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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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この街のどこかで(2)

ゴンザの手渡した冊子が何か?
気になりますか?

いえ、大したものではありません。
無料で手に入るものです。
でも、’思い入れ’ のある大事なものなんです。

なんだろうな? と気になる方は、続きをど~ぞ!


::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

鋼牙が手にしているのは、北の管轄内にある都市で発刊されているフリーペーパーのようだった。
発行時期を確認してみると、数年前の日付が記されている。
表紙には、当時流行っていたと思われるメイクをした若い女性が、こちらにニッコリと微笑みかけていた。
見出しの文字を斜め読みしても、鋼牙の興味を引くようなものは何もない。

だが、あのゴンザが意味ありげに渡したのだ。
鋼牙に見てほしいものが、きっと何かあるに違いない。
そう思い、鋼牙はページをめくってみた。
1枚、また1枚とページをめくる。
すると、冊子の中ほどで鋼牙の指が止まった。

「この街のどこかで」と題されたコーナーに、見慣れた顔を見つけたのだ。
このコーナーは、どうやら地元で活躍する人にインタビューする連載記事のようだった。

インタビューを受けているときに撮影されたと思われる、大きな彼女のスナップショットを眺める。
ネイビーのピンストライプのブラウスは白いカラーで清潔感を、履き古したデニムで飾らない性格と親近感を醸し出していた。
そして、カメラマンのほうではなく、インタビュアーがいると思われる方向を真っ直ぐ見ているその瞳には、鋼牙のよく知るキラキラとした輝きが溢れていた。

(カオル…)

そのとき、ゴンザがコーヒーを乗せたトレイを手にリビングへと入ってきたが、鋼牙の視線はフリーペーパーに注がれたままだった。
鋼牙の目の前にあるテーブルにコーヒーカップを置きながら、鋼牙が例のページを開いているのをそれとなく確かめたゴンザは、邪魔にならないように声を落としてそっと言い添えた。

「カオル様が黄金騎士をモティフ(モチーフ)にした壁画を描かれたときに、インタビューさせてほしいということでお話されたことがありました。
 それが、そのときの記事でございます。

 先程、それを見つけるまで、すっかり忘れておりました」

こんなふうにゴンザが鋼牙に説明したのは、当時、鋼牙は7体の使徒ホラー討伐の旅に出ていて、屋敷を留守にしていたために、その辺の事情を知らなかったからだ。

「そうか…」

そう答えただけで、やはり鋼牙は紙面から顔をあげようとはしなかった。
ゴンザはそれを見て微笑むと、主人に気兼ねなく読んでもらおうという気遣いから、一礼してリビングから出ていった。



リビングの窓からは温かな日差しと、時折爽やかな風が舞い込んでいた。
コーヒーのいい香りが気持ちを落ち着かせ、ゆったりとした時間が流れている。
見開きのページに並ぶ文字は、1~2分もあれば読みきってしまうが、それを2回、3回と何度か読み返してみた。
インタビューそのものは、話した内容を要約したところもあるのだろうが、カオル独特の言い回しなどもあり、そのときの口調や表情などが自然と想像できた。

微かに白い湯気がのぼっているコーヒーに手を伸ばす。
少し冷めてしまったが、まだ十分に美味いと感じられた。



だが、その穏やかな時間は長くは続かなかった。
というのも、部屋の外が少し騒がしくなったかと思うと、程なくしてリビングのドアが開いたのだ。
そして、姿を見せたのは、フリーペーパーの中の人物の数年後の姿だった。
外出から帰ってきたカオルは、鋼牙を見てにっこりと笑った。

