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きんのまなざし ぎんのささやき

あんたにしか(4)

がんばって書いてるんですが、なかなか思うようにはいきません。
やっぱ、翼と邪美って難しい。

でも、着実に前進はしてるはず…
そう信じて書く! うん、がんばる!


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歩きながら話すという行為は、相手を見なくてすむのが良い点だ。
面と向かっては言いにくいことも、案外、さらりと言えたりする。

山刀家から邪美の家まではどんなにゆっくり歩いても10分とはかからない距離だったから、それほど大したことは話せない。
だが、翼はこれまでの ’見送り’ ならぬ ’見廻り’ において、邪美といろいろな話をしてきた。

例えば、邪美が閑岱に暮らすようになって知っておいた方がよいと思われる里のことや、そこに暮らす人々のこと。
それに、優秀な魔戒法師としての邪美の腕を見込んで、仕事の上での相談事や依頼などもしてきた。
そして、時には、只今思春期真っ盛りの妹、鈴に対してどう接すればいいのかといったことまで話題にのぼり、鈴にとって「山刀家での楽しい食事の時間」に匹敵するほど、翼にとってこの時間は貴重な時間だと言えた。

そう言えば、これまでの翼にはなかなか適当な相談相手がいなかった。
もちろん、里に関する重大なことは我雷法師などの古老に相談することはあった。
だが、里に暮らす者の安全や里の平和を守ることに「自分が第一に責任を負わなければならない」という強過ぎる自負のため、心安く相談できる相手を作ってこなかった。
翼を小さい頃から自分自身をよく知っている者たちの手前、「舐められては困る」と安易に弱みを見せないようにしてきたのだ。

だが、相手が邪美となると、少し話は変わってくる。

第一に、彼女はもともと里の者ではない。
だから、幼い頃にした他愛のない悪戯の話や失敗の話など古い話を持ち出されて、無闇にウンザリさせられる心配はない。

しかも、阿門法師の愛弟子にして、黄金騎士である冴島鋼牙が頼りにするのだから、実力のほうも折り紙付きだ。
体術に優れた彼女だから、そんじょそこらの下手な魔戒騎士よりも余程安心して任せられるし、翼の知らない知識もあれこれ持っていた。

それに…
彼のつまらない矜持や無駄に高く築いている壁など、まるで歯牙にもかけないような邪美の態度にもかなり救われた。
’見廻り’ のときに思い迷っていることなどを邪美に打ち明けると、「馬鹿だねぇ」とか「なんだ、そんなことかい?」などと言われて、翼の気分はひどく害される。
そんなときは、翼も瞬間的にカッとなり「では、おまえはどう思うんだ!」と喧嘩腰に問い返すことになるのだが、その後、彼女の言い分を聞くと「なるほど、それも一理あるな」などと思ってしまうことがあるのだ。
彼女は決して翼を小馬鹿にするのを目的に、適当なことを言っているのではない。
翼と同じ立場に立って物事を真摯に考え、最善と思われることを導き出している。
彼のひとりよがりな判断には臆することなく真っ向から意見してくれるという意味で、とても得難い存在であった。

それに…
もし仮に「いや、やはり俺のほうが正しい!」と、話が平行線になったとしても、不思議なことにその議論を楽しむ気分にすらなっていた。
恐らく、邪美が女性だということも大きく関係していた。
翼の怒りを敏感に感じ取り、うまくいなすことに長(た)けているのだ。
最初のうちはいいように手玉に取られているようで気分が悪いこともあったが、お互い、いい年の大人である。
「これ以上言ったらいけない」という境界線を越えないよう、必要以上に相手を刺激することはしなくなっていった。

だが。
最近それでは飽き足らない気が翼はしていた。
閑岱の安泰は大事なことだ。もちろん、鈴が健全に成長することも。
ただ、自分の気持ちがちょっと無視できないくらいに大きくなっているのを感じていた。
もっと… シンプルに… 己の心の欲することを求めてもいいのだろうか…




「それにしても驚いたよ」

邪美の家への帰り道。
並んで歩いていた翼は、なにが? というふうに邪美の方を見た。

「日向のことさ。
 鈴の話じゃ、ふたりとも結構その気だって言うじゃないか」

山刀家での食事の席での会話を思い出しながら、邪美は翼に話を振った。
鈴の話では、相手の娘はもともと閑岱の出身で日向とは幼馴染みだというのだ。
3年前、南の管轄に行く父親と一緒に家族ともどもこの地を離れ、先週になって帰ってきたという。
閑岱にいた頃は化粧っ気もなく純朴そうだった少女が、帰ってきてみると、すっかり垢抜けて見違えるくらいきれいになっていたことに、里の者はみな目を丸くした。
殊(こと)に、里の年頃の男たちは、こぞって浮足立ったそうだ。
ただ、そんな若者の中でも彼女たちの一家は日向と家も近く、昔から家族ぐるみでの付き合いもあったことから、急速にふたりの距離が縮まったらしい。

「どうする、翼?
 師匠のあんたより先に、弟子の日向のほうが身を固めることになっちまうんじゃないかい?」

明らかにその状況を面白がっている素振りで邪美が翼の顔を覗き込んだ。

「ふん! 余計なお世話だ。
 弟子がしあわせになることを嫌がる師匠がどこにいる!
 もし、そうなったとしても、俺は喜んで祝ってやるさ」

「へぇ、そうかい。
 それじゃあ、日向はあんたに遠慮しないですむってもんだね」

あはは、と邪美が屈託なく言った。

「ところでさ…
 あんたにだって、幼馴染みはいるんだろう?」

「まあな…」

「いいねぇ、なんかそういうのってさ」

「何がだ?
 そう言うおまえにだって、大層立派な幼馴染みがいるじゃないか」

「立派な… って?
 …ああ、鋼牙のことかい?
 あいつとはガキの頃に何度か会っただけだよ?
 それに、くだらないことで張り合うばっかりで、ちっとも楽しい思い出なんてなかったねぇ」

口ではそんなことを言っていたが、さすがにあの冴島鋼牙を前にすると邪美の態度も少し違っているように見えた。
深い信頼で結ばれた… 言葉にすればそんな陳腐な表現しか浮かばなかったが、邪美と鋼牙には他の者が入り込めぬような確かな関係性があるようだ。
だから、鋼牙に邪美が呼ばれて冴島邸に赴いたとき、翼は何とも言いしれぬ胸騒ぎを感じて心を掻き乱され、ずっとイライラの募る毎日を送っていた。
そんなことを考えて無言になった翼に気付かないのか、邪美はさらに話を続けた。

「あたしの師だった阿門法師は人付き合いの悪い爺さんだったからね。
 あんな辺鄙なところに隠れ住んでなきゃ、あたしにも幼馴染みと言えるやつがもう少しいたんだろうけど…

 あーあ、ほんとに閑岱の子たちが羨ましいよ。
 遊びでも修行でもみんなで競い合ったり、励まし合ったりしてさ…
 あたしもそんな環境で育っていたらねぇ~
 もう少し可愛げのある女に、
今頃、なっていたのかもしれないのにさ」

そう言って少し寂しそうな笑みを浮かべる邪美に、翼の顔が苦痛に歪む。
邪美の言葉がすべて「あの男」の影を散らつかせ、翼はただ黙って歩くことしかできなかった。



to be continued(5へ)
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selfish と申します。
無愛想な魔戒騎士や天真爛漫な女流画家だけにとどまらず、大好きな登場人物たちの日常を勝手気ままに妄想しています。
そんな妄想生活(?)も5年を経過しましたが、まだ飽きていない模様…



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