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きんのまなざし ぎんのささやき

この街のどこかで(4)

懐かしいインタビュー記事という掘り出し物が見つかって、初心を思い出す。
ハイ、終わり!

…で、よかったのですが、もうちょっと、もうちょっと、とズルズル妄想し続けてます。

きっと、本家様の鋼牙さんやカオルさんは、今を、そして未来に目を向けて前に進むタイプなのでしょうが、足元を見つめ直すことも大事だよぉ~ と selfish が引き止めちゃってる感じです。(^▽^;)
だって~ 1期の牙狼、好きなんだもん!

というわけで、もうちょっとだけお付き合いください。




::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

風呂上がりのカオルは、濡れた髪を拭きながら2階へあがると、寝室のドアを開けた。
そして、目に飛び込んできた光景に、思わず吹き出してしまう。

「やだぁ! また読んでるの?」

呆れたように言いながら、部屋の中央に据えられた大きなベッドへと近づく。

ふかふかの羽枕をいくつも背中にあてて上体を起こしているのは、カオルより一足先に風呂に入った鋼牙だった。
タオルドライした髪をそのままにしたのか、ボサボサのまま乾きかけていた。
こういう姿の鋼牙を目にできるのは、世界広しと言えどもカオルの他にはいないだろう。

鋼牙が髪を乾かすのも忘れて眺めていたのは、例のインタビュー記事の載った冊子だ。

「昔の自分を見られるのって、結構恥ずかしいんだけどなぁぁぁ」

わざと、ねちっこく言ってみる。
暗に「もう見ないで!」という意味を込めて言ったつもりなのだが、言われたほうの鋼牙はわかっているのか、わかっていないのか、

「そうだな…」

などという適当な返事しか返してこなかった。
カオルは、小さく唇を尖らせて、

(んもう!)

と不機嫌になったが、次の瞬間、ニヤッと笑った。

(こうなれば実力行使よ!)

そっと何食わぬ顔で近づいて、あと数歩というところで素早く駆け寄る。
そして、冊子を奪おうとしてベッドにダイブするような勢いで手を伸ばした。

だが、当然のことながら、その手のことに関しては、鋼牙のほうが何倍も素早かった。
長い腕をサッと引き、冊子をカオルから遠ざけるとともに、もう片方の手でカオルを完全にブロックして動きを封じていた。
カオルは、鋼牙の腕に遮られ、冊子を奪取するのは無理だとわかりながらも、

「ねぇ、もう、いいでしょ?
 あんまり見てるとクシャクシャになって、ゴンザさん悲しむんだからぁ~」

と懸命に手を伸ばしてジタバタしてみる。

「おまえの言ってることと、やってることにものすごくギャップを感じるんだが…

 おまえのほうが余程クシャクシャにしてしまいそうだ」

呆れ顔の鋼牙は、溜め息をついて言った。

「あ! それもそうね…」

カオルは、ピタリと動きを止めて呟いた。
そして、スッと立ち上がると、ベッドの端におとなしく腰かけた。

こういう熱しやすく冷めやすいようなところが、カオルらしいと言えばカオルらしいところで、鋼牙から見れば、「見ていて飽きない」というか、「面白い」というか…
…まぁ、「好き」なところであったりもする。

「それにしても… その記事の一体どこが気に入ったの?
 そんなに何回も読むほど面白いことなんて言ってないよ、あたし?」

聞かれた鋼牙は、再び紙面に目を落としてしばらく眺めた。
どうやら、答えてくれるつもりはあまり無さそうだ。

普通の人間なら、話す気のない相手にはそれ以上ちょっかいをかけないものだが、カオルはそんなことはお構いなしだ。
思いつくままに、ひとりでペラペラと喋り続ける。

「あ、その写真が気に入ったの?
 あたし、かわいく撮れてるかなぁ?
 ね、そういうことなの?

 それとも話している内容が気になるわけ?
 あたし、マズイことは言ってないつもりだけど…」

…まぁ、少々うるさいが、カオルのそういうところも嫌いじゃない。
うん、いや「好き」なんだろう。
だから、つい、鋼牙も口を開いてしまうのだ。

「…あまり無いからな」

ずいぶん言葉が足りないが、そんなことを口にした。

「ん? 無いって?」

ピンと来ないカオルは聞き返す。

「この手で救った者の… 気持ちに触れる機会が… かな」

自分の気持ちをできるだけ忠実に言葉で表そうとしてみたが、うまく伝わるか自信はなさそうだ。
そして、もう気が済んだのか、ほら、という具合に冊子をカオルに渡した。

「…」

冊子を黙って受け取ったカオルは、なんとなく視線を落として手の中の冊子を見て、ポツリと呟いた。

「…そっか」



魔戒騎士は闇に生きる者。
表立って、人に知られる存在ではない。
「それが仕事だから仕方がない」と言えなくもないが、人に感謝されれば人並みに… いや、恐らくは普通の人以上に嬉しいに違いない。



