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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

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この街のどこかで(1)

立て続けに台風がやってきました。
台風一過の青空に、しみじみと感謝したくなります。

朝晩はめっきり冷え込んで、うっかりしてると冬は目の前です。
冬が来る前にできること、やりたいことはやっておかないと…
そう思っていたら、有能な執事が妄想ワ~ルドで動き出しました。

どっちの方向に向かうやら、今ひとつ不安ではございますが、相変わらずの見切り発車で出発したいと思います!


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今日も青空が広がり、気持ちよく晴れていた。
冴島家の執事ゴンザは、リビングの窓を大きく開け放って、晴天の秋の日の乾いた空気を室内に入れた。
爽やかな風がそよそよと、なんとも心地よい。

(こんな日は、お掃除をするにもお洗濯するにも、実に気持ちがいいもんですな)

冴島邸の家事を一手に引き受けているゴンザは、何から手をつけようかと頭の中で算段を始めた。

今日は、この家の主(あるじ)は書斎に籠って何やら調べ物としており、もうひとりの家族は仕事の打ち合わせと言い残して、すでに出かけていた。
ほんとうなら庭の芝生がだいぶん伸びているので刈ってしまいたいところだったが、芝刈り機の音が主人の調べ物の邪魔になってもいけない。

(はて、どうしたものか…)

そう考えながら、窓の外に向けていた目を室内に向けた。
リビングをぐるりと何気なく見渡していたゴンザは、ふと、あることを思いついた。

(そうだ、アレをしよう。
 天気のいい今日みたいな日にはぴったりだ…)

ゴンザはいそいそとリビングから出ていくと、10分ほどして戻って来た。
ゴンザの手には、一抱えほどある柳行李(やなぎごうり)があった。




オフホワイトのレースのカーテンを通して降り注がれる日差しが、鋼牙の顔に優しい陰影を描いていた。
時折めくられるセピア色のページが軽やかな音をたてる他には、冴島邸の書斎は明るい静寂で満たされていた。
書物に落とされていた視線が、僅かに上を向いた。
長い睫(まつげ)に縁取られている瞳が部屋の一点を睨み、たった今読んだ事柄と自分の考えが頭の中で瞬時のうちにまとめてあげられた。

きつく引き結ばれていた口元がフッと緩む。

『どうやら奴を倒すヒントが見つかったようだな?』

ザルバが鋼牙に声をかけた。

「ああ。
 今夜、決着をつけるぞ、ザルバ」

『そうだな。
 これ以上、あんな奴をのさばらしておけないからな』

左手の相棒に答えた鋼牙は、手にしていた書物をパタンと閉じ、机の上に置いた。

「少し休憩する」

そう言うと、席を立って、古びた書物の匂いが漂う書斎から廊下に出た。



ゴンザにコーヒーでも頼もうと思った鋼牙は、邸内にいるはずのゴンザの気配を探す。
リビングのドアの前まで来たところで、あぁ、ここか、と察知し、ドアノブに手をかけるとグイッと開けた。
そして、飛び込んできた光景に、鋼牙は少なからず驚くのだった。

大きなダイニングテーブルの上には、様々なものが無造作に並べられていた。
緻密な細工がされたアンティーク調の銀の小物入れがあるかと思えば、古びた煙管(キセル)もあった。
民芸品のような木製のお面や、長い鎖のついた懐中時計。
革の手袋もあれば、ふわふわの羽のついた扇子や、長いフリンジのついたベストのような衣装などなど。
そして、今も、柳行李の中から手紙の束のようなものを取りだしていたゴンザが、鋼牙に気付いて手を止めた。

「これは、鋼牙様。
 少々散らかっております、申し訳ございません」

口ではそう言いながらもゴンザの口調には少しも悪びれたところはない。

『どうしたんだ、ゴンザ。
 店でも始めるのか?』

鋼牙の代わりにザルバが尋ねた。

「いえいえ、滅相もございません。
 ここにあるものは、どれもこれも思い入れのあるものばかりです。
 おいそれと売ったりなんぞできるものではございません。

 今日はあまりに天気がよいものですから、しまいっぱなしだったものに、こうして風を当てているところです」

そう言いながら、ゴンザは手に持っていた羽ボウキで手紙の束をササッと払い、テーブルの空いているところにそっと置いた。

「そうか…」

鋼牙はそう返事をしながら、ダイニングテーブルに近づいた。
ゴンザは柳行李の中を覗き込み、次の品物を手に取ろうとして

「おやっ、これは…」

と顔をほころばせた。

『どうした?
 何か面白いものでもあったのか?』

ザルバの問いに直接返事はせず、ゴンザは薄い冊子を1冊取り出してみせた。

「なんだ、それは?」

「確か、鋼牙様はこれをご覧になったことはございませんでしたね。
 ぜひお手に取ってお読みください」

これまた鋼牙の問いにも答えず、ゴンザは冊子を鋼牙のほうに差し出した。
怪訝な顔をしながらも鋼牙は受け取り、ソファに向かうと腰を沈めた。
その様子を見て、ゴンザは

「コーヒーでもお持ちいたしましょう」

と言うと、スッと姿勢を正して一礼し、リビングから出ていった。



to be continued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



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