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きんのまなざし ぎんのささやき

女というヤツは(1)

ふいに、1期の頃のぶつかり合っている鋼牙さんとカオルちゃんが懐かしくなりました。
あの頃のことを書くとしたら、どんなのがいいでしょう?
…と書きだしたはいいものの、1期のスキマ話というほどのこともなく、中途半端な感じになりそう。

どこにたどり着くか(はたまた、たどり着けないか)心許ない感じですが、また、お付き合いいただけますかぁ?


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  ザブ ザブ ザブ~ン

「ふぅ~」

なみなみと湯の張られた浴槽に、凍えた身体を沈めたカオルは満足そうに息をついた。

(こんな立派なお屋敷に来れてよかったけど、ちょっとアクセスには難があるのよねぇ)

そんなことを思いながら、湯の中で気持ちよさそうに目をつむった。



カオルが冴島鋼牙の住む屋敷に転がり込んで数日後の夕方。
街の中心部に出掛けていたカオルは、天気予報通りに振りだした雨の中、傘を差して屋敷までの長い道のりを帰ってきた。

「お帰りなさいませ、カオル様。寒かったでございましょう?
 お風邪を召しては大変です。
 湯を沸かしてございますので、どうぞお入りくださいませ」

カオルの帰りを出迎えてくれたゴンザの優しい言葉に、出迎えてくれる人がいるっていいもんだな、と思いながら、

「はい… じゃあ、お言葉に甘えてお風呂いただきます!」

とカオルは笑顔で答えた。



(なんかお嬢様にでもなった気分だよ)

湯の温かさにトロトロとした眠気を覚えながら、カオルは、ここ最近、自分に降りかかったことをあれこれと思い起こした。

前に住んでいた部屋は、家賃が溜まりに溜まったことと壁いっぱいに絵を描いたことが大家の逆鱗に触れて、とうとう追い出されてしまった。

(あの絵、よく描けてたと思ったんだけどな~)

手ですくったお湯を肩にかけながら、カオルは不満そうに口をとがらせた。

そして…
家を追い出されたカオルが次に転がり込んだのは、友人の亜佐美のところだった。
もちろん、亜佐美もいい顔はしなかったが、友達だから、多少のことは目をつむってくれるはず。
それなのに
ご迷惑をおかけするお詫びに、とカオルが腕によりをかけて作った料理で、運悪く(?)、亜佐美は食あたりを起こして入院してしまったのだった。
ようやく退院してきたと思った亜佐美は、コワ~イ顔で、

「もう、あんたの面倒は見切れないわ! 悪いけど、すぐにでも出てって頂戴!

 え? 行くところがない?
 じゃあ、その指輪の人のところにでも行けばいいんじゃないの?」

と友だちであるはずのカオルを見捨てた。

(あんなに怒んなくてもいいのにさ…)

不満そうに口をとがらせたカオルは、浴槽のへりに乗せた腕に顎を乗せた。



こうなれば仕方がない。
亜佐美から見放されたカオルは、ぎりぎりの選択をせざるを得なかった。
救いの手を期待できそうな親戚も友人もカオルにはもういなかった。
だから、心底、不本意ではあったが、少し前に知り合った男、冴島鋼牙の屋敷に押しかけてきてしまったのだ。

(冴島鋼牙…
 あいつ、何考えているんだか全然わかんない!
 いきなり壁に押し付けられて火をかざされたり、斬る! って剣を突きつけられたりしたり…

 そうかと思えば、返ってこないかもと諦めかけてたお金を取り返してくれたこともあったっけ。
 それに、この指環も…

 あたしに惚れてるってわけでもないみたいなのに、いったいどういうつもりなんだろ?
 でもまあ、とにかく、ここに住むことを許してくれたんだから一安心。

 う~ん、でもな… やっぱり、あいつの世話になるのは嫌だなぁ)

つらつらとそんなことを考えていると、身体の芯まで温まり、あまりの気持ちよさに瞼が塞がりそうになる。

カオルは、夜、電気をつけて入るお風呂より、こうして陽のあるうちに自然光の中で入るほうが好きだった。
ところが、窓から差し込む日差しは急速に力を弱めたようだ。
どうやら、日の入りの時間を迎えたらしい。
うたた寝してしまいそうに気持ちよかったが、そろそろあがらないとじきに暗くなってしまう。

(そろそろあがろうかな…)

とカオルが思ったそのとき!
脱衣所のドアの開閉された音がカオルの耳に聞こえた。
その瞬間、眠気はどこかに吹き飛んだ。
大きな瞳がパッと開く。

(あれっ? 誰、かな?)

カオルの頭は驚くほどのスピードで動き出した。

ゴンザはカオルが風呂に入っていることを知っているから、声もかけずに入ってくることは考えられない。
それに、風呂に入ろうとしたとき、買い忘れたものがあるからとゴンザが言って出掛けていた。
買い物を終えて帰ってきたにしては早過ぎるのだ。

(う~ん…)

ふと、カオルは思い出した。

「もうじき、鋼牙様もお帰りになるかと思いますが、留守にすることをお伝えくださいませんか?」

(そうだ!
 確か、そんなことも言っていた。
 …ということは、あいつが帰ってきた、ってこと?!)

そこまで考えたカオルは慌てた。

(あいつも、あたしと同じで、冷えた身体を暖めるためにお風呂に入ろうと思ったんじゃない?
 え、ちょっと、待って!
 まさか、あたしが風呂に入っていることにまだ気付いてない、とか?)

声をあげようにも思うように声が出ず、カオルは咄嗟に

  バシャ バシャ

と水音を立てた。

(お願い! あたしがいるってことに気付いて!)

カオルは風呂の中で小さくなって、脱衣所との境にあるガラス戸をジッと見つめた。



to be continued(2へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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