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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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優しいノイズ(1)

いやあ、1週間が長かった~
今週は短い時間しかパソコンに向かうことができず、なかなか形にすることが難しかったです。
(…と言い訳してみる)

ちょっと間が空いたのですが、「あした」の続きのようなものを書き始めてみました。
あ、でも、もちろん、「あした」を読んでなくても全然大丈夫です。
もし、万が一問題があったとしても、適当にあなたの妄想で補完してくだされば、それで十分事足りますので。

では、その後の零と陶子さんがどんなふうに過ごしたのか…
気になる方は、お先へどうぞ。


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

ビルの谷間にある小さな社(やしろ)の影で、倒れかけて苔むした石碑から禍々(まがまが)しい邪気の塊(かたまり)がサッと立ち上った。
その邪気に向かって、気迫の籠った最期の一閃(いっせん)が煌めく。
すっぱりと両断された黒い塊は、陽の差し込むところに力なくゆらゆらと流れていくと、光に溶けていくようにさらさらと消えていった。

涼邑零は、両手に握った二振りの剣をくるりと振り回してコートの陰にしまい込むと、それまでの厳しい表情をフッと緩め、自分の左手に向かって笑顔を見せた。

「さぁ、次はどっちだい、シルヴァ?」

ゲートとなる陰我をいま斬ったばかりだというのに、せっかちにも、次なるターゲットの場所を尋ねる。
そう、今日の彼は、さっさと仕事を終えたくてとても気がはやっていたのだ。

『今日のところはこれで終わりよ、ゼロ』

「マジで? はぁ~、よかった!
 朝早くからがんばった甲斐があったぜ…」

零は笑顔でそう言うと、無意識のうちに昨夜痛めた脇腹に手をやった。
魔戒騎士の最高位、牙狼にも劣らない腕前を持つ零だったが、昨夜は「大した相手じゃない」とちょっと油断したがために、ホラーの太くて長い尾による一発をまともにくらってしまい、あばらにダメージを受けていた。

『まだ痛むの?』

心配そうにシルヴァが尋ねると、

「あ… うん、まあね。
 でも、折れてはいないから大丈夫だよ」

と、笑って返事をした。

確かに、昨晩よりは痛みは引いていた。
が、本当のことを言うと、今朝は「やっと」という感じでベッドから起き上がったのだった。
起きて、まず最初にしたのは、まだ痛みの残る脇腹を見たことだった。
シャツをめくり上げて脇腹を覗き込むようにして見ると、かなり広い範囲が紫色に変色していた。
だが、昨晩のうちに、身体のダメージを回復させる薬を飲んでおいたので、すでにところどころ黄色くなっている部分もある。

ただし、残念ながら、この薬は万能ではない。
怪我の回復のために使うエネルギーは、実は、零の身体に元々あるものを使っていた。
つまり、身体中のエネルギーを、怪我の酷い部分に集中させているに過ぎないので、必然的に、零の身体は普段以上にエネルギーを消費している状態となっていた。
しかも、いつもだったら、もう少しゆっくりと睡眠をとり、身体を休めるところなのだが、今日に限っては、のんびりと寝ているわけにはいかない理由があったのだ。

というのも、この1ヶ月ほどお互いに忙しくてあまり会うことができなかったカノジョと、今日はどこか遊びに行こう、という話になっていた。
だから、さっさと出掛けて、ゲートの封印という仕事を少しでも早く片づけてしまいたかったのだ。

そういうわけで、この日の零は、怪我によるダメージと疲労感、その回復のための倦怠感、それに寝不足あって、なかなかハードな朝を迎えていた。

ようやくベッドから引き剥がした重たい身体で、よろよろと洗面台の前まで来た零は、何気なく見た鏡の中の自分を見て、心の中で舌打ちをした。
右の口元が変色して腫れている…
そういえば、昨晩の戦闘では口の中も切ったのだった。

「あ~あ、こんなヒドイ顔を陶子さんに見せなくちゃいけないのかよ。まったく…」

思わずそう呟いてた零だったが、言葉とは裏腹で、その顔は笑っていた。
今日、カノジョに会える!
そう思うと、嬉しい気持ちが沸々(ふつふつ)と沸き起こるのだった。



そんなわけで身体が万全ではない状態だったが、零はなんとか無事に仕事を終えることができた。
あちこち駆けずり回って、立て続けにゲートを封印して回ったお蔭で、ひどく汗かきな彼は、かなりの汗をかいていた。

「さぁて、帰ってシャワーでも浴びるとするか…」

大きく息を吸い込みながら、うぅん、と手を広げた零は、すぐに、いててて、と脇腹を押さえて呻き声をあげた。
どうやら怪我のほうは、まだ完全には癒えていないようだった。




一方、こちらは陶子のほう。
陶子は、出掛ける用意をしながら零に電話を掛けていた。
ベッドの上に並べた服を手に取りながら、零が電話に出るのを待っていたが、どういうわけか無情にコールが響くばかりでちっとも繋がらない。
零には、昨日のうちに「連絡する」と伝えておいたのだかから、すぐに電話に出てもいいはずだった。
陶子の顔が、次第に強張ってくる。

(まさか、零に何かあったんじゃ?)

すでに10回以上コールしている状態で、じりじりと不安に押しつぶされそうになってくる。

(あと、5回だけ待ってみよう。
 …4、…3、…2、…)

最後の「1」を数える前に陶子は電話を切ると、その辺にあったものを適当に着込んで素早く身支度を整え、陶子は慌ただしく家を飛び出した。


零の部屋の前まで来て、陶子は弾む呼吸を落ち着けようと目をつむった。

(部屋にいなかったら、どうしよう?
 そのときは…)

不安を吐き出すようにふう~っと大きく息を吐いてみる。

(ま、そのときは、もういちど電話してみればいいよね!)

こう見えて、結構、度胸のある陶子は、気持ちにうまく踏ん切りをつける。
零の部屋のドアに手をかけてみた。

(あれ、開いてる?!)

どうやら部屋には零がいるようだと思い、陶子はかなりホッとした。
ゆっくりとドアを開け、小さな声で呼び掛けてみる。

「零… いるの?」

「…」

返ってくるかと思った返事はなく、陶子の心の中にまた不安が広がってくる。
入ってまず気付いたのは、ローテーブルの上に置かれたケータイだった。
いよいよもって、ここに零がいることが決定的に思えた。

姿の見えない零を探し、スチール棚の向こう側にあるベッドのほうへと回り込もうとした。

(あ、零!)

零を見つけた陶子は一瞬喜んだが、次の瞬間には驚きのあまり目を見開いた。

なんと、零は、ベッドの上にうつ伏せに倒れ込んだような恰好でいたのだ。
ベッドの脇からは、右手がダラリと床の上に垂れている。

陶子は泣きたくなるような気持ちを奮い立たせてベッドサイドに近づいた。
恐る恐る零の肩に手をかけて揺さぶろうとした。 …そのとき!

『陶子…』

シルヴァの声が小さく響いた。
驚いた陶子は叫び出しそうになった声を慌てて飲み込み、零のほうに伸ばした手を止めた。



to be continued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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