穏やかな表情で眺めていたからだ。
そう、とても愛おしい者でも眺めるような優しい顔…


 チクッ

カオルの心を鋭い何かが差した。
その痛みが何なのか、と問われたら、思い当たるのは… 嫉妬… か。


(やだな、もう。
 そんなんじゃないよ…)

カオルは、胸に沸き起こった疑惑を無理矢理打ち消そうとしてみた。


(でも…)

カオルは鋼牙を見た。
鋼牙が彼女たち… 特に髪の長い女性のほうに向けている視線は、
なんでもないとすんなり見過ごすことができないほど、優しさと
愛しさが溢れているように見えた。


しばらく、鋼牙の姿をじっと見ていたカオルは、思いつめた顔で
唇を噛みしめ、その場から遠ざかった。




数時間後、仕事を終えた鋼牙が北の屋敷に戻ったとき、ゴンザの
口から気になる言葉を聞くことになる。

「鋼牙様。
 カオル様の様子が少しおかしいのです…」

「おかしい、というのは?」

「はい。
 昼食後に、スケッチでもしてくる、と言ってお出かけになったの
 ですが、すぐにお帰りになられて…

 何やら思いつめたご様子で、それきり部屋に閉じこもっておられます」

いつもなら、午後のひとときは、ゴンザとお茶を飲みながらおしゃべりを
楽しんだりするのに、この日のカオルは

「ごめんね。
 ちょっと急いで描きたいものがあって…」

と、ゴンザからのお茶の誘いを断っていた。
そのときの、目を合わせようとしないカオルの様子が、ゴンザには
気がかりだった。


「そうか…」

そう返事をしたきり何も言わない鋼牙だったが、ゴンザもそれ以上は
何も言わず、あとのことを鋼牙に任せることにした。




夕食になってようやく姿を見せたカオルは、普段と変わらないように
努めていたが、その固い笑顔をひとめ見て、即座に鋼牙もゴンザも
カオルの異常を確信した。


食事は静かに進んでいった。


肉料理が終わり、鋼牙にはコーヒー、カオルには赤ワインのジュレに
イチゴのスムージーを乗せた春らしいデザートが出された。



「どうした?
 今日は少し元気がないようだが…」

コーヒーを一口、口にすると、鋼牙は静かな調子でカオルに声を
かけた。
その言葉を機に、ゴンザはすっと姿を消した。
ふたりで話がしやすいようにという気遣いからだ。


「そんなこと…」

カオルは少し俯き、答えに困る様子を見せる。


「…」

鋼牙は黙ったままコーヒーを飲み、カオルが何か話し出すのを待った。
いや、仮に何も話してくれなくても、それはそれでいいと思っていた。



(おかしなものだ…)

鋼牙は心の中で笑った。
カオルと出会ったばかりの頃は、互いに相手を気遣うことなど無く、
自分本位な言葉で相手を傷つけもした。
それからしばらくして、カオルとの間に情が通いだした頃には
相手の言葉や態度に過敏になり、些細なことが気になったり、
苛立ったりしたものだ。

それが今では、どうだろう。
自然体に近い形でありのままの相手を受け入れられるようになって
いる。

何が原因かはわからないが、何か気がかりなことが合って顔を
強張らせているカオルが目の前にいるというのに、自分がこんなにも
変わってしまったことに感慨を覚えていることがおかしかった。


そして、それが表情にも出てしまったのだろう。

ふと鋼牙を見たカオルが、怒りで顔色を変えた。


「何ニヤニヤしてるの?
 何かおかしなことでもあるっ?」

少しトゲトゲしくそう言い放ったカオルは、鋼牙をじっと見据えた。



to be continued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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