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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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優しいノイズ(2)

零と陶子のお話を… と思っていたら、シルヴァが出てきちゃいました。
そうか… 出てきちゃったか…

デートするにしても、3人で、ってなるんですね。





::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

シルヴァの呼びかけに、陶子は答えた。

「なあに?」

ベッドの上に投げ出されている零の左手に、少し顔を近づけて声を潜めて言う。

『心配いらないわ。ゼロは寝ているだけよ。それより…
 今日は、デートの約束をしているんでしょ? 知ってるわ。

 ただ…』

シルヴァは少し言い淀んだ。
だが、零の身体を気遣って言葉を続ける。

『今日のゼロはとても疲れているの。
 もう少しだけ… 寝かせてあげられないかしら?』

シルヴァの言葉を聞いて、陶子は寝ている零の寝顔を見た。

規則正しい呼吸で、背中が上下に動いている。
シャワーを浴びてそのまま倒れ込んだのか、
髪はまだ少し湿っていて、タオルが首の辺りに掛かっていた。
瞼を閉じた零の顔は半分しか見えなかったが、気持ちよさそうに微笑みすら浮かべているようにも見える。
でも、よく見てみると、口の端が少し変色して腫れているし、腕にはすり傷やひっかき傷がいくつも見える。

陶子といるときの零はそういう素振りを少しも見せたりしないが、こういう傷ついた姿を見てしまうとやっぱり闘っている人なんだな、ということが痛感させられる。
無性に愛しい気持ちが溢れてきて、撫でてあげたいような気持ちに駈られたが、そんなことをするとせっかくの眠りを妨げてしまうと考え直して我慢した。

「ねぇ、シルヴァ…」

陶子は優しく零を見つめたまま、口を開いた。

『なあに?』

釣られたかのように優しく返事をしたシルヴァに、陶子は笑顔で振り向いて言った。

「あたし、ちょっと出かけてくるね。
 少し買い物してくる…

 零が起きたら、そう伝えておいて!」

そう言うと、陶子はそっとベッドサイドを離れた。

『わかったわ…』

零を気遣い、小さな声で答えたシルヴァの声が陶子の耳にまで届いたかわからないが、ドアの前で陶子は振り返り、シルヴァに手を振って出ていった。



陶子がいなくなってから、シルヴァは零の様子を窺った。

(ほんとによく寝てる…)

シルヴァは、元はホラーだというのに、零に対しては、まるで人間の母親が子供に向けるようなまなざしをすることがある。
只今のシルヴァが、それだった。

そして、ふと気付いた。

(そういえば、ゼロったら、よく起きなかったものね?)

気を遣ってヒソヒソと交わしたとは言え、寝ているすぐそばで会話をしていたのである。
ひとかどの魔戒騎士ならば、たとえ眠っていたとしても他人が自分の間合いに入れば、察知するのが普通だろう。
ましてや、魔戒騎士の最高位、牙狼の称号を継ぐ冴島鋼牙と並び称されるほどの実力と経験を持つ涼邑零ならば、なおさらだ。
そんな彼が少しも起きる気配も見せなかったのは、よほど疲れていたのか、あるいは…

(そう… 彼女はあなたにとって、そういう存在になっているのね?)

ある想いに至ったところで、シルヴァは少しほっとしたような、それでいて少し寂しいような複雑な気分を感じた。




その後、買い物を済ませた陶子が帰って来たときには、さすがに零も眠りから覚めた。
むにゃむにゃと上体を起こし、

「ごめん、陶子さん。
 シャワー浴びてベッドに寝転んだら、なんかそのまま寝ちまってて…」

と、顔の前で手を合わせて申し訳なさそうに謝った。
陶子は、
笑顔を浮かべず、ちょっと肩をすくませただけで何も言わずに、両手に抱えていた荷物をローテーブルの上に置いた。
その様子を怒っているのだと勘違いした零は、軋む身体を引きずって陶子に近づくと、