次にカオルが顔をあげたときには、彼女は明るく微笑んでいた。

「あたしは、鋼牙に命を救ってもらって、すごく感謝しているよ。
 それに、あたしが本気で絵と向き合うきっかけも作ってくれた…

 ほんとうにありがとう、鋼牙」

出会った頃の反発し合っていたときには言いたくても言えなかった「ありがとう」の一言が、今ではすんなりと言える。
でも、面と向かって言うのは、こんなことでもないと、なかなか無いものだ。
いい機会だから… と、カオルは誠心誠意を込めて感謝の言葉を口にした。

カオルの目に映る鋼牙の表情は嬉しそうに見えたが、それもほんの束の間で、すぐに抱き寄せられて見えなくなってしまった。
ちょっと不満に思いながらも、鋼牙の腕の心地よさを感じる。
じんわりとあったかいのは物理的なものだけではない気がしていた。
やがて、抱きしめたまま鋼牙が言う。

「カオル、ひとつ聞きたいことがある」

カオルは鋼牙の顔を見上げようとするが、鋼牙は腕の力を緩めるつもりはなく、それをさせない。
仕方がないので、そのままで聞き返す。

「なぁに?」

微妙な沈黙があり、やがて、小さな声がした。

「カオルが俺に対して思うのは… その… 感謝の気持ちだけなのか?」

こういう聞き方をする鋼牙を、カオルは

(かわいいな…)

と思った。
だけど、 顔を見せてくれようとしない鋼牙に対して、素直に答えてしまうのはなんだか癪に障るので、少し意地悪したい気分になった。

「鋼牙は、なんて言ってほしいの?」

すると、怒り出すかと思った鋼牙が、意に反して、

「俺の希望などどうでもいい。
 …カオルの気持ちが知りたいんだ」

と、声を絞り出すように切なげに言うではないか。
顔の見えない状況だからか、一層、カオルの胸はキュンとする。
すると、カオルを束縛する鋼牙の腕の強さが心なしか弱まった気がしたので、もぞもぞと動いてみると、鋼牙の顔を見上げることができた。

心細げな少年のようにも見える鋼牙…
そんな鋼牙に、カオルの気持ちは優しく穏やかに凪いでいく。

「あたしの気持ちは、一言では言えないよ…

 ずっと、鋼牙のそばにいたい、って思ってる。
 こうして近くにいるときも、遠く離れていても、いつだって。

 そして、鋼牙が必要としたときには、いつだってあたしを近くで感じてくれてたらいいのにな、って…」

そう言い終えるとカオルは、フワッと笑った。
そして、

「ね、今度は鋼牙の気持ちも教えてくれない?」

とねだった。
すると、鋼牙は少し考えて、胸の辺りをそっと押さえて

「俺のそばにはいつだっておまえがいる。
 そして、俺の帰る場所は… カオル、おまえのところだ」

それを聞いたカオルが、クシャと顔を歪ませながら笑った。

「すごく嬉しい…」

そして、少しなじるように

「でも、そういうことは、もっといつも聞かせてほしいな」

と冗談めかして言った。
すると、鋼牙は澄ました顔で言った。

「それは無理だな。

 こんな大事なことは、おいそれと口にするもんじゃない…」

「…ううっ、鋼牙の意地悪!」

カオルの手が、パシッと鋼牙の胸を叩こうとした。
だが、その手を鋼牙が受け止めた。
言葉とは裏腹に、カオルはとてもしあわせそうだった。



そして…
互いの気持ちをもっと深く知るために、熱く長い夜が始まろうとしていた。



fin
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壁画を描いた後(鋼牙が使徒ホラー殲滅の旅から帰る前)から数年後。
すっかり夫婦なんだろうな…

鋼牙さんが愛の言葉(のようなもの)を口にするのは、selfish の中ではなかなか高い壁があって、これまであまり考えられなかったのですが、今回は「言ってもいいかな…」と思えました。

けど… あんまりパーフェクトじゃないですよねぇ~
まぁ、selfish レベルでは、このくらいが精一杯です。 (^_^)ゞポリポリ

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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