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きんのまなざし ぎんのささやき

牙 狼(冴 島 鋼 牙 Ver.)の世界を、気ままに妄想した二 次 創 作 サイトです

最近の’妄想’
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最近の’お礼’

あんたにしか(5)

悩みますねぇ~
どこに着地するのがいいですかねぇ~
この悩んでいる時間も楽しいんですけど、続きを待っている方をお待たせし過ぎるのもつらいものがあります。

それもこれも、翼が煮え切らない態度がいけないんだ!
…と翼のせいにしてしまうのはダメでしょうか?





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日向が幼馴染みの娘といい感じに進展していると聞いたとき、邪美は、羨ましいな、と思っていた。
いや、自分と鋼牙とのことを思って、そう感じたわけではない。
鋼牙への想いというものは… そう、今となっては、少し形が変わってきたように思うのだ。
日向を羨ましいと感じたのは、多分、もっとシンプルなことだった。

今更、説明するまでもないが、魔界に関わる者は、常に危険とは背中合わせだ。
自分の身も守れないような者は、人に手を貸すこともできるはずがない。
ホラーとの闘いの中で生半可な情けは、他人をも自分をも窮地に陥れてしまう。
非情なようだが、力の無さが文字通り ’命取り’ となるのだ。
自分の身を守る、そして、人をも守る…
それには、魔戒騎士の世界でも魔戒法師の世界でも、倦(う)まず弛(たゆ)まず、日々、修行に励み、自分の力を高めていくこと… それに尽きると言えよう。
そして、修行というものは、想像する以上にとてもとても孤独なものだった。
幼い頃の邪美にとっても、恐らく鋼牙にとってもそうだったろう。

ところが、ここ閑岱では少し違った。
翼はあまり好きではないらしいが、里の者は誰でも顔見知りで、よい事も悪い事も共有し合っている。(隣家の夕食の献立や、夫婦げんかの原因なんかも筒抜けだったりすることも…)
里の者は誰でも、相手がよその家の子どもであろうが、その子が悪いことをすれば叱り、危険な目に遭えば心配した。
子どもにしてみれば、大人は誰もが親のような存在であり、師という存在でもあった。
それに、里の子どもたちは、人界の子どもたちが学校に行って勉強するのと同じように、里の教練場で法術や体術を学んでいた。
幼い頃から同年代のライバルが身近にいるということは、それだけですごく励みにもなり、刺激にもなる。
学びの場でも遊びの場でも、朝から晩まで一緒に過ごす友との関係は、下手をすれば、親兄弟のそれよりも濃いものかもしれない。
言葉にできないような一体感というか信頼関係…
男も女もなくそんな付き合いをしてきた翼や日向たちのことを、邪美は羨ましいとそう思ったのだ。



さて、そろそろ邪美の家が見えてきた。
閑岱での仮の家として借りている小さな家だったが、1年近く暮らしてきた今は、邪美にとって心からリラックスできる場所になっていた。
1週間留守にして戻ってみると、帰ってきた、という気分になった。
いずれは出ていくことになるはずなのに、だ。
それがなんとなくおかしく思える。

  クスッ

思わず漏れた笑いに気付き、翼が邪美を見た。

「いやね。
 あの家は、あたしにとっちゃあ、仮の住まいのはずなのにさ。
 帰ってきたんだな、って思ってる自分がなんだかおかしくてね」

「そうか…」

邪美が何を思ってそんなことを口にしたのか、翼にはわからなかった。
だが、黙ったままでいたのでは、思考がどんどん悪い方へ進む気がして、何か喋っていたかった。

「そう言えば、おまえがここに来て、もうじき1年になるんだったな。
 鈴が、その日は盛大に祝いたい、と言っていたぞ」

それを聞いた邪美は、目を丸くした。

「そりゃあ、ほんとかい?

 鈴ってば、今日だってあんなにご馳走を作ってくれたのに…
 フフフ… あの子にはほんとにいろいろ世話になりっぱなしだよ」

「鈴は好きでやってるんだ。気にするな。

 あいつはおまえが来て、すごく明るくなった。
 不愛想な兄とふたりきりでいるよりも、おまえといるほうがよほど楽しそうだ」

それを聞いて、邪美は慌てて否定した。

「それは違うよ、翼。
 あの子は誰よりもあんたのことが好きなんだから!」

それを冷静に受け止めた翼は静かに言う。

「ああ、わかってるさ。
 おまえこそ勘違いしないでくれ。
 鈴が笑顔でいてくれることが、俺は嬉しい、と言っているだけだ」

こういうなんでもないことを話しながら歩くことは、なんとも穏やかな時間だった。
こんなことが当たり前になったことにも、邪美は不思議な感慨を覚えていた。



そんなことを話しているうちに、邪美の家の前までやってきた。
それじゃあ、と翼が口を開こうとしたとき、邪美が先に切り出した。

「ほんとはさ、こんなに閑岱に長居するつもりはなかったんだ。
 初めのうちは、ほんの少しの間だけと思っていたのに、あんまり居心地がいいからズルズルと今まできちまったんだよ。
 でも…
 そろそろ引き払った方がいいのかもしれないねぇ」