「少し遅くなっちゃったけどさ、これからどこに行こうか?」

と機嫌をとるように陶子の顔を覗き込んで言った。
買い物袋の中から、スナック菓子の類(たぐい)や、ビールやチューハイの缶などをガサゴソと取り出していた陶子は、その手を止めて零のほうに向きなおった。
相変わらず、彼女の顔には笑顔がない。
それを見て、何か言われると思い身構える零。
そんな彼は、陶子の目には可愛いく映る。

「あのね、零…」

笑ってしまいそうになるのを、コホンと空咳をして誤魔化した。

「出掛けるのはやめにしよう?
 今日は家でのんびりすることにしない?」

少し身構えていた零は、予想外の陶子の言葉に、一瞬ポカンとなり、慌てて口を挟んだ。

「え? ちょっと待って! どういうこと?
 今日は出掛けないの?」

「そうよ」

余裕たっぷりにそう返事した陶子は、買い物袋から品物を取り出す動作に戻っていた。

「俺が寝ちゃってたから起こったの?
 だったら謝るからさぁ…
 今からでもどっか行こ?」

一生懸命に取りなす零に、堪え切れなくなった陶子は笑顔を向けた。

「あはは… 違う、違う。 怒ってないって。

 なんとなく今日は部屋でまったりするのもいいかなぁ、って思っただけだから!」



そういうわけで、出掛けるはずだった予定は、陶子の提案で変更となった。
ベッドの上にふたりで並んで座り、ポテチをつまみながら、明るいうちからビールを飲み、陶子の借りてきたコメディやアクションやロマンスなどのDVDを鑑賞して過ごす。
なんのかんのとお喋りしながら、ひとつの袋から競い合うように菓子をつまんだ。
デートと呼ぶにはあまりに日常的な過ごし方だったが、それでもふたりは楽しかった。
とあるシーンで、

「あれ? この人ってさ、さっきのすれ違った人じゃ…」

と、陶子が零に話しかけながら見てみると、零は寝息を立てていた。

(あ~あ、まだ寝たりなかったの?
 それとも、これ、面白くなかったのかなぁ…)

そう思いながら、陶子はポテチの袋に無造作に手を突っ込んだ。
ガサガサと音が鳴ったが、零は気に掛ける素振りはない。
そうこうするうちに、DVDの中では銃撃戦が始まった。
だが、それでも零は気持ちよく眠っている。

どうやら、陶子が立てる音や、流れているDVDからの音については、零にとっては眠りを妨げる騒音でも警戒すべき対象でもないらしい。

『優しいノイズ…』

ふと、シルヴァが呟いた。

「ん? なに?」

よく聞こえなかったらしい陶子が聞き返したが、

『なんでもないわ…』

シルヴァはそう答えただけだった。

(彼女がここに’いることを表す音は、今の零のとって、心地いいノイズなのね)

そう考えたシルヴァは、

『陶子… お腹が空いたらゼロも起きるわ。
 だから、気にせず、ゆっくりしていってちょうだい…』

と願った。
心身ともに疲れている零を癒すのは、なにも、静かな場所でひとりきりで休む、ということに限らない気がしたのだ。

「ふふふ、もちろんよ、シルヴァ。
 放っておかれた落とし前は、きっちりつけてもらわないとね!

 零には、何かおいしいものでも奢ってもらおう、っと…」

陶子は幾分声を潜めたものの、寝ている零を
必要以上に気にしているようではなかった。
焼肉にしようかな? それとも、回らないお寿司がいい? などとブツブツ言っている。

そんな優しいノイズの中で、眠っている零の顔が一層優しくなったのを、シルヴァは黙って見ていた。



fin
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


あらら。
デートになりませんでしたね。
鋼牙さんとでは無理ですが、零くんとなら、フツ~にデートできそうかなとも思ったのですが。

零くんなら、カフェでのデートシーンでも、公園なんかでクレープを頬張るシーンでも、バーでカクテルを飲むシーンでも容易に想像できますもんね?

でも、陶子さんは色気より食い気なのかもしれません。
結局、零くんに奢ってもらったのは、焼き肉なのか、寿司なのか?
この後のふたりは、大きな口を開けて美味しいものを頬張る… そんな飾らない時間を過ごしそうです。


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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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