「ただいま、鋼牙」

それを迎えた鋼牙は、

「おかえり」

と応じて、手にしていた冊子を閉じた。
カオルの後ろからコーヒーを手にしたゴンザが入ってくると、

「カオル様のコーヒーは、こちらに置きますね」

と誰にともなく言い、鋼牙のコーヒーカップのすぐ脇に新しいコーヒーを置いて出ていった。

「ずいぶん、いろんなものがあるんだねぇ」

カオルのほうは、ダイニングテーブルに広げられている品々に目を奪われているようだ。

「どれも、思い入れのあるもの、だそうだ」

「へぇ…」

カオルは手近にあった木製のお面を手に取り、顔に当ててみせたりした。
しばらくの間、テーブルの上のあちらこちらに視線を彷徨わせていたが、ふと、鋼牙の手にあるものに目を留めた。

「あれ? それは…」

「…」

鋼牙は何も言わずに冊子をカオルに差し出した。
カオルはそれを受け取ると、ゴンザが用意したコーヒーの前の席… つまりは鋼牙の隣、に腰を降ろした。
表紙をじっと見て、裏に返してチラッと見ると、再び表に向けた。
そして、ページを1枚1枚めくり始めたので、鋼牙はその横顔を見つめていた。
すると、鋼牙が先程まで見ていたページにたどり着いたらしい。
カオルの懐かしそうな表情と、少し興奮の色が浮かんだ目の輝きに、鋼牙は思わず目を細めてしまう。
鋼牙の視線に気が付いたカオルが、

「なあに? そんなジロジロ見て…」

と、居心地悪そうに言った。
照れているのか鋼牙のほうを見ようとはしない。

「…」

どう答えようかと少し迷い、

「その写真… うまく撮れているな」

と言ってみた。
それを聞いて、

「ああ、わかった!
 この写真と今のあたしのことを見比べてるんでしょお~!

 年、取ったな、とか思ってるんじゃない?
 んもう、ひどいよ、鋼牙」

カオルはそんなふうに勝手に解釈して、プリプリ怒りだした。

「そんなことは思っていない。

 そうじゃなくて…」

と、鋼牙がさらに何かを言いかけたとき、ザルバがそれを遮った。

『おい、鋼牙。
 おまえたちの会話を聞かされているこっちの身にもなってくれよ?

 この先、どんどんエスカレートしてイチャつくつもりなら、頼むから俺様を外してくれないか?
 とても聞いちゃいられないからな。

 それに、アレだ。
 おまえたちのラブラブな時間を邪魔しても悪いしな…』

ニヤニヤしながらそう言うザルバに、ふたりは、

「イチャつくつもりはないぞ!」
「イチャつくつもりなんてないわよ!」

と一斉に否定する声がハモった。
ふたりは思わず顔を見合わせてクスッと笑い、カオルのほうが鋼牙に少し身体を寄せた。

『やれやれ…
 俺様の目には、それがイチャついているように見えるんだがな…』

ザルバは苦笑交じりに呟き、カオルはちょっとだけ肩をすくめた。



やがて、鋼牙はおもむろに口を開いた。

「少し遅くなったが、今からゲートの封印に行ってくる。
 今夜は、ホラー退治に行くから先に休むといい」

微笑んでいたカオルの表情がほんの少し引き締まって見えた。

「そう… 気を付けてね」

そう言うと、鋼牙の胸に頭をトンとつけた。
それが、今のカオルにできる甘えと祈りと我慢の折り合いをつけた仕草だった。
鋼牙にもカオルの気持ちは十分伝わっているが、

「ああ」

と言って、彼女の肩を抱く手に力をこめるのが精一杯だ。
気休めの言葉が言えるほど、この男は器用になれない…

ふいに、鋼牙はソファから立ち上がる。
コート掛けに掛けられている白いコートを手に取ると素早く腕を通して、カオルを振り返った。

「では… 行ってくる」

すでに、仕事をするときの顔を見せて言った。

「うん… 行ってらっしゃい」

様々な想いを込めて、カオルも応えた。

『カオル、鋼牙には俺様がついている。
 安心しろ』

ザルバが言葉を添えた。

「うん、わかってる…
 ザルバも気を付けてね」

『ああ…』

そうして、鋼牙の姿はドアの向こうへと消えていったのだった。



to be continued(3へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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