驚いた翼は邪美を振り返った。

「何を言っているんだ?
 ここを出ていく理由でもあるのか?」

「いや…」

翼はできるだけ平静を保とうと努めていたが、それがどの程度成功しているのかはわからなかった。
だが、幸いなとこに、邪美は真っ直ぐに見つめる翼の視線から逃れようとして横を向いていた。
邪美は、いずれこの地を去ることになったとき、未練がましくなりたくなかった。
長く居座れば居座るほど、この地を離れるときにつらくなるのは目に見えていた。
理由があるとすればたったそれだけのことだったので、翼の問いに明瞭に否定することはできなかった。
多くを語らない邪美に、少し落ち着いた翼はさらに言った。

「なら、ここにいればいいじゃないか。
 邪美、おまえがいなくなれば鈴が悲しむ」

その言葉に、邪美は一瞬悲しげな顔をした。

「鈴だけなのかい?
 あんたは… あんたは、どうなんだい?」

縋(すが)るような邪美の声に、翼はハッとした。
邪美がこちらを見つめていた。
そこにはいつも見るのとは違う彼女がいた。
鈴と楽しそうに笑い合う笑顔の邪美でもなく、里の子どもたちに修行をつけている厳しい目をした彼女でもなく、面白がって翼を冷やかすときの悪戯っぽい表情でもない。
物柔らかで、子供のような無垢な表情をしていて、それでいてどこか切なげな目をしていた。

「…」

何も言えずに邪美を見つめる視線に気づき、邪美は我に返ってバツが悪そうに言った。

「今のは気にしないでくれないか。
 それじゃ、’見回り’ 気をつけて…」

そう言うと、邪美はそそくさと翼の脇を抜けて、真っ暗な家の玄関をくぐった。

  バタン…

閉めた戸に背中を預けて、邪美は佇んだ。
人気(ひとけ)がなく、冷え切った室内の空気をスーッと大きく吸う。

「寒いねぇ…」

久し振りの我が家の感想が、そんなふうに口をついて出た。

(あたしったら、何、馬鹿なことを口走っちまったんだろう…)

暗闇の中で、邪美はキッと唇を噛んだ。
ひとりは慣れているはずなのに、ひとりが気楽で好きだったのに、無性に寂しい気分に襲われる。

(馬鹿だねぇ
 鈴があたしを慕ってくれるから、翼だって親しくしてくれてるだけじゃないかい。
 それ以上のことを翼は思っちゃいないんだよ…)

自分にそう言い聞かせて、玄関から離れようとしたとき、

「邪美…」

と、戸の向こう側から声が聞こえた。

(…翼?)

てっきり ’見廻り’ に行ったものと思っていた翼が、扉を挟んで向こう側にいるらしかった。
その翼が、ゆっくりと言葉を継いだ。

「どこにも行くな、邪美。
 このまま、ずっと閑岱にいてほしい。鈴が…
 …いや、俺がそう思っている」

翼は、邪美が聞いていると思って言っているのだろうか?
いや、たとえ聞いていなかったとしても、それはそれでいいと思っていたかもしれなかった。
翼の言った言葉の意味を噛みしめていた邪美が、ハッとして玄関の戸を開けた。
が、邪美の目に映ったのは、木々の向こう側にチラリチラリと見える翼の小さな背中だった。

翼を見送りながら、邪美の顔がクシャリと歪む。

「あたしみたいな女でも、少しは希望があるんだろうか…」

そう呟いて、泣き笑いのような表情を浮かべた。

(明日になったら、いったいどんな顔して会えばいいんだろうか?
 楽しみなような、怖いような気持ちがするよ。

 …あたしも知らないような、あんたにしか見せない顔が出ちまうんだろうか?)

さっきまでの落ち込んだ気分はどこへやら、明日から… そしてこれから先のことが、少し楽しみに思える邪美だった。



fin
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なんだかすいません! (先に謝っておこう…)
たった5話分のお話を(しかも selfish の1話って短いんですよね…)1ヶ月近くもかけて書いた割には、あ~んまり進展しない結果になりました。 (^▽^;)
気長に続きを待ち続けた皆さんには、ほんと申し訳ないです。
そして、拍手やコメントという形で励ましてくれたことに、すごくすごく感謝しています!!


さて…
他の書き手様が書いているように、翼と邪美はコメディのようなテンポのよいやりとりがあるといいな、といつも思うんですが、どうも selfish は、翼には ’苦しい恋’ をしてもらいたい傾向にあるようです。

白夜では、閑岱のお山の大将、俺が閑岱のルールだ、みたいな態度だった翼が、誰にも告げられずに密かに邪美に恋をする。
だけど、邪美の影には、その実力を翼も認めざるを得ない鋼牙がちらついて見える。
それでも着実に進行していく恋心はどうにも止められず、そのことが翼を、思慮深く彼特有の武骨さに磨きをかけた大人の男にさせる… みたいな感じを妄想して、ひとりで喜んでいるわけなんです。
(なのに、MAKAISENKIで、「おまえに騎士の何がわかる!」とレオに言い放った翼を見て、「あんたってヤツはちっとも変っとらんじゃないかぁ!」と呆れちゃったけどね)

邪美は邪美で、翼の前ではかわいい女の顔を垣間見せているといいな、なんて思ってます。

A監督は邪美がお気に入りだから、何かの形で後日譚を出してくれないかな~ と密かに期待しているんですが… どうでしょう?
牙狼の世界が広がり過ぎて、もう、そういうのはないのかな… (´・ω・`)ショボン

拍手[16回]

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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も9年目を迎えましたが、まだ飽きていない模様…



hitori 様[07/08]
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